【英語学習法】そもそも単語はどうやって覚えるのが効果的なのだろうか?

実際に英語を喋って愕然とするのは、簡単な単語や言い回しが使いこなせないという現実です。本当に至極単純な会話が通じないことも、シンプルな話がさっぱり聞き取れないこともあります。

また、いわゆる句動句(phrasal verb)なども、知っているはずなのに口をついて出てこないものです。単語帳で見た記憶があっても、本当に笑ってしまうくらい話せません。

一体なぜこうなってしまうかと言うと、「実物」とのリンクが一切ないままに単語や言い回しを暗記しているからです。実際の物事ではなく日本語とリンクさせて覚えているため、とっさに必要な言葉が引き出せないのです。

そもそも、日本語と英語は1対1で対応しない

そもそも日本語と英語とでは捉え方がまったく異なる単語や言い回しがたくさんあります。たとえば英語には「兄」「弟」「姉」「妹」のように兄弟姉妹の関係を一語で言い表す単語がありません。必ず “older brother”, “younger sister” などのように、2つ以上の単語を組み合わます。また英語には siblingと言う単語がありますが、性別も年齢も関係なく兄弟姉妹を表す日本語の単語はありません。

日本語では手にも足にも指(fingers)がある、と考えますが、英語では手に付いているものだけが “fingers” で、足についている方は “toes” です。また、英語では「腰」にピッタリと当たる単語もありません。この辺りの部位を示す言葉は “lower back” というのが普通です。

こうした違いは至る所にあります。ですから単語を無理やり日本語に結びつけて覚えると、話が噛み合わなかったり、しっくりと伝わらなかったりするのです。

ちなみにこれなんて言うかわかりますか?

これは?

毎日使わない人はいないと思うのですが、ほとんどの人がわかりません。

これは?

コンロが二つありますが、複数形になるのでしょうか? それとも全部セットで一つなのでしょうか?

これはどうでしょう?

正解はそれぞれ:

1)power outlet です。このほか、AC outlet, electric outlet などとも言います。

2)power plug です。この写真のようにピンが2本出ていたら、2 prong power plug, アメリカでよく見るような3つのピンが出ているタイプは 3 prong power plug などと呼びます。2 pin, 3 pinと言っても通じます。

3)stove です。ガス台自体が stove で、実際に火が出る口の部分は burner です。この写真のように2つの burner を備えた stove は 2 burner stove となります。アメリカでは4 burner stove が一般的に普及しています。

4)faucet です。tap ということもあります。また、水道水は tap water です。

僕もアメリカに住み始めた頃には何度も口ごもってしまったものです。日常に使う単語がほとんどわかりませんから、情けないほど簡単なことさえ話せませんでした。「Demand elasticity = 経済弾力曲線」とか言えるくせに、「ガスコンロの上にあるフライパンにスープが少し残ってるよ」くらいのことも、スムーズに出ないのです。

それもこれも、生活の中の実物抜きに単語を覚え、実際にどうやって使われているのかを一度も目にしないまま、ひたすら日本語と英語をリンクさせて覚えてきたからです。

動詞はもっと手ごわい

それでもまだ名詞はいい方です。例えば ”say, tell” はどちらも「言う」、“speak, talk” は「話す」と覚えますが、それぞれ使い方に明確な違いがあります。しかし、その違いを理解し、とっさに使い分けられる日本人はあまりいません。日本語には訳せますが、英語を英語のまま使えないのです。

句動句はさらに手強く、日本語に当てはめて覚えようにも、そもそも英語と日本語の表現が1対1で対応しませんし、脈絡がなさすぎて極めて覚えにくいものです。僕も日本語と対訳で覚えようとしましたが、さっぱり使い物になりませんでした。

これも”bring” “back” “over” などの動詞や副詞にそれぞれの語感があるのに、こうした言葉の働きを一切無視して日本語に無理やり当てはめて覚えようとするから難しいのです。要するにこれも、実際のシーンやイメージや動作がごっそり抜けているのが、暗記しても使えるようにならない最大の原因です。

結局、母国語に置き換えながら暗記していくというアプローチは、根本的に無理があり、すぐに限界がきてしまうのです。

名詞は絵と単語をリンクさせて覚える

では一体どうやって覚えればいいのでしょうか?

名詞に関しては、できる限りイメージと英単語をリンクさせて覚えるのがポイントです。僕は家族でアメリカに移住した時に、子供たちに片面に単語、もう片面に絵を描いたフラッシュカードを作らせ、最初の数百語を覚えてもらいました。フラッシュカードを作るのに多少時間がかかっても、最初から英語とイメージを結びつけることができるため、日本語を思い出してから単語を思い出す一手間が抜けます。また、リスニングでも、単語を聞いた瞬間にイメージが浮かぶようになります。


また、机の上にあるものや、部屋の中にあるものをすべて英語で言ってみます。わからない単語は調べて、写真を印刷するなり絵を描くなりしてフラッシュカードを作り、片っ端から覚えていってください。以前僕はセミナーでこの写真を見せて、英語で説明してもらうアクティビティをやったことがあります。


写真の中のもの、すべて言えるでしょうか? 二人が着ている服は? 自転車やオートバイについている部品などはどうでしょう? 2階建ての家は? 後ろの塀はどうでしょうか? 植え込みは? 

不確かなことがあったら必ず調べて、今度もまた絵や図にして、フラッシュカードに落としていきます。こんなふうにいろいろなシーンや風景を英語で描写することにトライしてみます。僕も最初の頃は「看板」とか「消火栓」とか「交差点」とか「横断歩道」とか、本当に簡単な単語が全くわかりませんでした。

なお、単語を調べる際に和英辞書やインターネットを使ってくださって一向に構いません。そして該当する英単語が見つかったら、今度はその単語でグーグルのイメージ検索をしてみてください。時折ちょっとおかしな英単語が辞書に記載されていることがあるからです。目的のものが画面いっぱいに表示されれば、大抵の場合は正しい単語です。なお、これでもちょっと微妙な場合も実はあるので、ちょっとでも不確かな感じがした場合には、僕は必ず英英辞書でも調べています。

名詞がわかったら、次は写真の中の物体や人間の位置関係を言い表してみます。隣同士って言えますか? すぐ後ろは? やや後方は? 上は? 下は? おそらくたくさんの疑問が湧いてくるのではないかと思います。これもまた調べてフラッシュカードです。

また、情景をきちんとした文章にして表現してみましょう。最初のうちはうまく書けなくて当然ですので、気にすることはありません。書けた作文はネイティブか、それに準ずる人に見てもらい、おかしなところを直してもらってください。これはお金を使ってでもやるべきことです。

こうして静止画からスタートして、少しずつ言えるようになってきたら、次は過去の出来事や未来の計画などといったふうに設定を変えて色々な状況を表現してみます。映画の一シーンを説明してみるのもなかなか難しいですが、非常に勉強になります。そして、こういう勉強方法なら大半のことは自分一人で可能です。

子供向けのコンテンツはいい参考になります

なお、幼児向けの絵本などはとてもいいサンプルです。結局ネイティブも、絵本を読み聞かされて覚えていくからです。最初のうちは文章が数行で、ほとんどが挿絵の本でスタートします。すると、英語でのナチュラルな表現方法が吸収できます。例えばBrightureで初心者に使っている Little Miss Sunshine という本がありますが、こんな薄っぺらい幼児向けの本でも、普通に過去完了進行形などが出てきます。この抜粋の3行目の”I’ve never heard of that before!” は「そんなの聞いたことない!」と言う時の決まりも文句です。こんなふうに、いたるところによく使う表現が散りばめられているのが、絵本のいいところです。

Little Miss Sunshine had been on vacation.(過去完了形)
She’d had a lovely time,(過去完了形) and now she was driving home.(過去進行形)
”I’ve never heard of that before!” (現在完了形)

幼児の向けの本は本当に侮れません。TOEIC900点をとった方がこれらの絵本をめくって知らない単語に遭遇するのです。ネイティブなら4歳児でも知っているごく日常的な単語でも、英語上級者のはずの人が知らないのです。

また、絵本には“Daddy came home. Then Mommy Came home. Then Alex came home, and finally, Sally came home too!” などのように、主語だけ入れ替えて何度も同じ文章が続くパターンのものが多いですが、これなどもよく使う言い回しを自然と定着させる素材として、非常に優れています。

さらに絵本は句動句の宝庫です。幼児がまず覚えなければならないのは、基本動詞や副詞、それから簡単な形容詞などだからです。例えばここに、Harry the dirt dogという有名な絵本があります。


ここからいくつか文章を拾ってみます。

Then he ran away from home.
He slid down a coal chute and got the dirtiest of all.
Harry began to wonder if his family thought that he had really run away.
He felt tired and hungry too, so without stopping on the way he ran back home.
One of the family looked out and said, “There’s a strange dog in the backyard…By the way, has anyone seen Harry?”
He rolled over and played dead.
Soon he jumped away from the hole barking short, happy barks.

このサンプルの中にすでに ran away/run away が2回出てききます。また jump away という言い方も出てきます。またこの本はせいぜい合計30行ほどの本ですが、この中にplayという単語が4回出てきます。2回は「遊ぶ」の意味で、1度は play tag で「綱引きをする」、もう一つは play dead で「死んだふりをする」です。また look という単語も4回出てきます。一つは look at, で「見つめる」、もう一つはlook out で「外を見る」です。この look out には「目を配る」というニュアンスもありますが、この物語の中では「外を見る」という意味で使われています。もう2つは“Mummy! Daddy! Look, look! “ という文章で、「見て!見て!」という使われ方です。

こうして何度も何度も同じ単語が異なった使われ方をするのに遭遇するうちに、それぞれの単語に対する語感が芽生えてくるのです。run away と聞いて、「逃げる」という日本語が浮かぶのではなく、誰かが逃げていく様がビジュアルに思い浮かぶようにしていくのがポイントなのです。 基本動詞ほど、こうして遭遇回数を増やして感覚を養うのが結局は近道です。ちなみに我が家では、この辺りの基本動詞もまずは絵に描いて覚えてもらいました。そしてこの手の絵本から読書をスタートしました。さらにピクサーのDVDを買い与えておいたら、勝手に100回くらい見て、移住した年の暮れには少しばかり話せるようになっていました。

さらに文を作って定着を図る

さらに、記憶に定着させたい単語や言い回し、あるいは文章をたくさん書いてみるのも効果的です。例えば come up with 〜と言う句動句がしっくりこないとします。そうしたら、この句動句を使った文章をたくさん作ってみます。

We have to come up with new teaching methods.
He came up with a new way to use up the leftover chicken.
Paul came up with the idea of dividing the rooms in half.
We will sleep on it and see if we can come up with anything.
….
….

この際に、ただ漫然と例文を写すのではなく、自分なりに考えて、自分の言葉で書いてみるのが大切です。つまり、脳内のイメージを、実際の英文に落とす訓練です。多少文法がチグハグでもいいので、とにかく書いてみます。そして出来上がったら、赤入れをしてもらいましょう。そして正しい文章が揃ったら、今度はそれを声に出して暗唱して定着を図ります。

側から見るといつもブツブツ言ってると怪しい人みたいですが、これの繰り返しで徐々に脳内に定着するのです。

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そして言い回しが溜まってきたら、ときどき英会話に挑戦です。この記事で紹介したようなやり方で、絵や写真や映画の1シーンや、昔の出来事などを話してみては修正してもらってもいいでしょう。スムーズに言えなかったところは改めてまた自分一人で練習し、再びリベンジマッチに挑戦です。こう言うことの繰り返しで、少しずつ上手くなるのです。

記憶の定着は、忘れかけた頃に反復練習をするのが効果的

人間の記憶というのは、何度も思い出そうとすることで定着します。実は習った直後の復習にはあまり効果がないことも、最新の研究で確認されています(詳しく知りたい人は事項で紹介する本をぜひお読みください)。何度も続けざまにやるよりも、忘れそうになった頃にまた復習をする方が効果的なのです。すると、記憶が薄れてきたタイミングで「思い出そう」するので、より確実に記憶に定着します。

また、一つのことをしっかりとマスターしてから次のことに課題に移った方がいいと考えがちですが、これも実験で否定されています。僕はよく8割がたできたら次に進みなさいと言っていますが、このように分散学習した方が頭に残るのです。しばらくして以前やっていた課題に戻ってみると、今度は驚くほどよくわかるということがしばしばあります。

さらに効果的なのは、習ったことを人に説明することです。自分の中でよくまとまっていないと、人に説明なんてできないからです。自ずと、教える側の方が勉強になります。

日本の英語教育の何が間違っているのかを知りたい人に

さて、ここで本の紹介です。

「もしも高校四年生があったら、英語を話せるようになるか」


この本、日本人がなぜ英語が話せないか、小説形式で上手にまとめてあります。読みながら自分の苦労を思い出して何度も頷いてしまいました。残念ながら、日本の英語教育は、僕が高校生だった35年前とほとんど何も変わっていません。そして翻訳と文法に著しく偏ったやり方は、何かが根本的に間違っているのです。目から鱗が落ちますので、ぜひ読んでみてください。

「日本人のための 一発で通じる英語発音」


また4月10日より、僕の5年ぶりの新刊が出ます。発音の学習書です。この本は今後、Brightureの指定図書にします。QRコードが各所にあり、それをスキャンするとビデオのページに飛びます。CDを付属させると値段が上がりますし、今時CDプレーヤを持っている人の方が少ないので、このような形式にしました。ビデオのほうは随時追加して、今後さらに充実させていきます。

「進化する勉強法:漢字学習から算数、英語、プログラミングまで」


復習の効果的なタイミングなどについて知りたい方はこちらの本をオススメします。なおこの本には「発音よりも文法を優先して勉強した方がいい」という趣旨のことが書いてありますが、文法は必ず実際に使うこととセットにして学習しないと、実際の会話のシーンで瞬時に引き出して使えるようにはなりません。くれぐれも文法学習だけやって満足することがないよう気をつけてください。文法の学習ばかりやって話せるようになるなら、日本人でそこそこの大学を卒業している人は全員話せるはずですが、現実は全くそうなっていないからです。この文法学習と実践を組み合わせる学習方法は Focus on Form と呼ばれ、世界の言語教育で現在主流を占めている学習方法です。

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Brightureでできること

Brightureでは基本的に日本語の問題集や例文集などを使っていません。僕たちが作りたいのは「イメージ=英語」が直結した回路であって、「イメージ→日本語→英語」の回路ではないからです。英語は英語のまま捉え、脳内に英語の感覚を養っていくのが大切なのです。

日本語による説明は建築現場の足場のように捉え、イメージと英語を直結する回路が育ってきたら、徐々に外していきましょう。英語は英語のまま処理できるようにならないと、高速の会話についていける日は当分やって来ません。

なお、フィリピン留学は、語学学習に最適の環境を提供してくれます。なぜなら、強制的に何百時間も英語に浸りきるからです。Brightureに留学してくるみなさまの平均学習時間は1日10時間に及びますから、3ヶ月滞在すれば1000時間程度の時間を注ぎ込むことができます。実際に、超初心者が3ヶ月間留学し、そこそこのスピードで会話ができるようになってしまいます。皆さんも是非Brightureで学習してみませんか?

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。