英語は「音」の学習から始めよう!

よく、Brighture で発音を習った生徒さんが、「発音が良くなったら、文章を読むのが速くなりました!」って言うんですね。それも一人や二人ではありません。今までに少なくとも100人くらいの方からこのような報告を受けたことがあります。
また、英語の本をスムーズに読めない人に、オーディオブックを聴きながら、それに合わせて本を読むことを勧めることもあります。するとどういうわけか、スムーズに読める人が多いのです。これは一体どういうことなのでしょうか?

言語処理は脳内でどのように行われているのか?

脳卒中で発話能力を失った男性が脳にインプラントを埋め込み、脳内の電気活動を「翻訳」することにより、再び「話せる」ようになった……。一昨年、そんなニュースが世界を駆け巡りました。

脳インプラント装着の男性、コンピューター通じ「話せる」ように 米研究

これを実現した Edward Chang 博士が、先日、とある Podcast に出演していました。そしてこれが、英語学習を進める上でさまざまな示唆に富んだものだったのです。

「雑音」と「言葉」を分けるもの

喫茶店やレストランで流れる音楽や、空調のノイズ、風や自動車の走る音などの環境音は、すべて「音」です。そして僕らが話している「言葉」も、やはり音です。
でも、僕らはどういうわけか言葉だけを、それ以外の音の洪水の中から瞬時に拾い上げ、理解することができるのです。考えてみれば、すごく不思議ですよね。
ただ、これが外国語となると、母国語ほど容易ではありません。特にまだ初心者の頃は、少しでも雑音が混じっていると、相手の言っていることがすぐにわからなくなります。
なぜ僕らは母国語だけを、これほどまで簡単に拾いあげることができるのでしょうか?

音声理解と意味理解

Chang 博士によると、人間の脳内には、音を「話し言葉」として認識する部分と、その意味を理解する部分が別々にあるのだそうです。
そして音声を「話し言葉」として理解する部分には、母音と子音、さらに子音を摩擦音、破裂音、接近音、破擦音などに分けて認識する部分があるのだそうです。こちらは博士の論文にある表ですが、脳の上側頭回(脳の側頭葉にある脳回の1つ)に多数の電極を埋め込み、スピーチを聞いたり、発話してもらったりすることで、脳内には音の種類に応じて反応するニューロンがあることがわかったのです。ご覧の通り、電極 e1 は d,b,g,p,k,t といったいわゆる破裂音に反応し、e2 は ʃ, z, s, f, θ などといった摩擦音に反応していることがわかります。

Phonetic Feature Encoding in Human Superior Temporal Gyrus より

こんなふうに、それぞれの音に反応する部位が発達しているからこそ、僕らは母国語をこれといった努力もせずに雑音の中から拾い上げられるというわけです。

日本語は音素が少ない

ここで問題があります。
それは、日本語には音素が26しかないのに、英語には48もあることです。ですから僕ら日本人の脳内には、これらの22の音に反応する部位がほとんど育っていないのです。R や L はその代表例ですが、それ以外にも多数の音素が抜け落ちています。道理でちょっとでも気を抜くと、英語が聞き取れなくなるはずです。
人間はいわゆる臨界期を過ぎると、多言語の音の判別や発音の習得が極めて困難になっていきますが、しかしこの臨界期があるからこそ、僕らは母語の音をスムーズに聞き取ることができるとも言えるのです。
確かに、何歳になっても新しい音をどんどん吸収できたら、母語が固まるのにすごく時間がかかりそうですよね。
でもこの臨界期が、言語学習を進める上で、大きな障害となって立ちはだかります。この壁を超えて、未知の音を認識できるようになろうというのですから、並大抵ではありません。

発音は習った方がいい

では、一体どうしたらこの壁を越えられるのでしょうか?
僕は英語を話し始めてもう40年ほど経ちますが、英語を覚えたのがすでに臨界期をすぎた16歳の時だったので、最初の頃はやはり非常に苦労しました。1対1の会話はそれでも割と早くに聞き取れるようになりましたが、環境音がうるさいところで複数のネイティブとスムーズに話せるようになるまでには、トータルで10年くらいかかりました。
自分の発音をほぼ聞き返されなくなったのは、アメリカに住んで5年以上経った後でしたし、外国人っぽいアクセントを抜くまでには、そこからさらに5年以上かかりました。2年間ほど、発音のレッスンを受けていたこともあります。
もしも時間を巻き戻して最初からこれをやり直せるとしたら、最初から発音を習うでしょうね。

僕らは「音」を介して理解している

発音からスタートしたい理由はそれだけではありません。今回この Chang 博士の Podcast を聴いて、「やっぱり」と思ったことがあるからです。 それは、僕ら人間は、「音」を介して言語を理解しているという事実です。
例えば僕らは文字を読むときにも、それを一度音声に置き換えて理解していることが、Chang 博士の実験で確認されています。文字を読んでいるときにも、音声を認識する上側頭回が活性化するのだそうです。また、喉に電極をつけて信号を測ると、脳から声帯に信号が送られていることが確認できるそうです。確かに言われてみれば、母国語の時でも、一度音を思い浮かべています。
書くときも同様で、僕らはやはり音を想起しながら書いているそうなのです。つまり、言語のベースは、「音」なのです。
冒頭で紹介した通り、Brighture で発音を学んだ方の中には、発音を矯正したら、読むのが速くなったという人が少なからずいるのですが、その理由が初めて分かった気がしました。
また、オーディオブックを聴きながら英語の本を読むとスムーズに読める理由も、この Chang 博士の Podcast を聴いて、初めてしっくり来ました。

だからこそ、発音から学ぼう!

英語を学ぶことは、英語を英語のまま理解できる回路を、自分の脳内に新たに構築する作業です。そしてそのためには、まずは英語の音を正しく認知したり、自分で発することができるようになる必要があります。これもやはり、脳の訓練です。
だからこそ、英語は発音から学ぶことを、強くお勧めします。そして音に馴染んできたら、並行して単語や文法を覚え、意味理解を司る脳の部位を育てていきます。
発音を学ぶ。フォニックスを学ぶ。基本的なサバイバル英語を覚える。まずはここからスタートし、少しずつ聞き取れることや、言えることを増やしていくイメージです。
そして発音は、習ってしまうのが結局は最短距離です。ですので、ぜひBrighture で発音のレッスンを受けてみてください。
お待ちしています!

Brighture
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