【英語学習法】英単語を「実際に使えるように」覚えていく方法

英語で英語を覚えるというと、なんだかすごく難しく感じるかもしれません。でも、実はそれほどでもありません。僕らだって、日々新しい日本語をなんとなく覚えていっているのです。

一つ例をあげましょう。例えば僕、「幹事」って単語、僕は一度も辞書で調べたことがありません。でも、なんとなく意味を知っています。多分、クラス会とか宴会とかやる度に「〇〇さんが幹事ね!」なんて会話を何度も聞いているうちに覚えていったのです。

新聞を読めば「自民党の〇〇氏が幹事長に就任」なんて記事を目にしますから、これと宴会の幹事は別物だな、と調べなくても内容から推測できます。このため、特に調べなくても混乱も来たしません。使用シーンによって、どちらの「幹事」を指すのか、僕らは迷うことなく察することができるのです。

つまり、別に辞書なんか使わなくても、結構複雑な単語を覚えられるのです。要はどれだけいろんなシーンで遭遇したかです。遭遇回数が多いほどにそれぞれの単語の輪郭が鮮明になってきます。

あるいは社会人になってから覚えた言葉に「ご査収ください」なんてものがあります。これ、「よく確認して受け取ってください」というような意味ですが、「添付ファイルを確認して欲しいときに使う言葉だね」ってな感じですぐに違和感なく使えるようになりますし、意味もなんとなくわかります。

英語で英単語を覚えるのも、要するにこれと同じことです。何度も遭遇するうちに単語の輪郭がだんだんはっきりしてくるのです。

僕は大抵の英単語をこんな感じで覚えました。例えば “preposterous” という単語がありますが、これ「無茶苦茶」みたいなニュアンスで使います。”That’s preposterous!” と言えば、「そりゃ無茶だよ!」といったイメージです。

この単語も、ダベっている間に何度も遭遇して勝手に覚えました。辞書で引くと、「〔議論・考え方などが〕本末転倒の、不合理な、非常識な、ばかげた」なんて具合に説明されています。

ほかにも何度も耳にしていて、「なんとなくこんな意味かな?」と思って一度だけ辞書で引いてみたら、イメージしていた状況とぴったりマッチし一発で覚えた単語もたくさんあります。

こうしてみると、日本語を覚えるときと実はそんなに変わらないのです。

質問箱にこんなコメントを頂いたのですが、まさしくこの方のおっしゃる通りです。

しかし、そうは言っても、どうやって覚えればいいか迷う人も多いと思うのです。そこでこの記事では、単語の覚え方のコツを説明したいと思います。

コツ1 完璧に覚えようとしない

まず、単語帳でもアプリでも使うのはなんでもいいのですが、その都度いちいち完璧に覚えようとするのはやめにしましょう。日本人はとても真面目な性格の人が多いので、あるページが完璧に覚えられないと、次に進んではいけないような気がしてしまう人、かなりいると思うのです。

しかし、覚えた単語を直後に反復しても、記憶定着にはほとんど効果がないことはよく知られています。復習をするには正しいタイミングがあるのです。

人間というのは、何を覚えても時間の経過と共にどんどん忘れて行くようにできています。これを「エビングハウスの忘却曲線」というのですが、ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスが発表したのでこの名前がついています。

これ、自分たちの経験則とだいたい一致していますよね。新しい単語を覚えたつもりになっても、1時間もすると怪しくなってくるものです。人間っていうのは、多分どんどん物事を忘れるようにできているのです。ちなみにエピングハウスの実験結果はちょっと悲しくなるレベルで、何かを覚えても20分後には42%も忘れてしまうそうです。なお、この実験の被験者は「子音+母音+子音」からなるまったく無意味な単語を覚えさせられたそうなので、意味のあることならば、もう少し覚えているかも知れません。いずれにせよ、右から左へと忘れてしまうのが僕ら人間なのです。

それではどうしたらいいのかというと、間隔を開けて復習するのがいいと言われています。 人間って「あ〜、あれなんだっけ??」という悔しい思いを何度もすることで、短期記憶を長期記憶へとコミットしていくのです。何度も思い出そうとするたびに脳が「これは覚えておかないといけないことだ」と認識するからです。

では具体的には何をすればいいかというと、忘れかけてきた頃に復習するのがいいのです。記憶が鮮明なうちに復習しても効果がありませんし、すでに忘れてしまってからでは、初めからやり直しになってしまうからです。というわけで、忘れてきた頃に復習するようにします。

なので、数ページごとに完璧を目指さなくてもいいのです。どんどん進んで、数日したらまた元のところに戻ってみましょう。1度目で覚えられなかった単語も2度目、3度目と遭遇するうちに「あれ、この単語この間も見たのに覚えられなかったな。ヤベエ。覚えよう!」というフラグが立ちます。そしてまた数日後にやってみると、すっかり記憶に定着している単語、やっと思い出せる単語、あるいはまだ全然覚えていない単語といろいろあるはずです。でも、間隔を開けながら繰り返すうちに、少しずつですが確実に記憶に定着します。復習を挟みながら、どんどん前に進んでいきましょう。思ったより早いペースで単語を覚えることができます。

コツ2 いろいろな辞書で調べてみる

英英、英和、類語(シソーラス)など、いろいろな辞書で調べてみましょう。パソコンやスマホで辞書を設定しておくと、この3つを同時に眺めることが可能です。また必ず発音も確認し、例文にも目を通しておきます。

ちなみに先ほど例に出した “preposterous” という単語ですが、これをMacOSに内蔵の辞書で調べて見えるとこんな感じに表示されます。単語を選び、3本指でタップすると見えます。こんな風に、英英、シソーラス、英和と全部一度に眺められるように設定しておきましょう。

こうして同意語なども眺めてみると、aburd, foolish, rediculous などとありますから、徐々にイメージが湧いてきます。英英と英和の意味もそれぞれ眺めておきます。

また右クリック(または Control+クリック)でメニュを選択すると単語を読み上げさせることもできますから、その場で発音を確認します。何度か呟いて、へんなローマ字読みで覚えないように練習します。

なお、「英和辞書を使っていいですか?」という質問をよく頂きますが、もちろん使って頂いて構いません。ついでに辞書アプリや辞書サイトを使って、必ず例文にも目を通してください。実際に例文に目を通してみると、具体的な用法もわかりますし、単語のもつ輪郭が徐々に見えてきます。そして「これは重要だ!」と思う例文などがあったら、自分の単語帳にも書き込んでおきましょう。

コツ3 イメージで覚える

次は面倒臭がらずにGoogleでイメージ検索をしてみます。僕がもっとオススメするのは、iStockPhotoGetty Images などのイメージ販売サイトで検索してみることです。すると結構いい感じでサーチした単語のイメージが出てきますから、そういうものをちょっと真似して、単語帳に簡単なイラストも書き込んでしまいます。なお、先ほどの “preposterous” をiStock Photoで調べると、こんなイメージが出てきます。

なんか、かなり気が狂ったイメージの言葉であることがわかってきました。なお、このようにイメージで覚えておくと、日本語を介さずに単語を引き出せるようになりますから、実際に会話で使うときなどに一段引き出しやすくなります。

コツ4 例文を作る

そしたら今度は例文をいくつか作ってみます。最低5つくらいは作ってみましょう。辞書サイトの例文などを参考にしながら、「こんな感じかな?」と作れば大丈夫です。5〜10くらい作ってみると、だんだんイメージが湧いてきます。もし、ネイティブや英語の先生などに文章を確認してもらえる機会があったら、おかしな文が出来上がっていないか必ず確認してもらいましょう。日本人はとにかく冠詞と単数形、複数形を間違えやすいので、作文する際にはここに注意です。なお、ここでは便宜上和訳も書いていますが、実際には不要です。

That is a preposterous idea!
それは無茶苦茶なアイデアだ!

I have never heard of such a preposterous story.
そんな無茶苦茶な話は聞いたこともない!

They make preposterous demands.
あいつらは無茶な要求をしてくる。

It is preposterous to believe that the Earth is flat.
地球が平らだと信じるなんて頭おかしすぎる。

Even though the plan sounds preposterous, I think it can be done.
その計画は無茶に聞こえるけど、僕は実現可能だと思う。

His idea of selling dead bugs for big money is totally preposterous!
彼の死んだ虫を大金で売ろうっていうアイデアは全く頭がいかれている。

I find your accusations preposterous.
あなたの非難は全く無茶苦茶だと思う。

It’s preposterous to even think that.
それを考えること自体が無茶苦茶だ。

文章が出来上がってチェックしてもらえたら、今度は実際に声に出して練習してみましょう。

コツ5 何度も遭遇する

これ、しょっちゅうあちこちで言っていますが、読んだり聴いたりして実際の生の英語に触れること、本当に大事です。すると、会話や文章の中でそれぞれの単語がどのように使われるのか、少しずつ蓄積されていくからです。ちなみに私自身は、ほとんどすべての単語を多読多聴だけで覚えました。単語帳を作って覚えたのは最初の3000語くらいだけです。

コツ6 実際に使ってみる

もっとも有効なのは、実際に単語を使ってみることです。これには「書く」「話す」の二つのアプローチがあります。やっぱり自分で考えて使うと、確実に定着します。また、先生がいれば、誤って使った場合にはすぐに修正されるので、誤ったまま定着することもありません。

まずは、実際に使うシーンを想定して例文を考えます。「会話のこんな流れの中で使おう」「プレゼンのときにこうに利用しよう」という具合です。そして実際に使うシーンを思い浮かべて、演劇の練習のつもりで何度も口に出して、音を口になじませます。

そしたら例えばオンライン・レッスンなどで使ってみましょう。これを繰り返すことで、確実に使える語彙が増えていきます。

実際に使える単語を増やそう!

なお聞いたり読んだりしたときに理解できる単語数と、実際に使える単語数の間には大きな隔たりができるものです。たとえば、日本人がオンライン・コミュニケーションの際に使う日本語の単語数はおよそ8000語という調査結果がありますが、単に聞いたり読んだりして意味が理解できる単語ならば、およそ35,000語程度は読解可能という調査結果があります。つまり、母国語ですら知っている単語の4分の1くらいしかスラスラ出てこないというわけです。

日本人のオンライン・コミュニケーション上での平均使用語数は8000語である

千葉大学国際教養学部:使用頻度に基づく日本語語彙サイズテストの開発―50,000語レベルまでの測定の試み―

外国語だと、この傾向はもっと顕著になります。TOEIC900点持っているのに喋り出すと幼児並みになってしまう人などざらにいます。知っている単語が10,000くらいあっても、いざ喋り出すと1000も使えなくなってしまうのです。

そうは言っても、読んだり聞いたりできればとりあえず情報収集には使えるわけですから、これはこれで良いのです。しかし、流暢に喋れるようになりたいなら、瞬時に引き出して適切に使える単語の数を増やしていくのも大切です。ある日急に喋れるようにはなりませんから、普段から、まだ使い慣れていない単語を活用する練習も取り入れて、単語の駆動率を上げていきましょう。

理想的なインプットとアウトプットの比率は8対2です

なお、言語獲得で一番重要なのはインプットの量です。インプット8割、アウトプット2割が適切な割合と言われています。また、インプットと言っても文法や単語集を回すだけではなく、実際に使われている英語に大量に触れるのが大切です。

そうは言っても、最初の数1000〜3000語くらいの単語は、とりあえず単語帳をグルグル回して覚えてしまうのも一つのやり方です。僕自身も最初の3000語くらいはこんな感じでゴリゴリ覚えていきました。そうすると、本を読んだり聞いたりしたときに理解できる単語量がとりあえず増えるからです。

なお、英語だと語学習得法についての研究論文が膨大にあるのですが、日本語に訳されているものが少ないのが残念です。日本語で読んでみたい方にはこちら2冊をお勧めします。言語習得について、理解が深まること請け合いです。

Brightureでやっていること

ブライチャーの体験談を読むと「宿題が大変だった」という内容が多いのですが、これは大量のインプットを課しているからです。以前は宿泊施設のネット環境が遅かったため課題が「読む」に偏らざるを得なかったのですが、最近はネット環境が大幅に改善したので、読むことによるインプットだけに囚われず、聞くことによるインプットの比率を高めています。短いPodcastのニュースなどを聴き、そのサマリーを書いてきてもらうといった課題をやって頂いています。

ただ、一番いいのは日本にいるうちに大量にインプットしてくることです。そこでBrightureでは留学前にカウンセリングを実施し、課題図書やPodcastなどをお知らせしています。単語帳については特に「おすすめ」は設けていませんが、「DUO3.0」(アイシーピー)のような定番をやっておけば間違いはありません。この記事のやり方を参考に、自分のレベルにあった単語帳を回してみてください。

Brightureのレッスンを体験してみたい方へ

Brightureは現在、オンラインにて無料体験レッスンを提供しています。実際にどんな授業なのか体験してみたい方は、どうぞお気軽にお申し込みください。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。