日本とはまったく違う!アメリカの小学校の英語勉強方法

今回はアメリカの小学校で、小学生の子供たちがどうやって英語を学んでいくのか?についてお話ししたいと思います。

日本の英語教育とはすべてがまるで異なっていた

僕が家族でアメリカに移住して、子供たちが現地の小学校に通い始めた頃。僕はてっきり“ My name is Hiroshi” なんて感じで、自己紹介から教わってくるに違いないと思っていました。ところが実際の教え方は、想像するものとはずいぶん異なっていたのです。

例えば……


例えば、そもそもアルファベットの発音から異なっています。私たちがよく知っているエー、ビー、シーに加えて、「ア、バ、カ、ダ」という聞いたこともないバージョンの発音も習ってきたのです。楽しく覚えられるようにと、歌まで用意されていました。そして子供たちはこれらをすぐに丸暗記して、家で遊んでいる時などにも “aa, aa, apple, ba, ba, ball, ca, ca cat” などと歌っていたのです。

次に驚いたのが、無理のない単語の習得方法と、そこから極めて自然に単語のつなぎかたを覚えてく学習過程です。動詞、冠詞、前置詞などが少しずつ足され、いつのまにか文章の作り方へと進んでいくのです。

実際のレッスン

例えば、at で終わる単語を使った学習です。出てくる単語は、たったこれだけです。

cat, rat, fat, bat, mat, sat

そして次にこれをつなげていきます。教材には太った猫、ネズミ、そしてコウモリの挿絵が描かれています。

fat cat
fat rat
fat bat

そして今度は on と a を足してフレーズに。マットに座った動物が描かれています。

a fat cat on a mat
a rat on a mat
a bat on a mat

今度は off と the が登場。最初は a fat cat と紹介された猫やネズミやコウモリやマットは、2度目の登場から “the fat cat” のように a から the に変わって登場します。そう。話す人と聞く人(あるいは書いた人と読む人)に共通の認識がある単語は、the でリードされる。そんな定冠詞の働きがサラリと紹介されます。

挿絵には、マットから降りた猫やネズミやコウモリの絵。

the fat cat off the mat
the fat rat off the mat
the fat bat off the mat

挿絵とフレーズの組み合わせで、on と off という言葉がすぐに頭に入ってきます。そして冠詞や動詞、そしてピリオドがプラスされ、今度は文章へとなっていきます。冠詞も a と the の両方が登場。ちょっとした物語へとバージョンアップします。

A bat sat on a mat.
A bat and a rat sat on the mat.
A fat cat sat on the mat.
The bat and rat sat on the cat.
The fat cat sat on the mat.

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こんな感じのドリルが何度も何度も繰り返されます。読み物も、読むところより挿絵の方が多いような本ばかりですが、イメージと言葉のリンクの形成が目的のようです。日本における英語教育の根本的な問題点は、多分ここにあります。リンクさせるべきは、英語と音とイメージなのに、和訳ばかりやるうちに、英語と日本語にリンクだけが徹底的に強化されてしまうのです。

別の例を見てみましょう。ここでは真ん中に i が入る単語とスペルを学習です。

A kid and a pig sat in a lid.
The kid and the pig hid in the lid.
The kid and the pig slid in the lid.
The lid slid and slid!
The kid and the pig hit a big hill.

動詞は hid、slid,、hit 、そしてすでに登場した sat だけ。動詞を現在形ではなく過去形から覚えれば、三単現の s を気にせず覚えていけます。実際のところ、少しぐらい三単現を間違えたところで意味は通じるわけで、実に合理的な学習方法です。

つまり、三単現よりもまず発音とスペルを一致させ、文章をつなげられるようにする、というわけです。そして「挿絵を見て作文しよう!」なんていう宿題が山ほど出ます。

やがて……

1ヶ月もする頃、子供たちはもう見たことのない単語でも躊躇なく発音するようになっていました。例えば近所にある Safeway というスーパーの電光掲示がよく切れていて、ある日はその店名が ”saf way” だったり “ safe ay” だったりと、文字がひとつ欠けているのです。すると「サフウェイだって。あっはっは!」とか「今日はセイフ アイだって!」などと言って笑っていました。

「e」で終わる単語、「e」がつかない単語。そんな教材もありました。最後に「e」が付くのと付かないないのとでは、最初の母音の発音が変わってしまうのです。cane(ケイン)が、can (キャン)になってしまう。そんなルールですね。

bine(バイン), bin(ビン)
cape(ケイプ), cap(キャップ)
kite(カイト), kit(キット)
などなど……。

こうして単語、発音、使い方がすぐに入っていきます。こんな教材、「自分が中1のときに欲しかったな〜」と、心から思ったものです。そしてわずか10ヶ月後。2年生たちはクラス全員の前でプレゼンテーションを行っていました。たった10ヶ月前にはアルファベットもわからなかった子たちに、将来の夢についてプレゼンをさせてしまう小学校教育には本当に度肝を抜かれました。

ブライチャーでの初心者向けのカリキュラム

ブライチャーでの初心者向けのカリキュラムは、アメリカの小学校の教材を大幅に取り入れて作られています。音、イメージ、発音を結びつけた単語の暗記。簡単な文章から始めて、簡潔で分かりやすい文章を書けるよう、徐々に訓練していきます。そしてそれと並行して、会話の練習です。こうして、「読む、書く、聴く、話す」を無理なく同時に並行してシッカリと鍛えていきます。

日本語を介さないナチュラルな学習方法、それがブライチャーのカリキュラムです。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。