仕事で英語を使うなら、孫正義氏を目指そう!

孫正義さんは、言わずと知れたソフトバンクの総帥です。彼は今回、突如としてアメリカの次期大統領トランプ氏と会談、共同会見にて「アメリカに500億ドル(5兆7000億円)以上投資し、5万人の雇用を創出する」と発表し、日米両方の世論を驚かせました。

ソフトバンクは、米国内で携帯電話4位のスプリントを傘下に持つ、世界屈指のテレコム企業です。2014年には米Tモバイルとの合併で合意していましたが、米規制当局の反対で実現しませんでした。しかし、トランプ氏は規制緩和を公約としてぶち上げていますから、この大型合弁が実現する可能性も少なくありません。

また孫氏、今年の夏にはARMを3.3 兆円で買収したばかりです。孫氏というのはまったく度胸があるというか、博打に強いというか……。かつてYahoo BB!で低価格ADSLサービスを提供したときもそうでしたが、タイミングを掴んで事業を拡大するのが、本当に天才的に上手い方です。

素人目に見ると、孫さんがどのようなビジョンで大型買収や投資をしているのか見えにくいですが、孫さん、下のYoutubeのインタビューで、非常にわかりやすく説明していました。

私がこのインタビューを聴いていて、特に感銘を受けたのは次の件です。

But to me, what’s more important is information Revolution. That’s more important. to create a new lifestyle for mankind. If I can help bringing Information revolution to mankind, I don’t have to do everything. I can bring everybody else’s talent.
「でも僕にとって、もっと大事なことは情報革命なんだ。その方がよほど重要だよ。人類の新しいライフスタイルを創るんだ。もしも、人類に情報革命をもたらす手助けができるなら……何でもかんでも僕が自分でやる必要はないんだ。さまざまな人の才能を持ち寄ればいい」

人類の新しいライフスタイルを創る……。こんなふうに、自分のミッションを捉えている方は滅多にいません。ソフトバンクというと「あざといことをする企業」という印象がある人も多いでしょう。私もそうでしたが、このインタビューで今まで知らなかった彼の人間的な魅力の一面に触れたような気がしました。

孫正義氏の英語力

さて、このビデオを見て興奮した僕は、早速ブライチャーのフィリピン人講師たちに見てもらいました。目的は3つあります。ひとつは新しい時代の動きを感じ取ってほしい、ということと、2つ目は、ブライチャーに入学するビジネスパースンたちがどのくらいの英語力を必要とするのか肌感覚で知って欲しいということ、それから、もしも孫さんがブライチャーに来るとしたら、彼の英語のどこを強化するべきか考えて欲しかったのです。

仕事で英語を使うなら、孫正義氏を目指そう!先生たちが視聴している|ブライチャーブログ

1つ目と2つ目のゴールは、すぐに達成できたようです。ブライチャーの生徒さんたちはIT系の技術者やマーケッターが非常に多いので、普段から感じていることを再確認する格好の機会となったようです。

さて、3つ目のゴールです。

まず、講師陣からは次のような指摘が相次ぎました。

「一言一言にすごく説得力がある」

「どの質問にも、魅力溢れる的確な返答が淀みなく出てくる」

「インタビュワーと常に視線を交え、適切なジェスチャーを用い、非常に好感が持てる」

「時折文法や語法や発音が間違っているけれど、それで崩れてしまうことがない。そのせいなのか、あまり不自然な感じがしない」

そう、孫氏の英語は極めて「実践力」が高いのです。人柄、交渉力、築き上げてきた実績。そういった要素が会話の隅々にまで行き届いていて、それが英語自体のミスを補い余っているのです。

日本のビジネスパースンが目指すべき英語力は、この孫氏のようなスタイルです。別にネイティブスピーカー同様の発音でなくてもいい。でも、ネイティブが普通に聴き取ることができ、誤解を生まないレベルの発音を身につけるのです。そして、自分を滞りなく表現できるだけの十分な語彙やイディオムを蓄え、躊躇なく話せる瞬発力を養うのです。

さらに何より必要なのが、相手としっかりと視線を交え、堂々とした態度で話すことです。英語の間違いばかりを気にしすぎて、意図することが伝わらなかったり、相手に見くびられてしまったり、知性を疑われたりしてしまっては元も子もありません。

もしも孫氏がブライチャーの授業を受けるとしたら?

その一方、講師たちの間から出てきた、向上のポイントがいくつかあったので、それらも挙げておきたいと思います。

  1. 母音の発音。特に「æ」の音がもう少し正確に出ると、より自然に聞こえるのではないかと思います。mankind という言葉に出てくる a などが顕著でしたが、mˈænkάɪndというふうに「æ」の音になるべきところが、カタカナの「マンカインド」と言った感じなってしまっています。他の母音にも音の正確さがやや欠けることころがあり、流暢であるが上にかえって気になりました。
  2. LとRの音が、その中間の音のようになってしまっている場合があり、とても気になります。例えば、”scale”という単語が”scare”のように聞こえます。
  3. 時折、形容詞を用いるべきところが名詞になっています。例えば、”neighboring countries” というべきところを”neighborhood countries”と言っていたり、”peaceful”という形容詞を用いるべきところで、”peace” と言い切っていたりします。
  4. 時制の一致や三単現なども時折間違っています。これは日本人に極めて多い間違いですが、もう少し減ると、より聞いていて自然になるのではないかと思います。

そこで、もしも孫氏がブライチャーにやってきたら、一体どのようなレッスンを提供するか講師たちと一緒に考えてみました。

仕事で英語を使うなら、孫正義氏を目指そう!フィリピン人講師たちがディスカッションしている|ブライチャーブログ

Phonics & Pronunciation

まず第1に取り掛かりたいのは、発音のレッスンです。主に、母音とLとRの発音に取り組んでいただくことになるかと思います。この辺りが整うだけでも、見違えるように滑らかになるはずです。ちなみに英語の中で最も使われる音素は/e/の音で、なんと9.96パーセントを占めています。次によく使われるのが/I/ で、こちらは9.75%にも上ります。母音は5文字しかないにも関わらず、日常英会話の中で37.4%もの割合を占めるのです。ですから、母音が整うと、発音が格段に滑らかになります。なお、母音の使用頻度についてはいくつかの文献がありますが、この記事ではこちらの論文の数値を参照しています。(The Relative Frequency of Phonemes in GeneralAmerican English Rebecca E. Hayden

1-1 Listening & Speaking

2番目は、会話中での文法の間違いの矯正です。これは、1-1 Listening & Speaking という上級者向けのレッスンで取り組みます。1〜3分ほど喋ってもらい、それを録音するなどして、一語一句間違いを訂正してく、というスタイルのレッスンです。このクラスは上級者に非常に好評で、書くときにはあまり間違えないのに、話す段になるとポロポロと文法を間違えてしまう方に受けていただいています。

Expression Enhancement

さらにもう一つやるとすれば、Expression Enhancement という作文のクラスでしょうか。このクラスは完全に作文のクラスですが、文法の間違いを訂正する最短の方法は、書いたものを何度も徹底的に添削してもらうことです。これを繰り返すうちに、多彩な表現方法や言い回し、また、正しい文法がしっかりと身につきます。これらはやがて話し言葉にも反映されてゆきます。

一番大切なこと

細かいことをお話しましたが、僕はこのビデオを視聴しながら、「さすが世界の孫正義だな」としみじみ思いました。英語は確かに大切ですが、考えようによってはただのツールでしかありません。英語が上手なだけでは、ただの便利な英語屋さんです。まず、ビジネスパースンとしてしっかりとした実力をつける。起業するならば、明快なビジョンを持ちましょう。その上で英語があれば、鬼に金棒です。孫氏のように世界を相手にビジネスをすることも夢ではありません。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。