日本人の英語の発音がネイティブに通じない7つの理由

読者の皆さんの中にも海外旅行や出張などで、発音が通じなくて困った経験がある人、たくさんいるのではないかと思います。コーヒーを頼んだつもりがコーラが運ばれてきたり、work と言ったつもりなのに walk と勘違いされたりなど、ごく簡単なことさえもなかなか通じないものです。

一体どうしてこのようなことが起きるのでしょうか?

原因はいくつもありますが、端的に言えばこの記事で紹介する7つに集約されます。今日はこの「日本人の発音が通じない7つの理由」と、その解決方法についてお話しましょう。

日本語は超省エネ言語

まずなぜ日本人の英語が通じないのかをお話する前に、英語と日本語の根本的な違いを指摘しておきましょう。両言語の際立った特徴がわかると、攻略方法も自ずと見えてくるからです。

英語と日本語のもっとも端的な違い、それはエネルギーの消費量です。英語はガンガン息を使って抑揚をつけ、音声の高低も1オクターブくらい変化する、いわばエネルギー浪費型の言語です。一方日本語は、日本語は息をあまり使いませんし、大きな抑揚もつけません。また声の上げ下げの幅も大きくありません。一言で言えば、英語というのは燃費の悪いエネルギー消費型の言語であり、日本語というのは超省エネ型の言語なのです。ですから、英語を喋る際には、思い切って大きな声で、大げさに喋るくらいでちょうどいいのです。日本語をしゃべる要領で舌の位置や口の開き方だけを変えても、なかなか英語らしい響きにならないのです。海外在住年数が長い方の喋り方が、なんだか大げさに感じたことがある人も多いと思いますが、それはこう話さないと通じないからなのです。舞台の上で演劇をしているようなつもりで、思い切って大きな声で、大げさな身振り手振りで喋ることを心がけてください。まずこれが、英語を通じさせる第1歩です。

それでは、日本人の英語がなぜ通じないのかその理由を一つずつ解説しましょう。

理由1:声が小さすぎる

まず、日本人はおしなべて声が小さすぎます。私自身、自分が米国企業で働いたときにこれを何度も痛感しました。私自身は10代からアメリカに住んでいたのであまり苦労しませんでしたが、30代で初めて住み始めた会社の同僚や、時折日本から来る出張者は、どの方も発音以前に声が小さくて苦労していました。

逆に、多少発音が悪くても、比較的声の大きく、ゴリゴリと自分を押し出せる人たちはなんとかなるのです。声が小さいと、会議などでもまともに聞いてもらえません。日本やフィリピンなどで語学学校に通うと不思議なくらい通じますが、これは講師たちが日本人の声の小さいのに慣れているからです。あれは現実とはかなり異なりますので、とにかく大きな声で発声するようにしましょう。

ポイントは二つあります。まず一つ目は、腹式呼吸で話すことです。ほとんどの日本人は英語を話すさいに胸式呼吸になってしまっています。呼吸ができるようになると、大声を張り上げなくても、自然とよく通る大きな声が出せるようになります。

二つ目のポイントは、口や喉の中を大きく開き、音声をうまく共鳴させることです。トンネルの中で声を出すと壁に反響して声が響き渡りますが、あれと同じ原理です。オペラ歌手が発声する様子などを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

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理由2:リズムが間違っている

日本語と英語では音節が捉え方がかなり異なっています。これは言語的構造の違いによるものです。日本語は開音節言語といって、「ん」「っ」で終わる場合を除けば、基本的に単語が母音で終わります。対する英語の方は閉音節言語で、子音で終わる単語が大半を占めています。

日本語〜母音で終わる
つくえ(tsu-ku-e)
いす(i-su)

英語〜で終わる
Desk
Chair
Phone (e は発音しないので、子音で終わっている)

つまり、日本語と英語では、何を「ひとかたまりの音」と考えるのかが、そもそも大きく異なるのです。それなのに僕らは英単語をカタカタ英語に置き換えて覚えるため、根本的に間違ったリズムが身についてしまうのです。いくつか例を挙げてみましょう。

マップ 〜2音節
map 〜1音節

ドッグ  〜2音節
dog 〜1音節、1拍

ホットドッグ  〜4音節
hot dog 〜2音節

トンネル 〜4音節
tun-nel 〜2音節

エネルギー 〜4音節
en-er-gy 〜音節

マクドナルド 〜6音節
Mc-Don-ald’s 〜3音節

私自身、McDonald’s(マクドナルド)がまったく通じなかった経験があります。 “tunnel” (トンネル)も通じませんでした。リズム自体が間違っていると、イントネーションなどいくら変えてもまったく通じません。逆にリズムが合っていれば、割と通じることが多いのです。

日本語は「母音」だけ、「子音+母音」、あるいは「ん(n)」をそれぞれ一つの音節と数えてリズムを作りますが、これに対して英語は、「母音」だけ、「子音+母音」、「母音+子音」、「子音+母音+子音」など、さまざまなパターンで音節を捉えるのです。また語尾につく母音 “e” は発音しない、などといったルールもあります。

例えばスタント(離れ業)という言葉は、4音節からなり、4拍子で発音されます。

SU-TA-N-TO 〜(1:子音+母音)+(2:子音+母音)+(3:N)+(4:子音+母音

一方同じ単語を英語で書くと “stunt” ですが、こちらはなんと1音節なのです。

Stunt 〜(子音+子音+母音+子音+子音)

こんなふうに日本語と英語とでは、リズムの付け方がまるっきり異なってしまうのです。そして英語は英語のリズムで発音しないと、やっぱり通じないのです。舌の位置とか音の上げ下げとかまずは置いておいて、まずは大きな声で、正しいリズムで話すことを心がけてみてください。

なお、これを改善する方法は比較的簡単です。不確かな単語は必ずネットで調べてみましょう。Syllable Dictionary (howmanysyllables.com) などのサイトで簡単に調べることができます。ちなみにこのサイトで調べてみると、Mcdonald’s は Mc-Don-ald’sの3音節であることがわかります。そしたら次回からは3拍子でこの単語を発してみましょう。グッと英語らしく聞こえるはずです。

3)母音を正しく発音する

大きい声で、正しいリズムで話しているのにそれでも通じなかったら、次は母音の発音に気をつけてみてください。ここもまた、日本人にとっては超難関です。日本語には母音が「あ・い・う・え・お」の5種類しかありませんが、英語には24種類もの母音があるのです。多くの人が、発音がよくわからない母音を日本語の「あ・い・う・え・お」のいずれかの音に当てはめて発音するか、あるいは舌を丸めて「英語風(?)」に発音していますが、日本語風に話しても、あるいは英語風に話しても、正しい音でなければ通じません。

母音の音を発するポイントはいくつかありますが、大切なのは舌をずっと下の歯の裏か歯茎の裏につけて、不用意にブラブラさせないことです。舌が浮いていると母音とはまったく異なる音になってしまうのです。「舌を浮かせて発する母音」というのは英語に存在しませんので、この点はくれぐれも気をつけてください。もう一つのポイントは、しっかりを口を開いて大げさに発音することです。英語は母音を中心にリズムをつけて話す言語ですし、日本語よりもずっと抑揚が大きい言語です。思い切って母音にアクセントを置いて強く発音すると、ようやく英語らしく聞こえてきます。ブライチャーに来るみなさんも、ここを徹底的に直されます。そして母音が引き立って来ると、俄然英語らしく聞こえるようになります。

関連記事:「英語の独り言」学習について3つの効果を解説します。

4)余計な音を混ぜない

また、必要のない音を混ぜてしまっている人もたくさんいます。まず良くあるのが、カタカナ英語に引きずられて不必要な母音を混ぜるケースです。例えばcatという単語には母音は “a” 1つしかないのに、 cat-to のように不要な “o” を足してしまうのです。John and Bill などと言おうとして、 “John ando〜 Bill” などのように不要な “o” を付けた上に、”o” を長く伸ばしてしまう人さえいます。

また先ほどお話したように、日本語にはない母音を出そうとして、舌を丸めてまったく間違ったRのような音を発する人も非常に多いです。おそらく3人に1人くらいはやっていますし、アメリカに10年以上住んでいる人でもざらにやっています。

余計な母音やRの音を混ぜる癖は、矯正が非常に難しいです。まず第1に、ほとんどの人が自覚していないからです。そして、自覚していない癖は実に直しにくいものです。なかには自分では英語らしい音を発しているつもりの人もいるので、指摘すると気分を害してしまい、素直に矯正に取り組んでもらえないこともあります。

さらに、長年それを正しいと信じて自分で練習を繰り返してしまった人もいます。こういう方は本当に強固に癖がついており、矯正に長い時間がかかります。

もしも自分にこうした癖があるのに気がついたら、きちんとした発音教室に通い、しっかりと矯正してください。自己流で改善するのは非常に難しいです。

関連記事:英語のスピーキング力向上のために必要な英語学習法とは?

5)子音が正しく発音できていない

通じない原因の最後の一つは、子音が正しく発音できていないことです。l、r、th、w、y、v、f、h などが特に難題です。ただ、これらの音よりも上の1)〜4)までの方がよほど重要で、それらができていないと、子音の音が出ていてもとにかく悲しくなるほど通じません。発音矯正というとみんなこの子音の矯正ばかりに目が行きがちですが、それだけで通じる発音は身につきません。ここで紹介した1)〜5)のすべての要素をしっかりと鍛えていきましょう。

なお、この1〜5の中で、この5番目の子音は一番学習しやすいです。発声のメカニズムがわかれば、誰でも必ず発音できます。もちろんそれを定着させるのには時間がかかりまますが、音を発すること自体は決して難しくありません。

6)イントネーションやアクセントが違う

日本語はあまりイントネーションやアクセントをつけずに、比較的「平ら」に話す言語ですが、対する英語はイントネーションやアクセントを非常にハッキリつけて話す言語です。しかし、日本人は基本的に英語らしいアクセントのつけ方を学ばずに来るため、適切なイントネーションやアクセントを用いて話すことができないのです。

ネイティブの幼児が英語を覚えるときも、単語より何より先にまずはイントネーションやアクセントから身につけていきます。そしてやがて、発音が明瞭になっていきます。逆にいうと、イントネーション・アクセントは、そのくらい重要なのです。

これを改善したい方は、映画のセリフなどをイントネーションから何からそっくりに真似して練習してみてください。自分の話しているのを録音し、どのくらい近づいたか何度も確認してみましょう。

7)繋げて話す英語、ぶつ切りの日本語

日本語は基本的にブツ切りで話すのに対し、英語は繋げて話します。ブツ切りでも通じなくはないですが、ロボットが話しているようで不自然です。逆に日本語の方は繋げて話すと理解してもらいずらいのです。

また英語はつなげる際に音が喪失したり、短縮されたりすることがしばしばあります。このためそうした発音に慣れていない人が聞くと、全く理解できなくなってしまうのです。

英語を話す上で音をつなげることは必須ではありませんが、これを理解することで大幅にリスニングが向上します。また、繋げられないよりは、繋げられるに越したことはありません。

なお、これを克服するには3段階のステップが必要です。

1)原理を理解する
2)たくさんのオーディオを視聴して、音の変化になれる
3)自分で模倣して、できるようにする

きちんとした発音を身につけたい方へ

さて、いかがでしたでしょうか? 以上が日本人の発音は通じない理由7つと、その解決方法です。なお、発音を独習することは不可能ではありませんが、非常にハードルが高いのです。また、気がつかないうちに悪い癖がつきやすいのです。

そこでオススメするのが、コーチにつくことです。スポーツの上達も自分だけ練習していると、悪い癖がついてもなかなか気がつきませんが、そんな時に強い味方になってくれるのがコーチの存在です。

実は発音も同じことなのです。僕も初めてプロに発音を矯正してもらったのは、英語を話せるようになって20年も経った頃で、自分ではできていると思い込んでいました。ところが本職にみてもらうことで、具体的にどこがどう間違っていたのか把握できたため、もう40歳を過ぎていましたが大幅に改善しました。

一度悪い癖が染み付いてしまうと、後から矯正するのはとても大変です。ですので、まだ発音を学んでいない人は、強い癖がないうちにプロからのトレーニングを受けることを強くお勧めします。

また、今回私は発音の教本を出版しました。アマゾンでランキングトップ10にも入り、大変話題になっています。今までBrightureでやってきたことを1冊にまとめたものです。今後はこの本を Brightureの正式課題図書にし、レッスンもこの本に沿って行なっていきます。


きちんと正しい発音を学びたい方は、ブライチャーにぜひどうぞ! 丁寧に指導させていただきます。

Brightureの発音のクラス

Brightureには発音に特化したクラスが2種類あります。

Phonics & Pronunciation

このクラスでは発声練習や呼吸法から始めて、日本人の声が小さすぎることや、声があまり響かない問題から解決を図っていきます。また、シラブルの数え方、正しいリズム、日本語にない母音や子音の練習も徹底して繰り返します。また、単語単位ではなく、繋げても正しい発音で話せるよう訓練します。非常に人気のあるクラスです。

授業の詳しい内容はこちらから。

Phonics & Pronunciation

Speech Fluency

こちらのクラスは、より滑らかに話す練習に特化して取り組みます。一つ一つの単語なら正しい音が出せるのに、繋げて話すと途端に崩れてしまう人が多いため、このクラスを作って集中的に訓練するようにしました。こちらも非常に人気のあるクラスです。

授業の詳しい内容はこちらから。

Speech Fluency

こちらは実際の授業風景です。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。