【英語勉強法】英文法と英会話を別々に勉強しても、話せるようになりません

「文法をちゃんと勉強しないと、話せるようにならない」

「英会話スクールに通うのは文法を勉強してからにしましょう」

「フィリピン留学の前に、文法を勉強しておきましょう」

こんなアドバイスがネット上に溢れています。これは半分くらいは真実ですが、半分くらい間違っています。文法をしっかり勉強しても、正しい学習法でないと、せっかく学んだことがいつになっても会話に活かせません。

実際のところ、BrightureにはTOEICで900点以上取った人が普通にきています。もちろんみなさん、文法はバッチリです。しかし、いざ会話を始めると三単現を間違えたり、「あ〜う〜」と唸ってばかりで言葉がほとんど出て来なかったりします。

その一方で、TOEICの点数はせいぜい600点ぐらいでも、ゴンゴン言葉が出てくる上に、目立った文法の間違いがない人もいるのです。この差は一体どこからくるのでしょうか?

この記事では、

・なぜシッカリ文法をしたはずなのに話せないのか?
・具体的にどのように勉強すれば、文法学習を普段の会話に生かせるのか?

の2点について解説します。

文法「だけ」を別個に学習しても大きな効果は期待できない

文法を先に勉強する、というのは一見理に叶っているように思えます。ところが現実問題として、大半の日本人がこの方法で学習したはずなのに、話せるようにならないのです。話せないどころか、実は書くことさえできません。文科省が高校3年生対象に実施した英語力診断テストを見ても、「話すこと」と「書くこと」のスコアは絶望的なまでに低いのです。

文法をしっかり勉強することで英語のアウトプットが向上するなら、こうはならないはずですが、現実に起きていることは真逆なのです。文法をあらかじめ勉強するというアプローチは、会話力の向上を目指す上であまり効率の良い方法ではないのです。

文法を先に学習することの問題点

一体なぜこんなことになってしまうのでしょうか?

問題は、「文法学習のための文法学習」になってしまっているところにあります。例えば以下の問題は、実際に市販されている問題集に記載されている例文です。中にはベストセラーから抜粋したものもあります。

1. My hobby is to swim.
2. I dislike to swim.
3. To speak English is difficult.
4. To drink a lot of water is very difficult.
5. His hobby is to take a picture.
6. His dream is to sing a song in Tokyo dome.
7. Our purpose of this research is to understand eating habits.

これらの文章は、文法的に言えば必ずしも間違っているとは言えないですが、「こんな言い方はネイティブは絶対にしない」というものや、意味が通じない文ばかりです。

1.My hobby is to swim swimming.
こんな時は動名詞を使うのが普通です。

2. I dislike don’t like to swim swimming.
Dislike というのは非常に強い単語なので普通使いません。do not like が適切です。また、ここも to+不定詞ではなく、動名詞の方がずっと自然です。

3. To speak Speaking English is difficult.
こんなときにTo 不定詞を使うことはまずありません。動名詞の方がずっと自然です。

4. To drink Drinking a lot of water is very difficult.
これも間違ってはいませんが奇妙な言い方です。動名詞の方がずっと自然です。

5. His hobby is to take a pictures.
原文のままだと、「ランダムに1枚だけ写真を撮るのが好き」というふうに読めます。Pictures を複数形にしないと不自然。

6. His dream is to sing a song in Tokyo dome.
原文のままだと「1曲だけ歌を歌うのが夢」と解釈できます。to sing だけのほうが自然です。

7. Our purpose of this research is to understand our(?) eating habits. 原文のままだと、誰の食習慣を理解したいのかさっぱりわかりません。人間のでしょうか?どこかに住む珍しい動物のでしょうか?「我々人間の」と言いたいのであれば、”our eating habits” とした方が適切です。

日本語には冠詞の概念がありませんから、こうした間違った例文を読んでも、訳してしまうとこうしたおかしさに気付けないのです。また、dislikeは非常に強い表現ということを教えてもらう機会もありません。ですからこのような問題を機械的にたくさんやっても、会話力の向上に結びつくような文法の運用方法は身に付かないのです。

ではどうすればいいのか?

では一体どうすればいいのでしょうか? ポイントは2つあります。

・日本語と英語の違いを明確に知る
・会話に結びつけながら文法を覚える

それぞれ解説しましょう 。

1)日本語と英語の違いを明確に知る

新しい言語をマスターするのに、ある程度母国語に引きずられるのは避けられません。しかし、日本語と英語の違いを明確に把握しないまま漫然と訳して喋っていると、どうしても母国語に引きずられて自然でない表現をしてしまうのです。

例えば「こんにちは」は通常、 hi, Hello などのように訳されますが、「こんにちは」と “hi/hello” では使われ方がかなり異なります。「こんにちは」は昼間しか使わない表現ですが、hi/hellow は朝から晩から夜中までいつでも使える表現です。

こうした用法の違いは至るところにあります。例えば「電話番号を教えてくれませんか?」を直訳すると “Can you teach me your phone number?” ですが、この言いかたはまったく自然ではありません。”Can you give me your phone number?” と言うのが一般的なのです。

つまり、give と言う単語には日本語の「教える」のような意味合いが含まれているわけです。 しかし「Give」=「与える」のように暗記してしまうと、ナチュラルな表現が身につくことはありません。

ですから、英単語を漫然と日本語の単語と結びつけて暗記しても、決して自然に話せるようにならないのです。一般的にいって簡単な単語ほど1対1の翻訳が成り立ちませんから、英単語とその日本語訳の守備範囲の違いを明確に理解することが大切です。

解決方法は3つあります。一つはそもそもネイティブが書いた文法書を使って学習するというものです。「Grammar in Use 」などがよく知られていますが、私もオススメします。少なくともおかしな例文が出てくることはありません。また、マーク・ピーターセン氏の著作も秀逸です。こちらは初心者向けではありませんが、こうした言語の感覚の差異を見事に解説してくれます。Brightureでも推奨しています。

Grammar in Use


表現のための実践ロイヤル英文法

もう一つは、こうした日本語と英語の違いにフォーカスした参考書を使うことです。こちらはコーネル大学で教鞭をとっていた米原幸大氏の著書です。

完全マスターナチュラル英会話教本


完全マスター英文法

もう一つの方法は、ネイティブの幼児向け絵本などからスタートして、ナチュラルな言い回しや構文に慣れ親しんで行く方法です。Brightureでは初心者向けの課題図書として絵本を用意していますが、最初からナチュラルな文型だけに触れることで、3ヶ月程度でかなり滑らかに話せるようになります。不自然な言い回しに触れ続ける害は考えてるよりもずっと大きいので、これらを排除することを強くオススメします。

関連記事:多読に適した英語の本の選び方

2)会話に結びつけながら文法を覚える

次に大切なポイントは、実際の会話に結びつけながら文法を覚えて行くことです。上で紹介した書籍などを参考に、不自然な表現のある文法書は問題集を排除してください。不自然な表現を混ぜながら勉強すると、いったい何が自然な表現なのか、区別がつかなくなるからです。

また、覚えた文法を実際にすぐに使うのも非常に重要です。例えば日常の習慣などを説明するのは現在形を使うのが一般的ですから、まずは自己紹介や日常の習慣を説明するなどして、現在形に使い慣れます。三単現に慣れたかったら、自分の親の紹介をするなどして、三単現に慣れていけばいいわけです。

過去形や仮定法過去などを覚えたいのなら、テーマを過去の失敗談などに絞って話してもいいでしょう。こうしてテーマを絞ることで、その時々の会話練習に必要な文型や時制などを限定することが可能になります。

こうしたアプローチをとれば実際には使わない表現を暗記することもありませんし、比較的短期間で会話の中で正しい文法を使えるようになっていきます。スカイプ英会話などを利用する場合には、不自然な表現を指摘してもらうようにしましょう。

同じ理屈で発音も覚えられる

また、同じ理屈で発音も身に付けることも可能です。ここでも大切なのは、まず日本語の英語の発音の違いを明確に知ることです。英語は日本語の倍近く音素(音の最小単位)がありますから、日本語に存在しない音がどれなのか、そしてそれらをどうやって発するのかを正確に把握する必要があります。この辺りは市販の参考書でもかなり参考になります。

そしてその上で、実際に会話で使う言い回しに発音を乗せて練習していきましょう。特定の語句だけ取り出して練習しても、会話の中で滑らかに伝えるようにはなりません。ごく初期の頃から、滑らかに繋げて話す練習をするのが肝心なのです。こうしたステップを踏んでいけば、必ず滑らかに話せるようになります。

また、変な癖がつくと後から取り除くのは本当に大変ですから、初期のうちからお金を使って発音のレッスンを受けましょう。多少お金がかかっても、すぐに元が取れますし、変な自己流の発音を身につけてから悪い癖を取るよりも。ずっと楽ですし安くつきます。

Brightureでの取り組み

Brightureでは「より滑らかに、正確に話せるようになる」ことを目指してカリキュラムを設計しています。例えば Group Listening and Speakingという授業では、特定の構文や文法を使わないとうまく話せないテーマを設定してディスカッションを繰り返すことで、知らず知らずのうちにそれぞれの構文を正しく使い、無意識にうちに正しい文法を用いて話せるようになるよう、設計してあります。

また発音のクラスも同様で、個々の単語を発することだけで満足せず、上手に繋げて滑らかに話せるようになることを目指し、入学最初の日から文章単位での発話練習をふんだんに取り入れています。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。