27 10月 英語で丁寧に断るには? 段階別の「NO」の伝え方と実践フレーズ+例文
先日、40代半ばの会社員女性からこんな質問をいただきました。
家族4人(同学年夫、中2娘、小4息子)で韓国に旅行をしたときの出来事です。
ソウル市内の地下鉄の駅で、30〜40代くらいの欧米系旅行客と思われる男女2人に声をかけられました。 「英語は分かりますか?」と聞かれ、ある程度理解できるので会話を続けたところ、彼らが購入したばかりの大ぶりの餃子を差し出し、「これは何の肉か?」と尋ねられました。
私は「皮に包まれているので分からない」と答えたのですが、「食べて確認してほしい」と勧められました。見知らぬ人から差し出されたものを食べるのは抵抗があったので、「辛い物が苦手なので食べられません」と断りました。すると今度は夫にしつこく勧めてきたのです。
結局、夫が一口食べて「豚肉です」と伝えると、彼らは「私たちは豚肉を食べられないから受け取ってほしい」と言いました。夫は仕方なく箱を受け取りましたが、残りは持ち歩いた後に捨てました。
私は「豚肉を食べられないのに彼らはなぜ餃子を買ったのか」と疑問に思うと同時に、見知らぬ人から差し出された食べ物を口にする姿を子供に見せたくなかったのです。一方で夫は「怪しい人に見えなかったし、困っている観光客を助けるのは当然」と考えていて、意見が分かれました。
結果的に穏便には済みましたが、もっと分かりやすい英語で断れれば、要らないものを食べたり受け取ったりせずに済んだのではないかと悔しく思いました。
質問が長いので、要約しました。
- 見知らぬ欧米人旅行客に「餃子を食べて肉を確認してほしい」と頼まれた。
- 私は断ったが、夫は断りきれず一口食べて返答した。
- 餃子を箱ごと押し付けられ、夫が箱ごと受け取った。その後破棄。
- 夫は「困っている旅行者を助けるのは当然」と考え、私は「見知らぬ人から食べ物を受け取るのは不安」と感じて意見が分かれた。
- もっと上手に断る英語表現を知りたい。
では、いただいた質問に対する雑感を述べたのち、「断る英語表現」を紹介したいと思います。
失礼な欧米人旅行者
まず、この餃子の毒味をお願いしてきた欧米人旅行客ですが、相当失礼な人たちです。
「食べて確認してほしい」というのは、見知らぬ他人にリスクを押し付ける行為です。辛いかもしれない、傷んでいるかもしれない食べ物を「あなたが食べて確かめろ」と言うのは、常識的に考えて筋が通りません。勘繰れば、毒物が混入している可能性もあります。
また質問者さんたちがアジア人旅行者だったから「強引に頼めば引き受けてくれるだろう」と思った可能性も否定できないんですね。このような強引な態度の裏には、無意識の差別や見下しがあったと考えるのが自然だからです。
本来なら自分で食べるか、お店に確認するか、翻訳アプリを使えばよい話です。それを赤の他人に押し付けるのは、非常識と言わざるを得ません。
あいまいな態度で断らない
また、「怪しく見えなかったから大丈夫」「困っている観光客だから助けて当然」という夫の判断は、かなり甘いと思うんですね。
「知らない人から食べ物を受け取らない」。
これは子供にも教えるべき常識です。見た目が怪しいかどうかは関係なく、リスク管理として受け取らないのが正解だからです。Stranger danger(見知らぬ人は危険)」という言葉もあるくらいで、これは世界共通認識です。
また、「怪しく見えなかったから大丈夫」というのも、無防備すぎるように思います。見た目や雰囲気で「怪しい/怪しくない」を判断するのは極めて主観的で、実際のリスクとはほとんど関係ないからです。実際、犯罪やトラブルに巻き込まれるケースでは、むしろ「普通そうに見える人」が加害側であることも多いのが現実です。
日本語に「仏の顔して鬼の心」という諺がありますが、悪人に限ってニコニコしているものです。詐欺師ほど善人に見えたりね。残念ながら、そういうものなのです。これに類する諺は英語にもありますので、きっとどこでもそうなんでしょうね。
- The devil can cite Scripture for his purpose.(悪魔でも聖書を引用する)
- Fair face may hide a foul heart.(美しい顔の裏に醜い心が隠れている)
きちんと断らないと誤解される? 「NO」と伝えないリスクとは
また、断らないことにもいくつか問題があります。
まず、こうしてアジア人を見下してくる人々の言い分を聞き入れていると、「この人たちには押しつけてもいい」というメッセージを相手に与えてしまいます。
僕が懸念するのは、子供達への教育的影響です。「理不尽でも我慢するのが正しい」と学んでしまう危険があるからです。逆に毅然と拒否する姿を見せる方が、世界に通用する態度として理解されやすいですし、教育的意義も高いと思われます。
また、「欧米人の頼みには従うべき」という誤った文化的誤学習を強化してしまうと思うのですね。なので、やはりこのシーンでは、毅然と断るべきだったかと思います。
英語で断る段階別の実践フレーズ+例文集|丁寧な言い回しから強い拒否まで
とはいえ、実際に現場でしつこく迫られると戸惑うものです。そこで「段階的に強度を上げる断り方」を準備しておくと安心です。
Step 1:丁寧な断り方
No, thank you.
「結構です、ありがとうございます。」
→ 一番ソフトな断り方。笑顔で言えば角は立ちません。
Sorry, I can’t.
「ごめんなさい、できません。」
→ 少し理由を含ませた断り方。相手に「事情がある」と伝わります。
Step 2:明確に「NO」を伝える
I said no. Please stop.
「もう断りました。やめてください。」
→ 同じことを繰り返さないでほしいと強調。しつこい相手に効きます。
No, I really mean it.
「嫌です。本当に無理です。」
→ 優しさを残しつつも、これ以上譲歩しない意思を示せます。
Step 3:相手の行動をやんわり指摘しつつ断る方法
That’s rude. Don’t push me.
「それは失礼ですよ。押し付けないでください。」
→ 相手の行動を指摘することで、「これ以上は無礼だ」と線を引くことができます。
Please respect my answer.
「僕の答えを尊重してください。」
→ 知性的で冷静な表現。公共の場で大人っぽく振る舞いたいときに有効です。ただし、相手が知性的でないと通用しないこともあります。
Step 4:強い意志を表す断り方
I said no. Stop bothering me.
「もうノーと言った。これ以上邪魔するな」
→ 断った事実を突きつけ、相手のしつこさを迷惑行為として明示します。
What part of ‘no’ don’t you understand?
「どの『ノー』が理解できないんだ?」
→ 欧米文化圏ではよく使われる皮肉フレーズです。知的に相手を黙らせる効果が強いです。
Step 5:関係を断ち切る最終ラインの伝え方
以下は喧嘩腰なので、できれば使わないで済ませたいフレーズですが、1〜4まで言っても引き下がらない場合には、このくらい言っても良いかと思います。
Why don’t you eat it yourself?
「自分で食べればいいじゃないか。」
→ 相手の要求の理不尽さをストレートに突きます。
Why should I test your food?
「なぜ僕があなたの食べ物を毒味しなきゃいけないわけ?」
→ 「毒見じゃないか」というニュアンスを含ませて場を凍らせます。
Why are you asking me to test your food? Because I am an Asian, huh? Are you fucking racist?
「なんで俺がお前の食べ物の毒味をしなきゃならないんだよ? 俺がアジア人だから? お前、人種差別主義者だろ?」
→ racist(人種差別主義者)は欧米人には極めて強烈に響くワードです。場の空気を一気に変える最終兵器。ただし、ここまで言うと完全にケンカなので、最終兵器というような位置付けが適切かと思われます。アメリカ在住27年の僕ですら、ここまで言ったことはありません。
このうち、Step 1〜4は万人向けに使えるフレーズです。
そして最後の Step 5は、「場を一気に凍らせる」最終兵器的な言い方です。万人にはお勧めしませんが、見下されることに屈するくらいなら、これくらい言ってもいいと僕は思います。
英語で断るときの鉄則まとめ:文化の違いを理解しつつ、自分を守るための表現術
というわけで今回は単なる英語の言い回しの紹介ではなく、理不尽な欧米人にどのように対応するか? という話になりましたが、海外旅行を予定している方、インバウンドのビジネスをなさっている方、留学や駐在の予定がある方の参考になるのではないかと思います。
なお、すべての欧米人が失礼というわけではありません。ほとんどの人は人種差別などしませんし、「アジア人だから」「外国人だから」という理由で嫌な思いをすることもそこまでありません。
ただ、人種差別がなくなることはありませんし、どの国に行っても失礼な人は一定数いますので、毅然とした断り方を身につけておいても損はありません。
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なお、この記事とほぼ同じ内容の Voicy の放送もありますので、そちらも是非どうぞ!
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