ローマ字と英語の違いとは?ローマ字が日本の英語教育をダメにする

ブライチャーの松井博です。今回は、日本の英語教育の中での弊害であるローマ字教育について考えてみたいと思います。

最初に習うアルファベットとは

僕らが人生で最初に習うアルファベット、それはローマ字です。僕は小学校4年生でこのローマ字を習いましたが、今は3年生のようです。そして実はこのローマ字、英語学習において、百害あって一利なしなのです。

ローマ字の弊害はたくさんあるのですが、最大の問題は、母音は:

A = あ
I = い
U = う
E = え
O = お

の5つだけという誤った刷り込みがなされてしまうことです。しかし、英語には母音の音が実は24種類あります。

するとどういうことが起きるのでしょうか?

当たり前のことですが、bag =バッグ、hit = ヒットというような、いわゆるカタカナ英語があっという間に染みついてしまいます。

このため school,type,street,little,rhymeなどといった、スペルは簡単なのにローマ字読みが適応できない単語の発音にことごとくつまずいてしまうのです。

それどころか cake, hike, cube などといった、ごく簡単な単語の発音ですらつまずいてしまう子がたくさん生み出されます。

そして、最初に定着したクセを修正するのは、それがなにであれ膨大な時間を要します。

多くの子供たちがローマ字読みをすっかり定着させてから英語を習い始めるため、なかなかローマ字読みから脱却できず、英語学習の一番スタート地点から苦労します。

スペルを覚えるのにも一苦労しますし、いざ会話にチャレンジしても、なかなか通じないということになってしまうのです。本当は24種類の別々の母音なのに、それをたった5つの日本語の母音に無理やり当てはめて覚えるのですから、当たり前といえば当たり前の話です。

現代の中学1年生の英語テスト

上のような話を日本の友人にしていたところ、「中一の息子の英語の中間テストにローマ字の問題が出ていたよ」と、テストの写メを送ってきてくれました。

ローマ字が日本の英語教育をダメにする。ローマ字と英語の違いとは。中学1年生の英語のテストにローマ字の問題|ブライチャーブログ

僕はこのプリントをみて思わず自分の目を疑いました。

これから英語を初めて習うというときに、なぜ混乱の元となるローマ字を復習させるのでしょうか? 新中学生たちが今後英語学習でつまずくよう、嫌がらせをしているとしか思えません。

この生徒たちは、例えば chair というスペルと、「チェアー」というカタカナ英語にどういう整合性をもたせていくのでしょうか?

なお、この記事を書いてから3年後、今度はこの友人の下の娘さんが中学校に入ったのですが、今回はこんな写メが送られてきました。日本の中学校では2018年になっても、脈々と英語の前にローマ字の刷り込みをしているようです。

まず覚えるべきなのはフォニックス

英語を教えるさいにまず一番最初に教えるべきなのは、ローマ字ではなくてフォニックス(Phonics)です。フォニックスというのは英語のスペル(つづり)と発音の関係を教えるために開発された指導法で、英語圏では幼稚園から小学校1年生にかけて必ず学ぶものです。初見の単語でも正確に発音したり、初めて聞いた単語からスペルを類推できるようにしていきます。このフォニックス、アメリカなどではもう3~40年以上も前から教育に取り入られているにも関わらず、なぜか日本語ではいまでもローマ字からスタートしているのです。

ローマ字は百害あって一利なし

ハッキリ言いましょう。ローマ字を早期に覚えても、英語学習の害になるだけで、いいことなんてひとつもありません。

ローマ字と英語は別物です。そういう区別が中学1年ですぐにつけられる子はいいでしょう。でも同じアルファベットであるが故に、混乱をきたす子もたくさんいるのです。僕もそのうちの1人でした。

えっ、でもコンピュータはローマ字入力だって? ご心配無用です。アメリカで育った私の息子たちはローマ字なんて知りませんでしたが、中学生ごろになったら勝手にローマ字入力を覚えてちゃかちゃか日本語を打つようになりました。アメリカで日本語を習うアメリカ人たちも、ローマ字で日本語を入力しています。フォニックスを先に覚えれば、ローマ字は決して難しくないのです

どうしてもローマ字を教えたいのなら、フォニックス→ローマ字の順序で教えるべきです。

「ローマ字の弊害」を乗り越えるには?

なおこのフォニックス、大人になってから学んでも十分に役に立ちます。私がフォニックスを知ったのは36歳の時で、英語を普通に話せるようになってからすでに20年以上経った後でした。それでも得るものは少なくなかったのです。なおこのフォニックス、独学したい方にはこちらの書籍をオススメします。子供向けの教材ですが、ハッキリ言ってそんじょそこらの大人向けよりもずっとわかりやすくてためになります。子供向けの教材というのは優れたものが多いです。大人にも子供にもオススメします。


またこちらは、僕が執筆した発音の入門書ですが、現在ブライチャーの正式教材として使用しています。この教材も、フォニックスのルールに沿って発音のやり方を解説しています。

Brightureでできること

ブライチャーでは発音に特化したクラスを2つ用意しています。この記事で紹介したフォニックスを学びながら、同時に発音を磨いていくことができます。日本語にない母音や子音、そしてリンキングやリダクションを学んでゆき、ローマ字やカタカナ英語から完全に脱却します。以下、ブライチャーの発音のクラスです。

Phonics & Pronunciation

このクラスでは発声練習や呼吸法から始めて、日本人の声が小さすぎることや、声があまり響かない問題から解決を図っていきます。また、フォニックス、シラブルの数え方、正しいリズム、日本語にない母音や子音の練習を徹底して繰り返します。単語単位ではなく、繋げても正しい発音で話す練習もします。非常に人気のあるクラスです。

授業の詳しい内容はこちらです。

クラス紹介:Phonics & Pronunciation

Speech Fluency

こちらのクラスは、より滑らかに話す練習に特化して取り組みます。一つ一つの単語なら正しい音が出せるのに、繋げて話すと途端に崩れてしまう人が多いため、このクラスを作って集中的に訓練するようにしました。こちらも非常に人気のあるクラスです。

授業の詳しい内容はこちらです。

クラス紹介:Speech Fluency

こちらは実際の授業風景です。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。