【英語学習法】会話の瞬発力を上げるにはどうすればいいのだろうか?

僕は留学希望者の方の学習カウンセリングをするのですが、どの人も「すぐに言葉が出てこない」ことですごく悩んでいます。何かを言おうとしたり、相手に何かを聞かれたときに、即時に反応できないのです。

原因は色々考えられるのですが、大体次の5つに落ち着きます。

1)発音ができない
2)単語を知らない・あるいは知ってても出てこない
3)文法を知らない・あるいは知っていても出てこない
4)最初に日本語で文を作らないと、英文が作れない
5)頭の中で一度文章を作ってからでないと話せない

また、聞き取れない方もだいたい同じようなことが原因となっています。

1)発音が聞き取れない
2)聞き取れたとしても、単語を知らないか、思い出せない
3)文法を知らない、思い出せない
4)単語や文法を知っていても、日本語を訳さないと理解できない

みなさん、これをなんとか克服しようと単語帳や文法書を何周も回すわけですが、それでもなかなか瞬発力が上がりません。

それでは一体、何をどうすれば瞬時に言葉が出るようになるのでしょうか?

脳内処理のやり方が間違っている?

この「瞬時に言葉が出ない」という問題に光を当ててくれる書籍があります。ダニエル・カールマンというノーベル賞受賞者書いた上下2冊の書籍です。


カールマン氏はこの書籍の中で、人間の思考モードをシステム1とシステム2という多重システムとして考えています。

システム1
自動的に高速で働き、努力は不要。自分でコントロールしている感覚は一切ない。自動的で処理が早く、連想的であり、かつ感情的。いわゆる「右脳」。

システム2
頭を能動的に使わなければならない。困難な知的活動に使われる。段階を踏み、順序立てて考えを練り上げる。努力を要し、処理が遅い。また、意識的であり、客観的である。いわゆる「左脳」。

簡単な例を出すと「2X2は?」と言われればシステム1が自動的に動いて「4」と即答できるのに対し、「59X28は?」と言われると、システム2を意識的に使い、計算式を立てて、順番に処理しないと答えが出せない、といった具合です。

つまり、ペラペラと話せる人はほとんどの会話をシステム1で行うことができるのです。一方、とっさに言葉が出ない人や、高速のマシンガントークが理解できない人は、システム2を駆使して英会話を営んでいるというわけです。

つまり上達の鍵は、「システム1で英語が扱えるようすること」にあります。

システム1のトレーニングに必要な条件

では次に、システム1がどのような学習プロセスを踏むのかをみてみましょう。システム1が何か新しいスキルを学習するには、次の条件を満たしている必要があります。

1. 学習環境が固定されている
2. 同じ要素が用いられる
3. たくさん触れる
4. 長時間の繰り返す
5. 直ちにフィードバックが与えられる
6. 自然に学習される

それでは一つずつ解説しましょう。

1)学習環境が固定されている

僕らが最初に言葉を覚えたとき、毎日同じ親から話しかけられます。あるいは運転を覚え始めの頃は、取り敢えず知っている道を行ったり来たりして運転操作を体に馴染ませます。こうすると、道を把握することと、運転を覚えることの両方に注意を払わずに済むからです。お箸の使い方を覚えるときには、毎日同じお箸とお茶碗を使います。こうして環境を固定することで、学習内容に集中することが可能になります。

2)同じ要素を用いて学習する

母国語は文法を習った訳でもないのに正誤が直感的に理解できます。これは幼児期に毎日同じような単語を用いた会話を繰り返すことで、そこから一定のパターン(文法)を抽出し、内在化させたからです。つまり、使われる要素(この場合は語彙や文型)をある程度固定することで、文法ルールの抽出が可能になります。

3)たくさん触れる

またシステム1でスキルを取得するには、大量のインプットに触れる必要があります。特に言語は構造が非常に複雑ですし、発音、文法、語彙と獲得しなければならない要素が多いですから、大量のインプットが必要となります。

4)長時間繰り返す

九九の掛け算などを考えてみるとわかりやすいかと思いますが、考えた瞬間に答えが思い浮かぶようになるには、たくさん反復する以外これといって方法がありません。するといつの間にか、なんの苦労もなく瞬間的に答えが出るようになります。

5)直ちにフィードバックが与えられる

またもう一つの大切な要素は、直ちにフィードバックが与えられることです。例えば自転車の運転で言えば、ハンドルを大きく切り過ぎたり、ペダルを不用意に強く踏み込むとたちまちバランスを崩します。あるいはテニスの壁打ちをしているのなら、ちょっと打ち損なうとたちまち明後日の方にボールが飛んで行ってしまいます。こうしたフィードバックをすぐに得られることで、自分のやり方を修正していくことが可能になります。

6)自然に学習する

さて、この「自然に学習する」というのはどういうことでしょうか? これは教科書からルールを学ぶといったことではなく、トライ&エラーしながら何度も繰り返すうちに、いつの間にか身についた、というようなやり方です。母国語も歩行も文字の書き方もタッチタイピングも、僕らはこのようなやり方で学習しています。

こうして見てみると、正しい環境を構築した上で長時間触れ、さらに何度も繰り返すことで、システム2でのスキル習得可能になることがわかります。つまり、どのような学習環境を作るかが極めて重要なのです。

英語学習に応用するには?

さてそれでは次に、どうすればこれを英語学習に当てはめることができるのかを考えてみましょう。

1)学習環境を固定する

まず最初は、安全と感じる環境で学習することが大事です。運転を学ぶときに、まずは教習所のコース内で練習するのと同じです。外国語学習の理想のパートナーは異国人のボーイフレンド・ガールフレンドなんてよく言いますが、要するに安心できる環境が必要なのです。「恥かいたらどうしよう?」「失敗したらどうしよう?」と緊張を覚えるような環境は、初心者にとって、あまり優れた学習環境とは言えません。

2)同じ要素を用いて学習する

最初のうちは、題材を決めて会話練習をします。例えば、自己紹介や日常のルーチンなどといった簡単な内容からスタートです。これならば使う単語や文型もかなり限定されますから、ごく初歩的な文法や単語を知っていれば、なんとか会話を交わすことが可能です。

また、内容が限定されているため、発音やイントネーションといった部分にまで気を配ることができます。また、多少知らない単語や文型が出てきても、内容を容易に類推することができます。

またこの「容易に類推できる」という部分が重要です。僕らは母国語の単語の大半を類推する中で覚えていったのです。人間の脳は柔軟にできていますから、例え知らないことでも、何度も触れているうちに正しく類推することができるようになります。そして、こうして焼き付いた文型や単語は、何も考えなくても即座に引き出せるようになります。

またリスニングの学習に使うものなども、自分にレベル感があったものを十分にやりこんでから、少しずつレベルアップしていきましょう。特に集中しなくても聞き取れるようになったら、レベルアップの時期です。

リーディングなども同じことです。簡単ものから始めて、不安感なく読めるようになったら、徐々にレベルアップを図ります。

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3)たくさん触れる

ほとんどの英語学習者は、英語に触れている時間が圧倒的に足りません。私はもう英語を困らないレベルで使えるようになって30年ほど経ちますが、今でも1日2時間くらいはPodcastを聴いていますし、読むものも7割くらいは英語です。ネイティブの子供だと、例え5歳児だとしても、1日8時間x365日x5年としても、14,600時間触れている計算です。なお、僕自身の実感だと、初歩的な会話にそこそこスムーズに営めるようになるのに必要なインプットがおよそ1000時間です。瞬発力のある会話力を目指すのなら、2000時間程度のインプットは目指してください。

4)長時間の反復を行う

僕は初心者には簡単な例文を100ほどを暗記してしまうことを勧めています。僕が勧めている教材は子供向けに作られたものですが、日本語→英語のペアになっておらず、絵と英文のペアになっているため、最初から日本語を省いて取り組むことができます。

またこの際に大事なのか、瞬時に言えるようになるまで繰り返すことです。大抵の人は教材を見ると「こんなのもう知ってるよ」と考えてそこで止めてしまうのですが、「知っている」ということと、それが「意識しなくてもスムーズに出てくる」というのはまったく別のことです。


簡単なお決まりのフレーズさえ自動化できていないまま難しいことをやったところで、スムーズに話せるようにはなりません。なぜなら、それではまるで九九を暗記しないまま因数分解や微分積分にチャレンジするようなものだからです。

まず簡単なことが自動化できてしまうと、余った脳の力を使って、自分にとって難しい部分に残った脳の力を使うことができるのです。ですので、まずは簡単なことを反復し、ごく簡単な会話ならばある程度自動的に話せるところにまで落とし込んでいきます。

RPGゲームの複雑な技のコンボなども、何度もくり返しているうちに指がタイミングや動作を覚えていきます。そして、最初はとてつもなく難しいと思ったことも、半分寝ぼけながらでもできるようになるものです。こうしたことは全て一緒です。

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5)フィードバックをすぐに得る

言語学習に絶対に欠かせないのは、フィードバックをすぐに得られる仕組みです。オンライン英会話でもなんでもいいので、実際に会話をする機会を設けましょう。

なお、フィードバックを受ける際には、素直な態度で臨みましょう。講師だって人間ですから、面倒臭い客には本当のことを言いません。発音が悲惨でも、文章がぶっ壊れてても、とりあえず ”Good Job!” と褒めてやり過ごしていきます。しかし、これでは自分のためになりません。まっすぐな気持ちで臨み、本当のことを伝えて欲しいことを伝え、フィードバックを素直に受け入れるようにしましょう。

また、ライティングをする場合にも、必ず添削してもらいましょう。すぐさまフィードバックを得ることで、どんどん修正をかけられるからです。要はテニスや自転車乗りを覚えるのと大差ありません。

6)自然に学習する

最も自然な言語学習方法は「モノマネ」です。子供はみんな母国語をこうして覚えていきます。映画やドラマで聞いたセリフを使ってみましょう。何かで読んだ文体を真似て書いてみましょう。そしたらまたすぐに修正をしてもらうのです。

なぜことさら外国語学習に限って特別なメソッドがあると考える人が多いのか、僕には謎です。文法学習をすることも単語の暗記をするのもいいですが、とにかくすぐにドンドン使わないと、「瞬時に応答できる」というレベルには到底たどり着きません。

システム1で反応できるようになるのがゴールなのです。人様に文法を説明できる必要さえありません。お箸を使ったり自転車に乗るように英語を操るのが、僕らのゴールなのです。

注意点

最初はシステム2で意識的にやっていることでも、根気よくくり返して練習することで、反射的な対応が可能なシステム1(無意識)で処理できるようになります。システム1による対応というのは、要するに無意識化、習慣化なのです。

逆に言うと、誤ったくせがシステム化されるとおいそれと変更できません。頭の中で日本語に変換する作業を反復していると、それが無意識層に定着し、今度はその悪い癖が抜けなくなります。

ですから、何をシステム1に落とし込むかは、吟味する必要があります。悪い発音と日本語変換癖がつくと、本当に取るのに苦労します。ですから、この2つの癖は最初からつけないのが無難です。

Brightureでできること

以上、英語がスムーズに話せるようになる方法を、二重システム理論に基づいて解説しました。フィリピン留学は、語学学習に最適の環境を提供してくれます。なぜなら、強制的に何百時間も英語に浸りきるからです。Brightureに留学してくるみなさまの平均学習時間が1日10時間に及びますから、3ヶ月滞在すれば1000時間程度の時間を注ぎ込むことができます。実際に、超初心者が3ヶ月間留学し、そこそこのスピードで会話が営めるようになってしまいます。皆さんも是非Brightureで学習してみませんか?

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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。