【英文法解説】現在完了形は「今と繋がりがある過去」を表します

さていよいよ現在完了を解説します。現在完了の難しさ、それは、そもそも現在完了という考え方が、日本語に存在しないことです。そのため現在完了を習っても、一体どんなときに使うのかピンときません。日本語では過去形だけで事足りているのに、なぜ英語ではこんなわけの分からない文型が必要なんだろう? 大体ここで止まってしまいます。僕自身もまさしくそのパターンでした。

現在完了と過去形はいったいなにがどう違うのか釈然としない……そんな人は多いでしょう。「現在完了とは、継続・経験・完了・結果を言い表す」などと習いますが、そのどれもが他の文型で言えるような気がするので、ますますチンプンカンプンです。今日はこの現在完了形をどう理解すればいいのか、他の文型とは何が違うのか、そしてどのような場合に使われるのか考えてみましょう。

「現在完了形」は過去の言い表す文型です

まず、過去形と現在完了形の違いを考えてみましょう。実は現在完了形はその名に反して、「過去の出来事」を話すための文型なのです。おそらくこれが、現在完了形をわかりにくくしている最大の原因です。ではなんで現在完了形なんて文型が必要なんでしょうか?

過去形と現在完了形のもっとも大きな違い、それは「『今』との繫がり」があるかないかです。前々回で「過去形はスナップショットだ」と説明しましたが、過去形が表すニュアンスは、「今」との繫がりを感じさせない、まさしく「完結してしまった過去」の話なのです。イメージとしては、どこかにしまってしまった別れてしまった彼氏や彼女とのスナップショットようなものです。

過去形

現在完了形

同様に過去進行形もやっぱり「完結した過去」の話です。前回説明した通り、過去進行形というのは過去の撮影した録画のようなものです。過去形よりも動的に表現することができますが、すでに終わった過去のイベントであることには変わりがありません。

それに対して現在完了形は、過去のある時点に起きた、「今に影響や関連のある出来事」を言い表すのに使います。逆に言えば、「今への関連や影響を感じさせたいかどうか」が、完了形を使うか否かの分岐点とも言えるでしょう。

ではこのことを踏まえた上で、より詳しく解説していきましょう。

なぜ「経験」は現在完了形で言い表すのか?

例えば「僕はハワイに行ったことがる」と言い表すのに、なぜ、“I went to Hawaii.” とか “I was in Hawaii.” ではいけないのでしょうか? ハワイに行ったのはもうすでに「終わった出来事」なわけだし、例えば “I was in Hawaii for a week. “ とかだって充分言いたいことは伝わるはずです。そして、それはまったくその通りです。

でも、それでもやっぱり、“I have been to Hawaii.” と “I went to Hawaii.“ には、ハッキリとした違いがあります。その一番大きな違いとは、「今」への繋がりの有無です。この違い、行ったことがる、という経験ではなく「行ったことがない」という経験にして考えてみると、とても分かりやすいので、まずこの「未体験という経験」からお話しましょう。

やったことないこと

例えば、「ハワイに行ったことがない」というのも、ある種の体験です。つまり、“I have never been to Hawaii. ”は、「行ったことがない」という状態が、今の今までずっと続いてきたのだと考えてください。でも“I did not go to Hawaii.” (ハワイに行かなかった)では、まるで意味が違います。もういくつか例を見てみましょう。

I have never driven a car.
車を運転したことがない

I did not drive a car.
車を運転しなかった。

He has never eaten Tofu.
彼は豆腐を食べたことがない。

He did not eat Tofu.
彼は豆腐を食べなかった。

Have you ever met him?
彼に会ったことある?

Did you meet him?
彼に会った?

過去形というのは、「過去のある時点である出来事が起きた」ということしか言えないのです。そしてその出来事は、今に繫がりを持ちえません。今回たまたま都合が悪くてフランスに行かなかったのか、それとも、一度も行ったことがないのか。飛行機に乗らなかったのか、あるいは乗ったことがないのか。彼にたまたま先週会わなかったのか、それとも一度も会ったことがないのか? そういうことを言い分けるには、過去形の他に、現在完了形が必要なのです。

それでは体験したことは?

さて次は「体験したこと」に話を戻しましょう。もしも同僚が、「先週見かけなかったけど、どこに行ってたの?」なんて聞いてきたら、” I was in Hawaii for the whole week.” なんて過去形で答えたりします。でも、同じ同僚がもし、 “I am off to Hawaii this weekend!” なんて言ったら、“Oh, I have been to Hawaii before. Which island are you visiting? ”なんていうふうに「ハワイに行った」という自分の過去の体験が、今の会話へ生き生きと繋がって行くのです。仮にここで過去形で答えても、文法的に間違っているわけではありません。でも、そうした今への繫がり感がうまく表現されないのです。

また、完了形と過去形の大きな違いとして、完了形では特定の日時を言い表さない、という原則があります。これは日本語で考えても当たり前の話ですよね。例えば経験を語る場合「1999年の3月に、ニューヨークに住んだことがある」なんていいません。経験を言い表すなら特定の日時ではなく、むしろ期間や回数を用いて表現します。「3年間ニューヨークに住んだ。」「フランスに5回行ったことがある」なんて具合です。英語もまったく同じです。過去形と比較しつつ、いくつか例文を見てみましょう。

I have been to Hawaii 3 times.
ハワイに3回行ったことがある

I went to Hawaii last week.
先週ハワイに行った。

I have seen this movie when I was in college.
この映画を大学生の時に観たことがある

I saw this movie last Friday.
先週の金曜日にこの映画を見た。

John has visited Kyoto at least 10 times.
ジョンは少なくとも10回は京都に行ったことがある。

John visited Kyoto in the summer of 2015.
ジョンは2015年の夏に、京都を訪れた。

「過去形の時は日時を使い、完了形のときに期間や回数」そんなふうに習いますよね。でも、そんなふうに暗記するのはヤメておきましょう。肝心なのは、「なぜ完了形のときには期間や回数か?」なのです。それに過去形で期間や回数を使ったって別に問題ありません。こうやってルールの暗記で頭を縛るのが、上達を妨げます。

やり遂げたこと(完了したこと)

それでは次に、「やり遂げたこと」を考えてみましょう。いわゆる「完了」を表すパターンです。これもまた、過去形で言ったって同じなのに……と、ピンとこないパターンのひとつです。例えば「宿題をやった」という例で考えてみましょう。

テレビを見たり、ゲームをしたりしている子供に「あんた宿題はやったの?」と聞くお母さん。万国共通のシーンではないでしょうか? こんなとき “Have you done your homework?”と聞くのと、 “Did you do your homework?” とでは、どんな違いがあるんでしょうか?

“Have you done your homework?” には、「テレビゲームをやってるってことは、、宿題は当然やってあるんだろうね?」といった感じの、テレビを見ている「今」に繋がる響きがあるんです。子供のほうも宿題がやってあれば “I’ve done my homework.” とドヤ顔で言ってテレビやゲームを続行できるわけです。

あるいは部下に報告書を書いたかどうか尋ねる場合なども、過去形ではなく完了形で “Have you written your report yet?” となどと尋ねるものです。これもまたキーワードは「今への繫がり」です。期日までにレポートを出すことは当然のこととして期待されているとか、提出を受けて次の作業が進められるといった具合に、レポートが「今」に繋がります。さらにいくつか例文を見てみましょう。

The building construction has finally ended. 建物の建設はようやく終わった(そして静けさが戻ったとか、景色が変わった、などといった「今」と繋がる)。

The US has withdrawn its troops from Iraq, in keeping with Barack Obama’s presidential campaign promise.
アメリカ合衆国は、オバマ大統領の大統領選挙の時の公約通り、イラクから軍隊を撤収した(その結果、アメリカ兵が危険に晒されることはなくなった、あるいはオバマの公約が守られた「今」と繋がる)。

Apple has released security updates for Mac OS X to address multiple vulnerabilities.
アップルは脆弱性を修正するMac OS X向けのセキュリティ・アップデートをリリースした(だから、現在のMacOS Xは脆弱性が減少した)。

Jason Mraz has released his third album this summer. ジェイソン・モラズは、3枚目のアルバムをリリースした(だから今買えるよ!)。

完了されなかったこと

完了形はまた、こちらの願いに反して完了されなかったことにもよく使われます。「あの子いったいいつになったら宿題やるんだろうねえ?」ってな場合ですね。いくつか例文を見てみましょう。

Tom has not finished his homework yet.
トムはまだ宿題を終えていない。

Tom has not started his homework yet.
トムはまた宿題を始めていない。

Asako has not mastered English.
麻子はまだ英語をマスターしていない。

Bill has still not arrived.
ビルはまだ到着していない。

The rain hasn’t stopped.
雨は止んでいない。

it has not rained in California since last December.
カリフォルニアでは、去年の12月から雨が降っていない。

Japan has not learned the lessons of its lost decade.
日本は失われた10年から何も学んでいない。

まとめ

現在完了形はもう少し説明を続ける予定ですが、まずは今回の分を一度まとめてみましょう。

– 現在完了も過去形も「過去の出来事」を言い表す。

– 過去形や過去進行形は、過去に完結した出来事を表現する。

– 現在完了は「今に影響や関連のある過去の出来事」を言い表す。

-「 経験」とは「今に関連のある過去」だから、完了形を用いて言い表される(”I have studies English.”など)。

– 経験していないことも、また「今に関連のある過去」である(“I have never driven a car in my life.”など)。

– “I have done my homework.”という言葉の裏には、「だから好きなことしてていいでしょ?」というメッセージが込められる。

– 「達成できなかったこと」もまた、完了形で表現される。日本は「失われた10年」から何も学んでいない。など(Japan has not learned the lessons of its lost decade. )。

なお、現在完了の解説については続編がありますので、こちらも合わせて是非ご一読ください。

【英文法解説】現在完了形の継続・経験・完了・結果ってどう言い表すの?

今回は現在完了形の続きです。学校で「現在完了形の継続・経験・完了・結果を表す」と説明され、その辺りから英語がわからなくなってしまった人も多いのではないのでしょうか? この記事では、現在完了形の具体的な使い方を詳しく説明します。

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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。