ビジネス英語講座:部下にわかりやすい指示を与えるには?

さて前回2回に分けて、上司に提案をするときはどうアプローチし、具体的にどう言えば良いかを解説しました。

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今回は、部下に指示を出す際のアプローチ方法や言い回しを学んでいきましょう。

重要なことから順番に!

目上の人へのアプローチ方法でも解説しましたが、とかく日本人はすぐに本題に入らず、個人の思いや事情などをグズグズと話しがちです。これは部下に話すときもNGです。これやった時点でドン引きされるか、「うわ〜。また始まった」となってしまいます。少しばかりのスモールトークは必要ですが、グズグズと会社や個人の事情などを語るのは、意思疎通の妨げになっても、いいことは何もありません。

それではまず例文を見てみましょう。

例文

1) Boss: Hi Ken. Can I talk to you for a few minutes in my office?
上司:ちょっと話があるんだけど僕のオフィスに来てもらっていいかな?

Subordinate: Yes.
部下:はい。

2) Boss: How are you?
上司:調子はどう?

Subordinate: I am doing fine. And yourself?
部下:元気にやっています。あなたは?

3),4) Boss: I am doing great. Thank you for asking. So I would like you to start working on developing a new advertising campaign for our repeat customers. As you may know, up until last year, most of our customers were first-time visitors to Japan, but the trend is shifting very quickly and as much as 30% of our customers are visiting Japan for the 2nd or 3rd time now. They don’t want to go to typical touristy spots anymore. These folks are done with the Tokyo Sky tree, Disneyland and Kyoto packages. They want to see and experience something more.
上司:元気にやってるよ。聞いてくれてありがとう。早速なんだけど、リピーターのお客さん向けの広告キャンペーンを考えて欲しいんだ。君も知っている通り、去年まで日本にくる観光客といえば初めての人がほとんどだったんだ。でも今年に入ってからはリピーターの方が急増していて、今では顧客の30%を占めている。彼らはもう、お仕着せの観光客向けのところなんか行きたくないんだ。スカイツリーもディズニーランドも京都ももう一通り見た。彼らはもっと何か違ったことを体験したいと思っている。

Subordinate: I see.
部下:なるほど。

Boss: Maya’s team has been developing new package tours for the last several months. She has conducted a lot of experiments and we feel that we are ready to introduce them to a wider audience.
上司:マヤのチームがここ数ヶ月新しいパッケージツアーの開発に取り組んでる。一通り試してみて、反応も上々なんだ。だから、より多くの人に訴求する時期だと感じている。

Subordinate: I see, and we need an advertising campaign for it.
部下:で、そのための広告キャンペーンが必要なんですね。

5)Boss: That’s correct. Now, I am asking you to do this because I have been really impressed with your creativity. The spring campaign you have spearheaded has been a big success for the company and we feel that you are the right person to do the job.
上司:その通り。なぜこの仕事を君に頼みたいかというと、君の創造性に非常に強い印象を受けたからだ。前回率先してやってもらった春のキャンペーンも素晴らしかった。君が適任だと感じている。

Subordinate: Oh, thank you so much. I will do my best. May I ask some questions?
部下:ありがとうございます。いくつか質問させていただいてもよろしいですか?

Boss: Sure.
上司:もちろんだよ。

6) Subordinate: How urgent is this task?
部下:この仕事の緊急度はどのくらいなんですか?

7)Boss: It is very urgent. The customers are planning for their summer now, so we want to throw something to them as soon as we can. What do you have on your plate right now?
上司:非常に高い。お客さんたちはちょうど今頃、この夏の予定を決めているんだ。だからなるべく早くに何か投げかけたいんだ。君は今どんな仕事を抱えているのかな?

Subordinate: I have a lot. What do I do with those?
部下:今色々抱えています。それらはどうすればいいですか?

Boss: Such as?
上司:例えばどんなの?

Subordinate: I am currently working on the referral marketing strategy which we have discussed about a month ago. We are also implementing minor changes to our web site.
部下:一月ほど前に話し合ったリファーラル(口コミ)マーケティングの戦略を練っています。それから、ウエブサイトに細かい変更を加えています。

8)9)Boss: As for the marketing strategy, you can delegate that to Kate. As for the web site, you can put in on the back burner for now. This campaign needs to be implemented ASAP. (as soon as possible) We are already getting quite a few inquiries from our previous customers.
上司:マーケーティング戦略は、ケイトに任せていい。それから、ウェブサイトはとりあえず後回しにしていいから。このキャンペーンはできるだけ早く実行する必要がある。以前の顧客からすでに問い合わせがきているんだ。

10)Subordinate: Understood.
部下:了解です。

11)12)Boss: Please get started on this right away. You can go talk to Maya. She can tell you all about her plans for the package. You can also talk to Kent. He can get you all the customer data. Think it through, get some ideas together and and send them to me by the end of this week. They do not need to be shining. Even some sketchy ideas are welcome. Then we will sit down and go over them. We need something on the drawing board, Okay?
上司:じゃあすぐに取り掛かってもらえるかな? まずマヤに話を聞いたらいい。新しいパックツアーの案について「これでもか」ってほど喋ってくれるよ。それからケントとも話したらいい。必要な顧客データは彼が全部引っ張り出せる。ちょっと考えてみて、アイデアをいくつかまとめて今週末までに僕のところに送ってくれないかな? 素晴らしいものである必要はない。ラフな構想でも構わない。検討するのに何かたたき台が必要なんだよ。

13)Subordinate: Understood, I am on it.
部下:承知しました。直ちに取り掛かります。

14)Boss: Great. Can you recapture what I just told you now?
上司:じゃあ、今僕が指示したこと、リキャップしてもらえる?

Subordinate: You need advertising campaign ideas for our repeat customers. I need to talk to Maya for the package details and Kent for the customer data. You would like me to get some rough plans together by this Friday and send them over to you. As for the referral marketing plan, I can delegate that to Kate and I will put the web site modification on the back burner.
部下:リピーターのお客さん向けの広告キャンペーンのアイデアを作ります。パックツアーの情報についてはマヤと話し、顧客データについてはケントに話します。ラフなプランを作って、今週の金曜日までに提出です。今抱えている仕事については、リファーラルマーケティングはケイトに依頼し、ウェブサイトは後回しとします。

Boss: Very well. Do you have any questions?
上司:オッケー。なにか質問ある?

Subordinate. No. Not this time.
部下:今は特にありません。

Boss: Okay. Thanks for your time, Ken. I will talk to you on Friday.
上司:時間どうもありがとう。じゃあまた金曜日に話そう。

Subordinate: You are welcome.
部下:どういたしまして。

解説

それでは順に解説しましょう。

1)時間があるかどうか尋ねる
例え部下に話すときでも、まずは時間があるかどうか尋ねましょう。日本語でも「今ちょっといい?」なんていいますよね。同じことです。

2)small talk は簡潔にさらりと
“How are you?”, “Fine, thank you. And you?” なんてもう言わない、などと最近耳にしますが、そんなことはありません。ただ、固い印象があるのは確かです。だからこそ、あまり砕けて話したくないときには重宝します。 “What’s up?” はちょっとカジュアルすぎるのです。同僚同士ならいいですが、上下関係があるときは使わない方が無難です。また、月曜日だったら “How was your weekend?” などと言ってもいいですし、相手が出張者でしたら “How was your flight?”, “Where are you staying?”, “How is your hotel?” などと会話をスタートするのも適切です。

3)やって欲しいことを端的に伝える、4)その背景を伝える
いよいよ本題です。この例ではすぐに本題、つまり「やって欲しいこと」を切り出し、そのあとに背景を説明していますが、逆でも構いません。また、簡単な背景からはじめ、そのあとに本題を話し、さらに詳しく事情を解説することもあるでしょう。ただ、このときに「私の心情」「私の事情」をぶつぶつ話して大変がったり、どんなに頑張っているかアピールするのはやめておきましょう。部下は逆らうわけにもいかないのでフンフン聞いてくれますが、彼らはカウンセラーではないのです。また、部下に指示を出すときには、定番の “I would like you to ~.”が便利です。

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5)「あなたに頼みたい!」というストーリー
「誰でもいいわけじゃなくて、あなたに頼みたい!」というストーリーがちょっと入れられると、頼まれた方も悪い気がしません。新人だったら “I would like you to gain more experience.” (経験値をあげて欲しいから)でもいいですし、すでに経験豊富なベテランなら、”Since this is a very important task, this has to be you.” (非常に大事な仕事だから、あなた以外には考えられない)みたいな感じで言っても良いでしょう。なお、これは絶対に必要ではありません。実際のところ、あまり言ったこともありません。アメリカ人に限って言えば、淡々を仕事をしてくれる人が多く、こういう「持ち上げトーク」の必要を感じませんでした。

6)緊急度を伝える
この例の部下は自分から緊急度を聞いてきましたが、皆がこうではありません。緊急度を必ず伝えましょう。急ぎたったら “This is urgent.” “This is high priority.” と、はっきり伝えます。逆に急ぎでなかったら、それも伝えましょう。そんな場合は “This is not an urgent task, but I would like you to…” といった感じで、適切な優先順位を示してあげましょう。

7)今抱えている仕事を尋ねる
今抱えている仕事を確認しましょう。こんなときに便利なのが、”What’s on your plate right now?” という表現です。他にも “What are you working on right now?” などと言っても構いません。また、自分が手一杯なことを上司に伝えたいときは、 “I have a lot on my plate right now.” などと言うこともできます。また、もっとカジュアルな表現に “I got a lot going on right now.” もあります。 “I am busy. “ よりもこなれて聞こえます。

8)「任せる」は “delegate”
また、人に何か任せるときは delegate と言う単語が便利です。delegate と言うと’「代表」「移譲」といった対訳を暗記している人が多いと思いますが、仕事を他の人に権限を含めて誰かに任せる場合には delegate を使うのがごく一般的な表現です。

9)「とりあえず今は」は “for now”
また、「とりあえず」と言いたいときには文末に for now とつければオッケーです。Let’s assign Kate on this project for now. (とりあえず今はケイトをこのプロジェクトにアサインしよう) He can share a cubicle with Mike for now.(とりあえず今はマイクとキューブを共有してもらおう)などと言った具合です。また、「後回し」は “Put on the back burner.” という表現を非常によく使いますので、ぜひ覚えておきましょう。

10)「わかりました」は Understood.
わかりましたは、 “OK. I got it. “などでもいいですが、真面目な雰囲気を壊したくなければ “Understood”という言い方は便利です。また、 “Consider it done.” と言うと「終わったと思ってください」ですからつまり、「任せておいてください」と言うようなニュアンスになります。これも時折耳にします。

11) “Please get started right away. “で「直ちに取り掛かってくれ」
なんとなくつい “Please start soon.”と言いたくなりますが、こんなときには “Please get started right away.” あるいは “Please get on it right away.” などといった表現が適切です。

12)期限を伝える
期日を伝えるときは until ではなく by を使いましょう。 “You need to complete this task by this Friday.” と言った感じです。かなり多くの方が間違って untilを使っていますので、口語でも書くときにも気をつけてください。

13)“I am on it.” で、「直ちに取り掛かります」
これも使い勝手のいい表現です。すでに取り掛かっているなら、“I am already on it.” ですし、「すぐにやります」なら“I am on it.” です。

14)“Please recapture” でもう一度確認する
外国語で仕事するのは、何かと誤解がつきまとうものです。部下が嫌な顔しても、自分の指示を復唱させるようにしましょう。誤解が避けられて、結局はお互いに嫌な思いをすることを減らせます。

15)最後に質問を受け付ける。
最後に質問を受け付けて、誤解の余地を完全になくしておきましょう。


さて、いかがでしょうか?

特に英語だからどうと言うことはありませんが、ここで紹介した言い回しなどを使って、円滑に業務を伝えましょう。

それでは次の記事では、部下の適切な叱り方についてお話したいと思います。


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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。