【英語勉強法】英会話から日本語を「抜く」方法

英語がようやく少し通じるようになってきた中級者が、次に苦労するのが「日本語で考える癖」を取り去ることです。

初心者の人にはピンとこないかもしれませんが、実は日本語での思考癖が、ネイティブ同士の会話に「乗る」のに大きな妨げとなるのです。

この記事では、次の5つについて解説します。

日本語を抜かないとどうなるか
思考に言語は必要か?
日本語を抜くにはどうすればいいか?
高度な思考はどう行われているのか?
文法と会話を乖離させて学習しない

それでは一つずつ説明しましょう。

日本語を抜かないとどうなるか?

日本語を抜かないと、何年経ってもネイティブとの会話の中で「お地蔵さん状態」が続きます。例を挙げましょう。

例えばネイティブを交えた4、5人で話しているとします。そして誰かがこんなふうに言ったとしましょう。

“Have you guys heard of this new office layout which would allow employees to communicate distinctively better yet focus more on individual tasks?”

「社員間のコミュニケーションがこれまでよりずっと円滑になる上に、個々の作業への集中も高まる新しいオフィスレイアウトの話、聞いたことある?」

もちろん一緒にいるネイティブは瞬時にこれを理解して反応します。しかし、あなたの頭の中では「関係代名詞のwhich だから…」「distinctively は『特徴的な』だっけ? この場合は『突出してる』かな?」などなど、色々と忙しく駆け巡ります。そして、文が理解できた頃には軽く1、2秒遅れをとります。何か発言しようにも、とっさに文が浮かびません。その瞬間にほかのネイティブがそれを拾って返事をしてしまいます。

“Oh yeah. I’ve heard of that. I heard it’s not an open layout like the ones you see at Facebook or Tesla, but not like the traditional cube farms either.”

「ああ、なんか聞いたなあ。なんかフェイスブックやテスラでやっているようなオープンレイアウトでもないし、昔ながらのキューブの農場でも無いんだってな」

で、今度はこっちの文章の解析が始まります。「cube farm? そりゃ一体なんなんだ?」

こうしてあなたはずっと会話から外れ続けます。

例えば出張で取引先と夕飯に行ったりすると、1時間くらいこんな会話が続くわけです。会話を半分程度理解するのが精一杯で、発言なんて一言もできやしません。神経は磨耗し、ただ黙ってニヤニヤしてるのが関の山です。

これが、多くの英語学習者の通る道です。僕も例外なく通りました。しかも年単位で続きました。

どうすればいいのかというと、とにかく日本語を抜くしかないのです。それは一体どう言うことなのでしょうか?

僕らは何語で考えている?

僕らは日頃、一体何語で考えているとお思いですか? 日本語でしょうか? それとも英語でしょうか?

結論から言ってしまうと、僕らは大半の思考をイメージで行なっています。そして、それを日本語や英語、あるいは手話、ゼスチャー、表情などを使って伝えています。ニカラグアで、周囲に手話のできる大人がいない環境で育った、耳の聞こえない子供たちの事例が有名ですが、実は思考するのに言葉はいらないのです。

ですから、必要なのはこの「イメージによる思考」と「英語」を直接結びつける回路を作ることです。例えば Fireと聞いていちいち「火」という単語を思い起こしているうちは、この直通回路ができていません。逆も同じことで、炎をイメージしたら、その瞬間に”Fire”という単語が口をついて出てくるのが理想です。

むろん fireくらいなら簡単ですが、これをだんだん文章レベルで瞬間的にできるようにしたいわけです。「関係代名詞がどこにかかってるんだろう…」とか「これは完了進行形だから…」とか考えてるうちは、この言葉とイメージの結びつきができていません。ここで、1秒、2秒を費やすだけでも会話に乗れなくなってしまうのです。

日本語癖を取る方法

ではこの日本語思考癖、どうすれば取れるでしょうか? コツはいくつかありますが、

1)問題を自覚する
2)意識して取り除く
3)時間制限を設けて会話練習する
4)独り言で練習する

の4つが効果的です。順番に説明しましょう。

1)問題を自覚する

まず第1に「日本語変換する癖」を自覚することが大切です。どんな癖でも、自覚できないことには治りません。これが意外に難しいのです。もしも現在、ネイティブがあなたと話すときに意識的にゆっくりと話してくれているのなら、間違いなく日本語を挟む癖がついています。

2)意識して取り除く

とにかく日本語が思い浮かんだ瞬間に意識的にこれを打ち消します。大抵の場合、すでに知っている英語でもいちいち日本語する癖がついているので、まずは英語のままわかることは、英語のまま飲み込む訓練をします。僕も当初は、単語を聞いた瞬間に日本語訳と共に単語本のページまで頭に思い浮かんだものです。とにかく意識的に追い出すようにしたら、1年くらいで思い浮かばなくなりました。

3)時間制限を設けて会話練習する

もう一つ効果的なのは、時間制限を設けたスピーチなどの練習です。Brightureではリスニングした内容の要約を即座に英語で話してもらう、といった練習を繰り返します。こうすると日本語で考えている暇が限りなく減るので、徐々に癖を取り去ることができます。

4)独り言で練習する

もう一つの対策は、よく使うフレーズは実際に何度も口に出して、スムーズに言う訓練をすることです。これだけでも随分変わります。一朝一夕にはできるようになりませんが、しつこく日本語を抜いていく努力を続けてみてください。必ず抜けていきます。

高度な思考はどう行われているのか?

なお、全ての思考が言語抜きで可能かというと、必ずしもそういうわけではありません。「愛とは何か?」というような象徴的な思考にはやはり言語が必要です。高度な思考やディスカッションを英語で乗り切るには、そもそもの材料をすべて英語で入れてしまうのが手っ取り早いです。つまり、インプット自体を日本語ではなく、英語で行うようにするのです。

ここで重要なのが、英語による多読、多聴です。日本語でネタを入れて、日本語で思考していると、英語で即座に出るはずがないのです。テーマを決めて読み込んだり聴き込んだりして、そのトピックについてディスカションしてみるのも一つのアイデアです。僕は大学時代にこうしたクラスを何度も体験し、いつの間にか日本語でも英語でも高度な思考が普通にできるようになっていきました。読んでインプットしたら、すぐにアウトプット。これで英語回路がしっかりと強化されていきます。

文法と会話を乖離させて学習しない

プリンストン大学の大学生は週3回程度の日本語授業で、3年目には村上春樹の原書を日本語で読み、日本語でできるようになるそうです。彼らは確かに優秀ですが、では東大生が週3回の英語の授業でヘミングウェイを読んで英語で議論できるかと言うとかなりおぼつかないわけで、これはつまり学習メソッドの差です。会話と文法は常にセットで訓練していきます。会話から乖離した文法学習は本当に弊害が大きく、日本語思考癖が強化されるだけです。要するに最初から日本語癖をつけなければいいわけで、そうすれば僕自身が体験したような無用な苦労はする必要がないのです。

Brightureではどうしてる?

Brighture ではFocus on Formという手法をメインに、カリキュラムを設計しています。これは、まさしくform(文法を含む形式)を会話練習にミックスさせる手法です。

日本ではまだあまり知られていない方法ですが、世界の言語教育の世界では、10年以上前から積極的に取り入れられている手法で、日本でも先進的な学校などでは、すでに実践されています。

体験したい方はぜひどうぞ! 中1でわからなくなってしまった人が、3ヶ月後には喋っています。

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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。