【英語勉強法】英語学習の基本は「モノマネ」です

みなさん、英語学習でもっとも大切なことってなんだと思いますか?

単語でしょうか?

文法でしょうか?

和訳、英訳でしょうか?

それとも発音でしょうか?

いえ、モノマネです。

そして僕ら日本人は、この「モノマネ」が圧倒的に足りません。このためいつになっても話せるようにならないのです。この記事では、具体的にどんなモノマネが必要なのか、徹底的に解説したいと思います。

子供はどうやって母国語を覚えていくのか?

最初に、子供がどのように言葉を覚えていくのか考えてみましょう。 彼らはまず、お父さんやお母さんにたくさん話しかけられます。次にテレビを見たりして、さらにさまざまな言葉に触れていきます。そして音のリズムやパターンを少しずつ認識し、意味を抽出するようになります。

つまり、最初はインプットだけなんです。アウトプットとしてできることは、せいぜい泣いたり、イヤイヤと首を振ったり、笑ったりするくらいですが、それでも理解できる言葉が増えていきます。生後1年半ほど経つと、少しずつ意味のある言葉を発するようになります。2歳を過ぎる頃には複数の言葉を繋げて簡単な文章を話すようになります。

3歳になる頃にはおままごとのような、いわゆる「ごっこ遊び」を始めます。そしてこのごっこ遊びの中で使われる言葉は、普段近くにいる大人ソックリです。あるいはテレビで見た正義の味方の真似です。そう、言葉の獲得はモノマネからスタートするのです。

周囲の大人が悪い言葉を使っていれば子供にもそれが移りますし、丁寧な言葉遣いをしていればそう話すようになります。テレビばかり見せていれば、そこから言葉遣いを学びます。単語も文法も、自然に覚えていきますが、これもすべて耳から情報を入れ、それを真似て試行錯誤した結果です。やがて文字に興味を持ち、文字を音をリンクさせるようになります。しかし、文字から覚える子供はいません。最初は音から入ってモノマネで覚える。これが子供が語学を習得するプロセスなのです。

日本の英語学習者が音から入らない謎

では、音から入るモノマネ学習法は、第2外国語では効果がないのでしょうか? そんなことはまったくありません。それどころか、非常に効果があります。現地に住み始めて、最初に話せるようになるタイプの人は、モノマネしてどんどん吸収し、実際にすぐに使って試してみる人です。せっかく周囲が英語を話しまくってる環境にいるのに、全然話さない人はなかなか上手くなりません。モノマネのネタは、テレビからでもラジオからでも周囲の人たちでもいいのです。特に発音は、なるべくそっくりにモノマネをするのが基本です。

モノマネが一巡したら、そこで初めて単語や文法を補充してもいいくらいです。すると、ますますモノマネがしやすくなります。今までなんて言ってるのかよくわからなかった部分がクリアになったり、新たに覚えるべき単語の狙いも定まります。

つまり、文法や単語を柱として考えるのではなく、モノマネを柱に考えるのです。そして、補足として文法や単語を補っていきます。母国語と同じ順番です。

このやり方を説明すると「そんなに何年もかけていられない」と批判を受けるのですが、どうせ6年も習ってろくに喋れないんですから同じことです。また、モノマネで覚えたことは、知識として覚えたのではなく、歌や踊りや自転車乗りのように体で覚えるので、取り出すのに時間がかかりません。このため、いちいち構文や意味を考えなくても、半ば無意識的に引き出すことができるようになるのです。一方、文法から始めると6年経っても素早く引き出せないのはすでに日本の義務教育が70年かけて実証済みです。

「モノマネ学習法」の注意点

では、実際にこの方式で学習するとして、一体どのような点に注意して学習を進めれば良いのでしょうか? ポイントはいくつかありますが、主に以下の4点にまとめられます。

1)大量にインプットする 2)ナチュラルな表現の教材を使う 3)正確にコピーする 4)発音は息遣いまでコピーする

1)大量にインプットする

まず何よりも大切なのは、大量にインプットすることです。ほとんどの方は、根本的にインプットの量が足りません。BGMは全部英語にするくらいのつもりでやるのが大切です。とにかく読むもの聴くもの、すべて英語にしてしまいましょう。

なお、ここでいう「インプット」というのは単語帳を回すことではありません。パソコンやスマホの画面表示やソーシャルメディアの言語設定を英語にします。ゲームも英語モードでやりましょう。初心者の方でしたら、Power Rangers とか、ピクサーの映画などなど、子供向けのコンテンツを見てみましょう。うちの子も最初はPower Rangersからスタートしていました。

なお、ちょっと背伸びすればわかるくらいの内容からスタートし、急がずに少しずつレベルアップするのが基本です。無理して難しいコンテンツに飛びつくと、結局は嫌になってしまうからです。

また、本を読み始める場合には、幼児向けの絵本や、ラダーシリーズ(紹介記事を参照)などからスタートしましょう。無理して難しいものから初めても、挫折するのがオチです。自分が続けられる形でやっていきましょう。

こうした地道な作業を続けるとコロケーション(自然な単語の繋がり)なども、なんとなく身についていきます。カッコいいな、と思うフレーズに遭遇したら、メモしておくのもポイントです。

関連記事:多読に適した英語の本の選び方

2)ナチュラルな表現の教材を使う

私は日本人が書いた教材は基本的に勧めていません。「こんな表現、絶対にしない!」というようなものがかなりたくさん出てくるからです。滅多に使わない表現や、古典にしか出てこない言い回しから覚えるなんてナンセンスです。日常的に使われる表現からスタートしましょう。

例えばこれは実際に平成29年度のセンター試験に出ていた問題です。

独立行政法人大学入試センター・ホームページより

Job というのは確かに「仕事」という意味ですが、”I need to find a job.” (何か仕事見つけなくちゃ)などのように、「就職先」といったニュアンスで使われるのが一般的です。しかしこの問題では「どの仕事から先に取り掛かるべきか?」というやりとりがなされており、この job という単語が指し示しているのは「個々の作業」です。このような場合には task という単語を使うのが一般的です。私は英語を使って25年以上仕事をしていますが、上の問題のような状況で job という単語が使われたシーンに遭遇した記憶がありません。なお、24 の回答は5の(B) (A) (A) で “You have to remember to turn it in by five o’clock.” ですが、ここだって相当奇妙です。まず、同僚に “have to 〜” なんていう上から目線な表現を使うことはありません。どうしても “have to 〜” を使うなら主語を we にして

We have to submit this by five o’clock.

とするか、仮定法を使って表現を穏やかにして

If I were you, I would probably get to it first. Remember? It is due 5 o’clock.

などと言うでしょう。

センター試験の問題でこれですから、普通に問題集や参考書がどんなもので溢れているのかは、容易に想像がつくのではないかと思います。あくまでのナチュラルな表現にこだわって参考書や書籍を選んでください。

3)正確にコピーする

さて、いよいよモノマネです。モノマネする際には、正確にコピーすることを心がけてください。

I need a dozen of eggs.

例えばこの表な文章を覚えるとしたら、不用意に不定冠詞 a を落としたり、eggの最後に着く’s’ を落とさないよう、くれぐれも気をつけてください。英語というのは冠詞の有無や種類でかなりニュアンスが変わるからです。独自の解釈をせず、そっくりそのまま見本通りに覚えるのがポイントです。

下記は、実際によく耳にする間違いです。

I like reading books.

I want to make foreign friends.

Tom is a good engineer.

赤字が実際に「抜けてしまっている」部分です。大きな間違いではないと思うかもしれませんが、「てにおは」が間違っている日本語によく似た、腑に落ちない感じが残るのです。「現在完了形は主語+have+過去分詞」と覚えて、単語を埋めていくような形で文を作っていると、いつになっても冠詞の抜け落ちや単数形・複数形の混同が治りません。

こうした間違いを防ぐためにも、モノマネをする際には細部を端折らず、正確にコピーをすることが大切です。シャドーイングなどを行う場合には必ずスクリプトや英語字幕を手に入れ、一語一句正確に暗記しましょう。

なお、スマートフォンでシャドーイングをやりたい場合には、VoiceTube というアプリを勧めします。このアプリ、YouTubeの中から各人のレベルにあった動画を表示してくれ、再生を開始すると、字幕を順送りで表示してくれるのです。ぜひ試して見てください。

4)発音は息遣いまでコピーする

シャドーイングや音読をする場合には、なんとなく発音をせず、正確な発音をコピーすることを心がけてください。テキトーな発音で練習しているとあっという間にそれが癖になって取れなくなります。

リズム、イントネーションはもちろん、息遣いまでコピーするようなつもりでやるのが大切です。

こちらはオバマ前大統領の完全コピーを行った方の音声です。


この方、この練習を通して普段の会話の発音も劇的に向上しました。モノマネというのにはそのくらい効果があります。

しかし、もしもこの時に間違った癖をつけてしまうと、今度はそれを矯正するのに莫大な時間を要します。ですからシャドーイングや音読を行う際には、発音に最新の注意を払い、完全にコピーしていくのが大切です。

関連記事:日本人はなぜ英語をスラスラと話せないのか?

Brightureでの取り組み

ブライチャーでは滑らかな発音を身に着けるためのクラスを用意し、スムーズな発音が身につくよう、練習を繰り返します。会話練習やスピーチの完コピーをしていただくこともあります。英語学習で、もっともお金を使う価値があるのは発音と作文です。より効率的に自習を進めるためにも、一度Brightureで発音とスピーチのレッスンを受けてみませんか?

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。