英語が短期間で上達する人に共通する5つのこと

フィリピンのセブ島にブライチャーを設立してから、すでに500人以上ものの卒業生が巣立ってゆきました。1〜2週間といった短期留学の人から、数ヶ月、あるいは半年といった長期にわたって滞在する方もいます。どの方もおおよそ滞在期間に比例した伸び方をしますが、時折、短期間で驚くほど英語が上達する人がいます。一体こういった人には何が共通しているのでしょうか?

まず、前提条件として伸びる人ほどよく勉強します。単純に言い切ってしまえば、上達の幅は勉強に費やした時間に比例します。必死になってやりこまない人は、同じ期間いてもやっぱり上達の幅が小さいのです。しかし、わざわざブライチャーを選んでくる方はそもそもやる気満々で来ていますから、一部の例外を除けばダラダラとしている人はほどんどいません。

それでもやっぱり、少なからぬ個人差があります。上達が早い人の秘密はなんなのでしょうか? 毎日の大量の読書でしょうか? それとも単語本を何周も回すことでしょうか? あるいは入念な文法学習でしょうか? 確かにどれも大事ですが、それらはいずれも、短期間に英語を上達させる上で、絶対的な条件ではありません。文法を学習しなくても短期間で驚くほど話せるようになる人はいくらでもいますし、単語本を回さなくても読書で補ってしまう人もいます。なかには洋楽を耳コピーして割と短期間で話せるようになってしまう人さえいるのです。

では一体、何が上達のスピードを分けるのでしょうか? ポイントを5つあげてみましょう。

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1.現状の実力を把握している

上達が早い人に共通している第1のポイントは、自分の現状の実力を正確に把握していることです。これは、多くの人が思いの外できていません。例えば、「私、読み書きはできるんですけど、会話が苦手で……」などという方で、読み書きが実際によくできる人にほとんどお会いしたことがありません。また「日常会話はできるんですけど、難しい会話になると途端……」などと言う人は、現実には日常会話もほとんどオボつかないのが現実です。彼らも自分なりに勉強をしてはみるものの、不足している部分を補えていないため、なかなか成果が上がらないのです。

逆に、「辞書を引き引き30分くらいかければ、ニュース記事1本が7割くらい理解できます」「TED talk は字幕なしだと半分くらいしかわかりません。字幕ありなら8割くらいです」「挨拶や道を聞くくらいなら丸暗記した文章で乗り切れますが、質問されると途端に言葉に詰まってしまいます」などと自分の現時点での実力を正確に把握している人は、勉強するポイントが絞りやすいため、上達が早いです。

なお、自分の現時点での実力がどの程度なのかわからない人は、TOEICや英検、IELTSなどといった試験を受けてみることをオススメします。TOEIC が500点取れない人は、中学英語でわからないところがある場合が多いので、中学英語の復習から始めてみてください。

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2.語学学習のゴールが明確

上達が早い人に共通しているもう一つの点は、ゴールが明確なことです。アメリカでの大学への進学が決まっている、年内に海外就職を果たしたい! などのように明確なゴールがある人は、圧倒的に上達が早いです。また、そういう人は伸ばしたいポイントも非常に明確にわかっています。例えばブライチャーの卒業生でシンガポールでジャーナリストになった女性がいますが、彼女はリーディングとライティングを徹底的に強化したいという明確なゴールを持っていました。MBA取得にアメリカの院に進んだ方は、ディベートなどでネイティブスピーカー引けを取らないよう、会話にゴリゴリ入れるようになることをゴールにしていました。このようにゴールが明確な人は、努力のポイントもまた明確にしやすいため、目に見えて上達して行きます。

一方、なかなか上達しない人はどうもゴールが明確に絞れていませんし、ゴールへの距離感もあまりわかっていません。漫然と問題集や単語本を何周も回し、何度もTOEICを受けている人がいますが、TOEICの点数アップが目的ならともかく、最終ゴールが会話上達ならば、あまり効率のいい勉強方法とは言えません。そのため、TOEICは900点なのにちっとも喋れない、というような寂しい結果になってしまうのです。

また「ペラペラになりたい」というゴールもよく耳にしますが、ペラペラの定義が本人の中にもないため、これもゴールとしてうまく機能しないのです。「映画を字幕なしで見たい」というゴールは非常によく耳にしますが、実はこれ、アメリカに10年住んでもなかなかできないほど難易度が高いのです。TOEIC満点を取る方がよほど簡単なのですが、本人はそれを全く自覚していません。自分のゴールが果たして現実的なのか、それとも単なる白昼夢なのか、そこまでの距離はどのくらいなのか、自分よりも英語が上手い人に率直な意見を求めてみましょう。

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3.期間が決まっている

また、上達が早い人は、ゴールだけでなく期間も決めて勉強に取り組んでいます。私自身もろくに喋れないところから1年半程度でアメリカの大学に進学を果たすレベルにまで実力を上げましたが、今考えてみると「1年半」と明確に期間を決めておいたのが良かったように思います。 なお、あまり長期的すぎるゴールだとどうしても途中で飽きてダレてしまいますから、長くても1〜2年程度のゴールの設定をした方が、より達成しやすくなります。なお「3ヶ月でペラペラになれる」というキャッチフレーズをよく耳にしますが、まったくもって不可能です。こういうインチキ商法にはくれぐれも騙されないようにしましょう。もしもそんな方法があるならば、今頃日本に英語が喋れない人など存在しません。

4.段階的なゴールが設定されている

上達が早い人にもう一つ共通しているところ、それは、長期的なゴールとは別に、短期的なゴールが定まっていることです。例えば、最終ゴールが1年後に海外の学会で英語でプレゼンテーションすることだとしたら、最初の半年で専門分野の書籍を読めるようにし、次の半年でその分野について、伝えたいことを滞りなく書いたり説明できるようになる、などというゴールを立てても良いでしょう。

ブライチャーに短期留学する人も「とにかく留学中は発音をしっかり向上させる!」などのように短期的な目的がはっきりしている人の方が、ガッツリと成果を上げやすいです。ブライチャーに限らず、フィリピンなどに短期留学する場合には、長期的な英語学習のゴールとは別に「留学期間で何を達成したいのか?」という短期的なゴールを、なるべく明確に考えておくことを強くお勧めします。


5.上級者のアドバイスを素直に聞く

最後にもう一つ共通項をあげるとしたら、伸びる人ほど素直です。発音の間違っている部分を指摘しても自分の間違いを素直に認められない人、あるいは勉強法をアドバイスしても自分のやり方に固執し続ける人などは、やっぱりどうしても伸びません。英語ではなく他のスポーツなどに置き換えて見れば自明だと思うのですが、自分よりはるかに上級者の人にアドバイスを受けても意固地になって独自の練習方法に固執している人が、果たして短期間で上達するでしょうか? 世の中には耳障りのいいインチキ情報が溢れていますが、都合の良い情報に騙されないよう、くれぐれも注意してください。

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なお、ここで気をつけなければならない落とし穴がもう一つあります。
これは英語に限りませんが、上級者ぶって先輩風を吹かしている人のアドバイスは適当に聞き流しておきましょう。中途半場な実力の人に限って、自分より下の人を捕まえて教えたがります。しかし、教える側の実力がそもそも中途半端なので、アドバイスが極めて不適切だったり、上達の妨げになることさえあります。本当にやりこんだ人というのは、「僕はこのようにやってみたら割と効果があったように感じたけど、もっと効果的な勉強方法があるかもしれない」と、実に謙虚なものです。テニスでも水泳でもゴルフでも「教え魔」っていますが、こういう方とは距離をとった方が無難です。



さて、いかがでしょうか?

以上が英語を短期間で習得する人に共通している5つのポイントです。なおこの5つ、別に語学に限りません。どんなスポーツにも勉学にも当てはまります。プログラミングを覚えたい。スポーツで強くなりたい。そんな方も、ぜひこの5つのポイントを参考にしてください。英語を上達させるための有益なリソースは世の中にたくさんありますから、ぜひ有効活用してください。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。