29 9月 英語の発音は、まずは「大きな声」で話すことから!
この記事でわかること
英語を話す上で、声が小さいとどう困るのか、日本人はなぜ声が小さいのか、そしてどうすれば大きなよく通る声が出せるのか、その具体的な練習方法を動画を交えて解説します。
声が小さいと、聞いてもらえない?
日本人が英語を話すときにもっとも大きなハードルとなるのが、僕らの「声の小ささ」です。
駅や喫茶店などで英語で喋っている外国人に遭遇すると「声がでかい!」と感じたことがある人も多いと思いますが、実はあのくらいの声の大きさがネイティブの世界の標準で、日本人はおしなべて声が小さいのです。もちろん国によっても異なりますし個人差も大きいですが、日本人はデフォルトで声が小さいと思っておいてだいたい間違いありません。そして、小さな声で話していると、そもそも聞いてもらえないのです。信じられないかもしれませんが、そもそも声として認識してもらえないくらいで、会議などで喋っていても上から誰かに被せられ、あっという間にかき消されてしまうのです。こうした苦い体験を持つビジネス・パーソンも少なくないのではないでしょうか?
また、英語は日本語よりも抑揚が大きく、音程が平気で1オクターブくらい上下動します。ですから、英語で話すときには思い切って大きな声で、大げさに話すくらいでちょうど良いのです。映画の日本語吹き替え版などを見ていると大げさに喋っているように見えますが、ネイティブは実際にあんな感じで喋っています。例を見てみましょう。
こちら、日本語に吹き替えられたロッキー6の名場面です。
そしてこちらが同じシーンの英語版です。
いかがでしょうか? こうして見てみると吹き替え版が特別大げさというわけでもなく、オリジナルがそもそも日本人基準で考えると大げさなのです。また、ロッキーを演じるシルベスター・スタローンの声は腹から響くような野太い声ですが、こういう太い声で話す人、日本人には滅多にいませんが、ネイティブの男性には少なからずいます。
日本人と欧米人の声の質や大きさは、なぜこれほどまでに違うのでしょうか? それはおそらく、文化的な違いに起因します。日本人は相手に圧迫感を与えないよう、姿勢を前かがみにし、お辞儀をしながら挨拶し、名刺交換をしたりするような文化の中で生まれ育っているのです。
ですから、僕ら日本人が大きな声で話そうと思っても、なかなか声が出ないのです。無意識にブレーキがかかってしまったり、大きな声の出し方がわからなかったり、そもそも自分の声が小さいことに気がついていなかったりします。
一方欧米人はと言えば相手の目をしっかりと見ながらスマイルし、胸を張って握手する文化の中で育ちます。もしも僕が日本人相手にこんな勢いで挨拶したら、200%ドン引きされるでしょう。しかし、英語を話すというのはそういうことなのです。言語の学習というのは、その言語を母国語とする人々の文化や民族的背景も同時に理解していくことなのです。そうしないと、その言語をなかなか上手く使えるようになりません。
ですから、何はともあれまずは大きな声で話せるようにトレーニングしましょう。あまり大した発音でもないのに、堂々と胸を張って大きな声で話すだけ存在感を発揮し、ネイティブスピーカーと互角に渡り合ってしまう日本人も少なからずいます。なにはともあれ、しっかりとよく通る声で話せるようになることが、通じる英語を話せるようになるための第1歩です。
大きな声で話すにはどうしたら良いのか?
では、大きな声で話すにはどうしたらいいのでしょうか?
ポイントは以下の3つです。
- 正しい姿勢
- 腹式呼吸
- 声を響かせる
一つずつ解説しましょう。
1)正しい姿勢
まずもっとも大切なのが、正しい姿勢を保つことです。日本人は猫背の人が多いため、声の原動力である呼気がしっかりと流れません。意識的に胸を張って立つくらいでちょうど良いのです。
良い姿勢がよくわからない、という人は鏡の前に立ってみてください。そして猫背になっていないか、腰が前に突き出していないかなど確認して見ましょう。それが済んだら今度は「気をつけ」の姿勢をして、そこからゆっくりと蹲踞(そんきょ)の姿勢になります。蹲踞の姿勢というのは、お相撲さんが土俵の上でやる「座りポーズ」です。体の軸をしっかりと立て、前かがみにならないように気をつけてください。これを10〜15秒ほどした後、ゆっくりと立ち上がりましょう。これで姿勢がまっすぐに整います。自分で姿勢が悪いな、と感じる人はこれを毎日してみてください。
2)腹式呼吸をする
さて、正しい姿勢ができたら、次はいよいよ腹式呼吸です。呼吸のやり方には二つあります。一つは胸式呼吸で、もう一つが腹式呼吸です。それぞれに向き、不向きがありますが、発声に適しているのは腹式呼吸です。
胸式呼吸は息を吸い込むときに肩を持ち上げることで、胸郭を広げ、肺の容量を上げる方法です。このやり方はスポーツなどをやっている最中にハーハーとたくさん息を吸うにはいいのですが、肩や首に余計な力が入りやすく、話すのには向いていません。
一方腹式呼吸はお腹を出したり引っ込めたりすることで横隔膜を上げ下げし、呼吸をする方法です。こちらのやり方は肩や首に余計な力が入らないため、首や喉をリラックスしやすいのです。またコントロールしながらゆっくりと息を吐き出しやすいのも腹式呼吸です。声優や歌手などが腹式呼吸のトレーニングをするのも、この呼吸法が声を出すのに適しているからです。
腹式呼吸をする際には、ゆっくりと鼻から息を吸い、お腹を膨らましていきます。お腹が出るに従い横隔膜が下がって肺の中に空気が入ってきます。この際腰に手を当てておくと、お腹が膨らんでくるのが感じられます。お腹が大きく膨らんだら、今度はお腹を凹ませながら、ゆっくりと長く時間をかけて息を口から吐き出しましょう。
感覚がつかめてきたら、次は実際に声を出して練習してみます。
練習1
息を吐きながら「あー」と声を出します。できる範囲で長く出してみてください。きちんとお腹で息をコントロールできていると、10くらいは続きます。
練習2
仰向けに寝るか、立って行います。
歯を合わせ、唇を開けて、歯の間から「スッスッスッスッ」と細かく強く吸って吐いて息を送り出します。1度に50回は続けてください。お腹をポンプのように使って、力強く息を出すのがポイントです。
3)声を響かせる
正しい姿勢でリラックスし、力強く息を送り出せるようになったら、最後のポイントは声を響かせることです。実は僕らの体内には音声を響かせ、増幅させる働きをする「共鳴腔」と呼ばれる空間が喉、口内、そして鼻の3カ所にあります。これらの空間は、ギターのボディ内の空洞と同じ役割を果たしています。ギターの穴を塞いでしまうと音が響きませんが、もしも体内にこれらの空洞がなかったら、僕らの声が響くことはありません。
僕らは普段しゃべっているときに、これらの空間のどこかに音を共鳴させて音を増幅しています。例えば「あ」の音を発している時には口の中で大きく共鳴させていますし、「い」と言っている時は喉の方で大きく共鳴させています。ハミングで歌っているときには、鼻の奥で共鳴させています。
声がよく通る人とそうでない人とでは、この響かせ方にかなり差があります。時折、よく通る美声の子供がテレビに出たりしますが、肺活量で言えば大人の方があるはずなのに、大人によりもずっとよく通る大きな声が出ます。これは、声を響かせるのがうまいからなのです。声を響かせるのが下手だと、体格がいい大人でもその半分の声も出ません。
それでは、どうすればよく通る声が出せるのでしょうか? そのポイントは、口内を広く使うところにあります。早速練習してみましょう。
まず、あくびをしてみます。すると、軟口蓋が大きく持ち上がり、喉の奥が開くのがわかると思います。軟口蓋というのは、口の上の部分の奥の方にある、あくびをすると上がったり下がったりする部分です。この部分がしっかりと上がっていること、これが第1のポイントです。また母音を発する時には、舌がしっかりと歯の裏に付いていること、これが第2のポイントです。この状態を意識しながら、先ほどのように「あー」と声を出してみましょう。(最初のビデオと同じビデオです)
このときにしっかりと軟口蓋が上がって喉が開いていると、声がうまく響き、よく通る声が出ます。恥ずかしがらずにオペラ歌手にでもなったつもりで発声してみてください。喉の奥の方を開いたり、狭くしたりするだけでも声の響き方が変わるのがわかると思います。「こんな風にするとこんな風に響くんだな」と確認するつもりで軟口蓋を上げ下げしてみたり、口の開き具合を変えてみたりしてください。何度もやっているうちに響かせるポイントがだんだんつかめてくるはずです。また、録音して自分の声を聞いてみると、響きが違うのが確認できると思います。マイクを遠くに置いて、そこに声を遠くに届かせるつもりで練習をしてみてください。
感覚がつかめたら、その響く感じを維持したまま “Hi. How is it doing?” “Where is the nearest McDonald’s?.” などのように、実際に声を出す練習をしてみましょう。
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さて、いががでしたでしょうか?
以上が「大きな声で話す」3つのポイントと、その練習方法です。どんなに声が小さい人でも、練習していけば必ずよく通る声が出せるようになります。最初のうちはピンとこなくても「響かせる」という部分を意識して声を出していくうちに、少しずつ形になっていきますから、スポーツで筋トレなどをするのと同じような感覚で練習してみてください。また、短期間でもいいですから、きちんとした声楽のレッスンを受けてみることもオススメします。
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