「問題集の反復」と「多読多聴」、実際の会話に役立つのはどっち ?

ご存知の通り、Brightureでは多読、多聴を強く推奨しています。そして、いわゆる問題集は、ほとんどやっていません。これには違和感を覚える人も多いようで、「問題集などをやらなくていいのですか?」としばしば聞かれます。

もしもあなたの目的がTOEICや英検であれば、問題集をガンガンやるのが間違いなく最短距離です。なので、TOEICの高得点取得が目的の方には積極的に問題集を勧めています。評判のいい問題集を買って回数をこなしましょう。

しかし、実践的な英語力を身に付けることが目的ならば、問題集を回すのは基本的に推奨しません。いくら問題集をこなしても、実際に会話したり文章を書いたりすることに寄与しないからです。

日本語に置き換えて考えてください。例えばあなたが営業マンで、滑らかに営業トークがしたいとします。そこで、日本語文法の問題集を買ってきてグルグル回すでしょうか? そう、問題集を回すというアプローチは何かどこかが外れているのです。

この記事では、

– なぜ問題集を回すことを推奨しないか
– 多読多聴にはどんな効果が期待できるのか
– どんな学習方法を推奨するのか

の3点を詳しく解説したいと思います。

なぜ問題集を推奨しないのか?

問題集というのは一長一短です。ある特定の文法のルールや言い回しなどを押さえるには、決して悪い教材ではありません。しかし、それ以上の効果はほぼ期待できないという大きな弱点があります。これは一体、どういうことなのでしょうか?

問題集は、個々の文法のルールや言い回しなどを学習することを目的として作られています。このため、現実には使わない文章もしばしば登場します。下のような文章、多くの人が教科書や問題集でみたことがあるのではないかと思います。

You are a girl. あなたは(一人の)少女です
I am a boy. わたしは(一人の)少年です
This is a pen. これは(一冊の)本です
There is a book. 一冊の本があります
I have a pencil. わたしは(一本の)鉛筆を持っています

これは不定冠詞 “a” やbe 動詞の使い方を覚えたりするには悪くありません。そのため、これらをまとめて問題にしたい気持ちはよくわかるのです。しかし、使う状況がほぼ存在しない言い回しを覚えてどうするのかという根本的な疑問が残ります。一体いつどんな場面で女の子に向かって “You are a girl.” と言うのでしょうか?

あるいはこんな感じの選択式の問題もよく目にします。

The girl was heard ( ) by him.

① sang
② sung
③ to be sung
④ to sing

一応正解は④で、”The girl was heard to sing by him.” なんだそうです。

これなど文法学習のためだけに作られた典型的な文章だと言ってもいいでしょう。しかし、こんな奇妙な言い方、アメリカに20年住んでも遭遇しません。はっきり言って悪文ですし、学校の現地の小学校の作文で書いたら、「わかりにくい」と先生に直されるレベルです。しかし、学習者にはこれが悪文なのかの判断さえつきません。

「ネイティブは文法がわからない」「英検1級は超難しい」「帰国子女でもできない」「文法をやりこむのが大事」なんて言う人が時折いますが、大抵の場合、設問が悪いだけです。そしてこのよう非現実的な穴埋めの問題をスラスラと解けるようになっても、実際の会話力や文章力の向上にはほとんど何も寄与しないのです。なお、この問題、普通に能動態で “He heard the girl sing.” と言えばいいだけです。

元コーネル大学客員講師の米原幸大先生にお伺いしたところ、作家の村上春樹氏がプリンストン大学でで日本文学を教えていた時のエピソードをお話ししてくださったのですが、プリンストン大学の大学生は週に何回かの日本語の授業があるだけなのに、わずか3年間で村上春樹氏の著作を原作で読み、日本語で議論できるようになったと言うのです。いくらプリンストン大の大学生が優秀であるにせよ、この差は一体なんなのか、考えてみる必要があります。結局、文法のための文法学習はいくらやっても会話に役立たないのです。常に使うことを念頭に置き、ありえない表現や設問は取り除いていく。こうしたアプローチが大切です。

なぜ多読、多聴なのか?

ではなぜ多読、多聴なのでしょうか? 話は簡単で、アウトプットの質と量を向上させたかったら、インプットの質と量を上げるしかないのです。これは日本語でも同じことです。普段、テレビでバラエティ番組しか観ていない人は、そのレベルの以上のことを話すことはできません。もしかすると面白いことをポンポン言えるようになるかもしれませんが、それ以上にはなりません。考えてみれば当たり前ですよね。バラエティ番組に止まらず、ニュース、ドラマなども視聴する、小説や論文やハウツー物も読む。こうしたことの繰り返しで、豊富な語彙や背景知識が蓄積され、やがて話したり書いたりできるようになるのです。

英語もまったく同じことです。英語で質の高いアウトプットをしたいなら、たくさん読んで、たくさん聴くしかないのです。また、インプットする内容は徐々にレベルアップさせていく必要がありません。問題集ばかりやっていても、至極簡単な挨拶さえもスムーズに口から出てきませんし、それどころか、さっきのような “The girl was heard to sing by him.” なんて言う珍妙なフレーズを言ったり書いたりしてしまうのです。

参考記事:洋書の多読を効果的にする6つのコツ
参考記事:多読に適した英語の本の選び方

文法学習はどうすればいいのか?

しかし、いきなりどんどん読んだり聞いたりしろと言われても、戸惑ってしまう人も多いでしょう。特に初心者の場合は、戸惑いが大きいのではないかと思います。

そんな方は、まずは簡単な文章を100〜200ほど丸暗記してしまいましょう。最初はbe動詞、次は一般動詞など、教科書と同じ順番で覚える必要さえありません。とにかく使用頻度の高い文章を200ほども覚えれば、なんとか必要最小限の会話ができるようになります。そしたらスカイプレッスンでもしてどんどん使ってみましょう。すると、「なんで “I like Sushi.” なのに “He likes sushi” なんだろう?」などといった具合に、疑問が芽生えてくるはずです。そうしたら、初めて関連する文法を学習すれば十分です。

実は前述のプリンストン大学の話も同じことなのです。そのときどきに必要な文法のルールを、きちんと会話と結びつけて覚えていく。すると、文法学習だけが一人歩きすることはありません。単語だって言い回しだって同じことなのです。必ず会話に結びつけ、すぐに使ってみましょう。

そうこうしているうちに最小限度の文法が頭に入ってきます。レパートリーも増えてきます。そうしたら子供向けの本や子供向けの番組からスタートして、どんどんネイティブ向けのコンテンツを多読、多聴していきましょう。疑問に突き当たったらその都度解消していけばいいんです。最初から全部文法を暗記してから話そうなんて思うから、話がややこしくなるのです。

ちなみにブライチャーにきて3ヶ月程度でかなり喋れるようになってしまう人、かなりいます。本当のところ、全くのゼロからスタートしても、3ヶ月くらいやればごく初歩的な会話は営めるようになるのです。

英語で深い話ができるようになりたかったら、質と量をあげながらとにかく多読、多聴です。最初は自分の興味のある分野だけでいいので、営々と続けましょう。そして、覚えたことはスカイプ英会話などですぐに使ってみましょう。

参考記事:「ほぼゼロ」から、3ヶ月でしゃべれるようになったYさん
参考記事:「上級者ばかりかと不安でしたが、かえって刺激的でした」3ヶ月のフィリピン留学をされた大学3年生の奥田さん

いい先生ってどんな人?

なお、スカイプレッスンにせよ、実際にマンツーマンで対人レッスンを受けるにせよ、とにかくすぐに褒めてくれる先生には要注意です。いい気分は味わえるかもしれませんが、結局は上達の妨げになるからです。間違っているところは間違っているとダメ出しをしてくれる先生が、結局はいい先生です。

オンラインレッスンにせよ、駅前の英語教室にせよ、フィリピン留学にせよ、褒めちぎってくれるところはとにかくやめておきましょう。発音も文法も同じです。また、生徒にたくさん喋らせてくれる先生もいい先生です。英語教室も客商売ですから基本的に褒めるところが多いですが、中には真っ当な学校も存在します。しっかりと間違いを指摘してくれる学校は実にいい学校ですから、とことん通い倒してください。

Brightureでの取り組み

Brightureでは多読を強く推奨しています。そして、英作文、会話練習を繰り返す中で、文法的に正しく、それでいてナチュラルな言い回しを反復して指導することで、正しい文法が実際の会話や作文の中で使えるよう指導しています。皆さんもブライチャーの授業を一度体験してみませんか? 今ならオンラインで無料体験が可能です。お気軽にぜひご利用ください。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。