【英語勉強法】洋書の多読を効果的にする6つのコツ

前回は洋書の選び方や初心者〜中級者向けの本を多数紹介しましたが、今回は多読のコツそのものを紹介したいと思います。

多読をお勧めするとよく受ける質問

最初に、多読を勧めると必ずと言っていいほど受ける質問に答えていきたいと思います。

1. 知らない単語はすべて調べるべきか? 意味を類推しながら読むべきか?
2. 精読すべきか、どんどん読み進めていくべきか?
3. 本に出てくる文法はあっているのか?
4. 面白くない本は読み続けるべきか? やめるべきか?
5. 電子書籍がいいか? 紙の本がいいか?
6. モチベーションが続かない。どうすればいいか?

それでは順番にお答えしたいと思います。

1. 知らない単語はすべて調べるべきか? 意味を類推しながら読み進めるべきか?

まず、もっとも多いこの質問からお答えします。私は適当に類推しながら読み進めることをオススメしています。

理由はいくつかあります。まずよくあるパターンが、いちいち調べているうちに疲れてしまって、まったく読み進まないというケースです。これでは本末転倒です。次に、調べても結局意味が掴めない、というケース。英和辞書には対応する日本語が多く、どの意味を当てはめればいいのか、かえって混乱してしまうことも多々あります。

ニュース記事や専門書などは意味が限定された単語が多く、辞書でわかることも多いですが、長い小説などは辞書を引くだけで疲れるので、思い切って類推に頼りましょう。

どうしても単語を調べたい人は、最初の第1章だけを徹底的に調べるのも一つの方法です。どの作家もお気に入りの表現や単語があるので、最初の1章だけ調べると、その後それらの単語言い回しが何度も登場するからです。

なお、あまりに知らない単語が多いときは、本のレベルを少し落としましょう。知らない単語が5%程度の本は比較的すらすら読めますが、10%を超えると途端に進まなくなり、20%を超えるとお手上げになります。最初は簡単すぎるような本からスタートするのがポイントです。

2.精読すべきか、どんどん読み進めていくべきか?

英語の記事や書籍を読むにあたって、一行ずつ精読すべきか、それともどんどん読み進めていくべきか、と言う質問も、頻繁に受ける質問です。両方とも一長一短ですが、僕はどんどん読み進めることを強くオススメしています。

品詞分解をしながら精読して文法をシッカリと理解するというやり方は、そもそも文法学習をする際に取るべきアプローチです。テニスなどに例えると、素振りやステップの確認をしているようなものです。

一方、多読はいわば練習試合です。いちいち止まって確認作業をしてたら、いつまでたっても前に進みません。テニスの練習試合の最中に試合を中断して、素振りやステップの練習をするでしょうか? 軽く軽く流してください。

3. 本の文法は正しいのか?

洋書を読んでいると、学校では遭遇しなかった文法表現や言い回しに多数遭遇します。そこで、「この本の文法は正しいのだろうか?」と考え込んでしまう人も少なくないようです。

しかし、普通に考えて、ネイティブ向けに書かれたベストセラーや新聞記事に、ネイティブが読んで不自然に感じる文法表現などあり得るでしょうか? 日本語の書籍や記事に置き換えても考えてみても、極めて少ないことが想像できるのではないかと思います。

もちろん、あえて文法のルールを壊した上で言葉遊びをすることはあります。アップルの有名なキャンペーンの “Think Different” などはその代表例で、文法的に正しく言うと “Think differently” です。しかし、あえて文法を壊すことで、エッジの立ったフレーズになっています。そしてそれは、ネイティブにとってとてもキャッチーなフレーズなのです。そうした「ネイティブ感覚」を養うのも、学習教材ではく、ネイティブ向けに書かれた書籍を読む大切な意義です。

なお、文法というものはあくまで最初に「現実の英語」が存在し、それを腑分けしてルール付けしたものです。文法にとらわれ過ぎてネイティブ向けの文章が素直に読めないと言うのは、なにか本末転倒です。英語は英語のまま素直に読んで、そのまま理解する力を養いましょう。

4. 面白くない本は読み続けるべきか? やめるべきか?

どうしても読み進められないほど面白くない本はさっさと止めて違う本に移りましょう。日本語でもそうですが、自分と相性が合わない作家というのはどうしてもいるものです。最初のうちはピンと来ないかもしれませんが、そのうちに読みやすい本と読みにくい本の違いもわかってきます。また、英語力が上がってから読んでみたら実は読みやすかった、などということもあります。読みにくい本に出会ったらまだ時期ではなかったと割り切って別の本に移ってください。

5.電子書籍がいいか? 紙の本がいいか?

電子書籍がいいか、紙の本がいいかは完全に個人の好みですが、僕は基本的に電子書籍を進めています。なぜかというと、知らない単語をタップするだけで辞書が呼び出せるため、辞書を引くのに中断しなくて良いからです。また、場所を取らないのもいいです。

ただ、紙の本じゃないと読んだ気がしない、という人もたくさんいます。達成感を感じにくいという人もいます。ですので、これは自分の好みで選択してください。

6.モチベーションが続かない。どうすればいいか?

多読を続けたいのだけれど、どうしてもモチベーションが続かない、どうすればいいでしょうか?という質問もよく受けます。

私のオススメは同志を募って一緒に多読にチャレンジすることです。同じくらいのレベルの人から「これを読んだ、あれを読んだ」と報告を受ければ、やっぱり励みになります。今ではソーシャルメディアなどもありますから、こうした場を生かして、積極的に情報交換しましょう!

さて、以上が多読をスムーズに進めるための6つのコツです。

人間は新しい単語や言い回しの意味をすっかりと自分のものにするのに、その単語に8〜14回ほど遭遇する必要があると言われています。それは単語帳を14回眺めるということではありません。いろいろな使い方になんども遭遇することで、それぞれの単語や言い回しの輪郭が自分の中に出来上がっていくのです。やがて冊数をこなすうちに、いつの間にかいちいち戸惑うことなく、スルスルと英文を読み進められるようになっていきます。

それでは多読の世界を楽しんでください!

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。