【英語勉強法】日本人はなぜ英語をスラスラと話せないのか?

BrightureにはTOEICで900点以上を獲得した方が多数やってきます。外資系企業や貿易会社に勤めている方も少なくありません。そして彼ら上級者に共通する悩みが「会話に入れない」です。Brightureでは会話に乗る練習にフォーカスした「Social conversation」というクラスがありますが、初めの数日は数語しか発することができず、泣き出してしまう人もいるくらいなのです。このくらい、会話に上手く乗るというのは難しいことです。

この「会話に入れない」という悩み、僕自身も長く経験したので非常によくわかります。文を頭の中で構築しているうちに会話の内容が移り変わってしまい、タイミングを逸してしまう…そういうことの連続です。仕事の話は話題が決まっているのでなんとかなるのですが、、ネイティブ数人を交えての普通のダベリが本当に一番難しかったです。この葛藤は年単位で続きました。

しかし、今になってみると、どうして会話に乗れなかったのか非常によくわかります。今回のこの記事では、僕らがなぜ高速の世間話に乗ることが出来ないのか、そして、どのような学習をすれば会話のペースについていけるようになるのか説明したいと思います。

日本人が会話に加われない理由

実は、僕らが日常会話のスピードについていけない理由ははっきりとわかっています。要するに、英語の処理速度が遅いのです。では、この処理速度を決めているのはなんでしょうか?

言語処理のスピードは、そのプロセスが自動化されているかどうかにかかっています。例えば、”Hello” と聞いて「ハローは『こんにちは』っていう意味だったな!よし!わかった!僕は今『こんにちは』って言われてるんだ!」と脳内翻訳する人はほとんどいません。これはつまりつまり、「Hello」という一語だけなら、大抵の人が自動的に処理できていると言えるわけです。

しかし、同じに中1で習う単語しか使われていない文章でも、”I don’t know if would be able to make to the party, If I find a ride, I may be able to make it. But don’t count on it.”なんて早口で言われたら、頭の中が???となってしまい、何がなんだかわからなくなってしまうのです。これは要するに、言語処理が自動化されていないからです。

日本人は6〜10年も英語の勉強をするのに、本当に基本的な文章の処理さえ自動化できていません。このため、ちょっと長い文章になったり、早口の人に出会ったりするとたちまち処理がついていかなくなってしまうのです。

僕らが英語を自動処理できない原因は、「英単語同士の繋がりがない」、そして「引き出しやすいところに記憶されていない」の二つあります。順番に説明しましょう。

1)英単語同士が繋がっていない

まず一つは、単語同士の繋がりがまったく構築できていないことです。例えば日本語で「赤ん坊」と聞いたら、「柔らかい」「かわいい」「小さい」「泣く」「ママにべったり」「いい匂いがする」などなど、とめどなく関連語が思い浮かびます。僕らは喋るときも聴くときもこうした関連語を瞬時に用意できるため、早口で話されても聞き取れるし、話す時も淀みなく日本語が出てくるのです。

また、語順も同様です。「今日学校に来る途中」と聞いた途端に、「人身事故があって」「電車が遅れて」「突然大雨が降り出して」などなど、いろいろと繋がる語句がすぐに湧いてきます。そして仮に「突然大雨が降り出して」と言えば、次は「まじヤバイと思ったけど」「かなり焦ったけど」「どうしようかと思ったけど」など、どんどん類推できるわけです。そしてこの連想が誤った語順で来ることはまずありません。

しかし、英語となるとこうは行きません。ほとんどの人が 「赤ん坊」=baby、「柔らかい」=soft、「かわいい」=cute、「小さい」=small または tiny, 「泣く」= cry、「ママにべったり」=cling to Mom”、「いい匂いがする」=smells good. などにように日本語の対訳に結びつけて覚えているだけで、英単語同士を関連づけて覚えていないからです。また、When I was heading to the school this morningという最初のチャンク(文節)が言えたとしても、次にいうべき, it started to rain all the sudden, there was an accident along the way, と言ったチャンクが出てこないのです。

結局適切な連想ができないため、文章を聞き取ろうにも続いて出てきそうな単語の予測が全くつきませんし、喋ろうと思っても言葉が続かないのです。

2)記憶領域の違い

もう一つの原因は単語や言い回しが記憶されている領域の問題です。長期記憶には健在記憶と潜在記憶の2種類があります。健在記憶というのは意識的に思い出せる記憶のことで、僕らが受験用に単語を暗記する時には、この領域を利用しています。例えば「“bear”には、『産む』『耐える』『熊』という3つの異なった意味がある」、であるとか「現在完了形は主語+have+過去分詞」などのように意識的に思い出す時に使われるのが、この健在記憶です。

一方潜在記憶というのはその名の通りほとんど意識に上がってこない記憶です。意識せず使用可能なため。処理速度が早いのが特徴です。例えば自転車の乗り方などは潜在記憶の典型です。もしも自転車を乗る時に「左に曲がる時には10メートルほど手前からブレーキをかけて時速5キロにまで減速し、ハンドルをおよそ5度左に切りながら、体を20度ほど傾ける」などと考えながら走っていたら、処理が間に合わずにクラッシュしてしまうでしょう。

英語を聴いた瞬間に理解し、言葉が口をついて出るようになるには、英語に関する諸々の知識が、潜在意識として定着している必要があります。すると「思い出そう」という意識さえ必要なく、聴いたままを理解し、また考えたことが即座に口をついて出るようになります。

単語の繋がりを増やすには?

それでは解決方法について考えてみましょう。まず単語同士の繋がりの増やし方ですが、私が強く推奨するのはなんと言っても多読多聴です。「英語なんて読めない〜〜」などと考える必要はありません。ネイティブの子だって最初は絵本や子供向けのアニメ番組の視聴から始めるのです。ですので子供向けからスタートしましょう。Brightureでも初心者の方はごく簡単な絵本からスタートしていただいています。それでも3ヶ月後には、ネイティブの小学生が読むくらいの本は読めるようになります。

子供向けの番組は、誰でもわかる、シンプルな英語がどのようなものか知る上で実に役に立ちます。私の子供は英語に触れ始めた頃、ピクサーの映画をビデオテープが磨り減りそうなくらい見ていましたが、これで基本的な構文も使用頻度の高い言葉の繋がり(コロケーション)も潜在意識に刷り込んでしまったようです。よく、日本語がうまい外国人が「アニメで日本語を覚えた」と言っていますが、同じことです。

ニュースなどを聞き取れない、という質問もよく受けるのですが、肝心なことは潜在意識に単語の繋がりを埋め込むことです。別に字幕を見ながらでも一向に構いません。たくさん読んでたくさん聴く、とにかくこれが大事です。

気に入った曲などは知らないうちに歌詞まで覚えてしまって何十年たっても忘れませんが、あれと同じことです。あまり「勉強」と構えずに大量の英語に触れていきましょう。

なお、英単語同士の結びつきがどの程度頭の中に入っているか試してみたい人は、Google が用意した英単語連想ゲーム semantris をぜひやってみてください。アーケード形式とブロック形式があります。ブロック形式の方が少し点数を取りやすいです。

https://research.google.com/semantris/

多読多聴のもう一つの効用

多読多聴から得られるもう一つの効果は、ついていける話題や、こちらから振れる話題の幅が大きく広がることです。会話の聞き取りは予測に大きく依存していますから、予備知識があることは俄然聞き取りやすくなります。これは日本語でも同じ話で、自分の専門外の話を説明されても、同じ日本語のはずなのにチンプンカンプンなことなど多々あります。

また話題を振ろうと思っても、一体英語でどう言っていいかわからず諦めてしまうことも多いのではないかと思います。しかし、そもそもネタを英語でインプットしておくと、こうした悩みが激減します。

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音読やシャドーイングは効果あるか?

では音読やシャドーイングは効果あるでしょうか?

はっきり言ってとても効果ありますが、僕はあまりオススメしていません。なぜなら、あまりにも効果があるため、間違った発音でシャドーイングや音読を繰り返すと、悪い発音が潜在意識に定着し、直すのが至難の業になるからです。これで後から非常に苦労してしている人を、頻繁に目にします。

音読やシャドーイングをやりたい方は、まず最初に発音をある程度整えましょう。本当にかわいそうになるぐらいひどい発音を定着させてしまい、苦労してる人を山ほど見てきました。せっかくどんなにスムーズに英文が口から出てきても、それが理解できない音では全く意味がないからです。

実際に会話してみよう!

たくさん読み、たくさん聞いた。シャドーイングもバッチリした。ネタのストックもたくさんできた。別にそんな日を待つ必要はありません。ちょっと新しい言い回しを覚えたら、スカイプ英会話でもミートアップでもなんでも利用して、ドンドン使ってみましょう。こうして実査に口に出して使ってみると、相手の反応から自分の言葉の選択や語順が正しいのかどうか、すぐさま検証することができるからです。

語学は恥かいた分しか上手くなりません。ドンドン街に出て、実際に使ってみましょう!

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。