【英語勉強法】多読に適した英語の本の選び方

英語を自分のものにする上で絶対に欠かせないのが、「生の英語になるべくたくさん触れること」です。教科書や問題集の文章は、学習過程に合わせて前後の脈略もなく並んでいるため、良くも悪くも「殺菌」されすぎているのです。そのため練習問題ばかりをたくさんこなしても、補助輪をつけたまま自転車の練習をしているようなもので、応用が効く英語力はなかなかつきません。

実戦で通用する英語力をつけるのに効果的な学習方法が洋書の多読です。英語圏に住み、日常的に英語でプロフェショナルとして働いているような方は、みんなこの結論に辿り着きます。そんなわけで、ブライチャーでは多読を強くオススメします。

さて、英語で多読を始めようと思っても、どこから手をつけていいかわからない人も多いでしょう。また頑張って開始しては見たものの、1冊終わるとなんだか疲れてしまって次に進めない方も多いのではないかと思います。

そこで今回は、本選びのコツについてお話ししたいと思います。

「自分に適した本」を選ぼう!

コツを一言で言えば、何はともあれ「自分に適した本」を選ぶことです。レベル的には合っていても、興味を持てない本もあれば、多少難しくても本の内容に引っ張られて読み切れることもあります。しかし、煎じ詰めれば次の3点に集約されます。これから多読にチャレンジしてみたい方はぜひ参考にしてください。

1. 好きなジャンルの本からスタートする
2. 自分にあったレベルのものを選ぶ
3. 根負けしない長さの本を選ぶ

それでは順番に解説しましょう。

1)好きなジャンルからスタートする

好きなジャンルの本を選ぶ。当たり前に感じるかもしれませんが、案外これをやらない人が多いのです。「私はビジネスパースンなのだからTime誌くらい読まなければ!」などと張り切って始めても、興味のないことは続きません。僕自身もこうした「やらねば!」にとらわれて、興味のないものを読んでは挫折したことが何度かあります。

僕自身の例ですと、一番最初に熱中して読み始めたのはトレーニング関係の雑誌でした。当時の僕は水泳部に属していて、トライアスロンやウエイト・トレーニングに夢中だったのです。また大学の専攻が情報処理だったのでコンピュータの雑誌などもマメに読みましたし、科学ネタは何かと好きだったので、Popular Scienceという理系オタクが買いがちな雑誌もよく読んでいました。


このように自分の興味のある分野からスタートすると、勉強を意識せずに読み進められます。また、すでに予備知識がある分野というはとにかく読みやすいものです。そうこうしているうちに、英語における文章の構築方法や、使いやすい言い回しなどが蓄えられていきます。すると、その後あまりなじみにない分野の本を読んだ時にも、割とすぐに読めるようになるものです。

また、SF小説などもずいぶん読んだ覚えがあります。そのほかに、日本語で読んだことがある作品を原作で読み直したこともあります。アイザック・アシモフやアーサー・C・クラークのベストセラーなどはやはり読みやすく、物語に引きずり込まれて何十冊と読みました。

このほか、いわゆる「名作」と言われる作品は、やはり良いものです。内容が引っ張っていってくれますから、知らないうちに冊数がこなせます。ヘミングウェイやリチャード・バックなどもも非常によかったです。

2)自分にあったレベルの本を選ぶ

次に大切なことは、自分にあったレベルの本を選ぶことです。やおら「ハーバードビジネスレビュー」(ハーバード・ビジネス・スクールの機関誌として創刊された経営学誌)などを広げても心が折れてしまうだけです。

一つの目安としては、知らない単語がどんなに多くても20パーセント以下、できれば5〜10%くらいの本を選びましょう。知らない単語が2割以上あると、想像で埋めながら読み進めるにしても難易度が高すぎて、学習効果が下がります。

ただ、そう言ってもレベルがぴったりと合う本というのはなかなかないもので、最初のうちは若干の背伸びはどうしても避けられません。

そこで、私がオススメするのは次の3つのアプローチです。

a)とにかく好きなジャンルの本でスタート!

前述の通りとにかく好きなジャンルでスタートです。英単語のなさを興味や予備知識が補ってくれるからです。

b) すでに内容を知っている本を読む

もう一つは、日本語で読んだことがあるか、映画を観るなどしてすでに内容を知っている本を読む方法です。僕もこの方法でスタートしました。多読を始めた頃に、映画がノベライズされた本を20冊以上は読んだ記憶があります。

c) 児童書からスタート

もう一つは、児童書からスタートするという方法です。児童書とは言いつつ侮れない本が多いですし、レベルも幼児向けの絵本から、小学校高学年までとさまざまです。中学〜高校レベルの英語力で読み切れる本がたくさんあります。具体的な本は後ほど紹介します。

3)根負けしない長さの本を選ぶ

最後の注意点は、あまり長い本を選ばないことです。上級者になれば何を読んでも大丈夫ですが、また読みなれていないうちは、あまり長い本だと根負けしてしまいます。

僕自身も最初のうちは200ページ前後の本からスタートしました。1〜2週間で読み切れるような本からスタートして、「よし、読みきった!」という自信をつけていきましょう。

書籍の紹介

ではブライチャーでお勧めしているの初心者〜中級者向けの書籍を紹介します。

超初心者でしたら、オススメは何と言ってもラダーシリーズ(IBCパブリッシング出版)です。このシリーズは英語学習者のために作られた洋書シリーズで超初心者でも読める本が多数用意されています。

最初の一冊としては「絵で読む英語 First Steps in Reading English (ラダーシリーズ Level 1)」 から始めるのがいいと思います。挿絵がたくさんに入っているので話を追いやすく、辞書を引かなくても読み切れます。この一冊で英語を基礎の基礎から勉強することも可能です。


ラダーシリーズは細かくレベル分けされている上に数も多いですから、レベル1から順番に読み進めていっても良いでしょう。

ラダーシリーズに慣れたら

ラダーシリーズに慣れたら次はこちらにチャレンジしてみましょう。中学生レベルの方にオススメです。シリーズでたくさんあります。小学校の教科書にこの挿話の日本語訳が載っていたので、読んだことがある方も多いのではないでしょうか?

中3レベルに達したら

こちらの伝記シリーズも、中3までの文法と単語が押さえてあれば必ず読めます。50冊以上あります。簡単な本ながらも、大人が普通に会話で使うような単語もたくさん出てきますから、もっと難しい本に挑戦する前の下地作りの強い味方になってくれます。

高校生レベル

「Who was」シリーズに読み飽きて来たら、次はこの本にチャレンジしてみましょう。映画化もされた名著です。ページ数も少なく読み切りやすいです。

なお、ブライチャーの一押しは、こちらの「Wonder」という1冊です。全世界で500万部以上売れ、映画化も果たしています。また、この本のサイドストーリーもたくさん出版されており、多読に慣れるのに非常に適しています。

とにかく楽しもう!

多読というと読んだページ数や単語数を記録している方もいます。それはそれで励みになると思いますが、大切なことはとにかく読書自体を楽しむことです。僕が初めて時間の経つのも忘れて英語の本にのめり込んだのはもう随分前のことですが、まさか自分が英語でそんなふうに感じる日が来るとは思っていなかったので、大きな自信になりました。その後は徐々に「英語の勉強をしている」という意識もなくなり、いつの間にか読むこと自体がすっかり楽しくなったのです。

つまり、楽しければなんだっていいんです。コミックでも小説でも、はたまた新聞記事や学術書でも、自分が楽しいと感じるものをたくさん読むのがポイントです。

多読のご利益については前回の記事で紹介した通りですが、日本語による読書でも、大脳の活性化やストレスの軽減、想像力の発達、多角的な思考力の要請、コミュニケーション力のアップなどなど、さまざまな効果が謳われていますから、読まない手はありません。

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さあ、多読の世界へと漕ぎ出しましょう!

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。