使ってはいけないビジネス英語表現5選【プロが詳しく解説】

ビジネス英語というと、何を思い浮かべますか?

ある人にとっては海外の取引先とのやり取りかも知れませんし、別の人にとっては、外国人の上司や部下とのコミュニケーションかも知れません。業界によっても思い浮かべるシーンは随分異なるでしょう。

実際のところ、ビジネス用語は業界や会社の数だけ存在します。ですので一口に「ビジネス英語」と言っても、どこから始めていいのかわからない人が大半ではないでしょうか? しかし、どんな業界にせよ、英語でビジネスをする上で絶対に押さえておかなければならないことがひとつだけあります。

それは「丁寧に話すこと」です。

日本語に置き換えて考えてみましょう。業界用語などは就職してから覚えればよいですが、そもそも「丁寧に話すこと」を外してしまうと、ビジネスそのものが成立しなくなってしまいます。僕らは英語という外国語でビジネスをするわけですから、余計な誤解を避けるためにも、きちんとした話し方を身に付けることは何よりも大切なのです。

丁寧に話す上で気をつけるポイントはいくつもありますが、まず最初は、「絶対に使わないほうがいい」表現がなんなのかを把握し、最悪の地雷は踏まないようになりましょう。

使わってはいけない英語表現① 〜 “want”

「使ってはいけない英語表現」のトップバッターは “want” です。 この単語の表現するところはつまるところ「欲しい!」という欲求ですから、あまりにも直接的すぎるのです。召使いに命令しているわけではないのですから、例えば客先にお邪魔したときに「お飲み物は?」と聞かれ、思わず ”I want coffee.” などと言ってしまわないようにしましょう。

また自分の部下に話す場合でも、“want” はかなり高圧的な表現です。“I want your report by 5:00PM.” と言えば「今日の5時までにレポートを出してくれたまえ」のようなニュアンスになります。部下は黙って従うでしょうが、そんなことが続けば転職してしまいます。日本以外の多くの国では転職がごく当たり前のことですから、無自覚に高圧的に振舞っていると、みんな黙って辞めていきます。必要のないところで無用な反感を買わないよう、不用意な表現に気をつけましょう。

では “want” は使わないのかというと、そんなことはありません。例えば “I want to double our sales by next year.”「来年には売り上げを倍したい」のように、会社や部署のゴールを明示するときには極めて適切な表現方法です。自分たちの目指すゴールや路線を明示することは、部署や会社を運営する上で非常に重要です。そんなシーンではむしろ積極的に“I want” を使って行くべきです。

“I want” は “I would like” と言い換える

では部下に指示をするときには、いったいどのような表現を用いればいいのでしょうか? 一番手っ取り早いのは “I want” を “I would like” に置き換えることです。またもう一つの言い方として “May I ask (for) ~?” という疑問文にする方法があります。

いくつか例を見てみましょう。

    私はコーヒーが飲みたい
  • I want to have a cup of coffee.
  • I would like to have a cup of coffee.
  • May I ask for a cup of coffee?

  • 君にはこのプロジェクトに従事して欲しい
  • I want you to work on this project.
  • I would like you to work on this project.
  • May I ask you to work on this project?

  • 御社と取引を始めたい
  • I want to start a business with you.
  • I would like to start a business with you.
  • May I ask to start a business with you?

たったこれだけのことで、表現がグッと丁寧でマイルドになります。もっと丁寧なお願いの仕方はほかにもありますが、それはまた今後紹介して行きたいと思います。

使ってはいけない英語表現② 〜 “had better”

もうひとつ使ってはいけない表現、それは “had better 〜” です。日本では “had better 〜” の和訳として「〜するのがよい、〜したほうがよい」と習うため、この表現方法を丁寧な言い回しだと思い込んでいる人がたくさんいます。

しかし、これは大間違いです。実は “had better 〜” は、「〜をしないとあなたの身に災難が降りかかりますよ」といったような、ちょっと脅迫的な表現なのです。例えば「時間までに出社しないと減給しますよ」とか「宿題をやらないと進級できないぞ」とか、そんな雰囲気です。口頭でもメールでも、絶対に使うべきではありません。

では “had better 〜” はどんなときにも絶対に使えないのかというと、自分に対して、あるいは第3者に対して何か差し迫った状況を言い表す時には、使い勝手の良い表現方法です。例えば “I had better get back to work.” と言えば、「そろそろ仕事に戻らないとマズいな」と行ったニュアンスを醸し出すことができます。長話を適当に打ち切りたい場合などには、“I had better get going.” というと、「そろそろいかないと……」といった感じの雰囲気を作れるのです。

また、自分のチームに緊急事態やコトの重大さを伝える場合などに “We had better assign more resources to this project.” 「このプロジェクトの人員をもっと増やないとヤバい」などというふうに、切迫感を言い表すこともできます。

第3者の身に迫った危機を言い表したい場合には、 ”He had better finish his work very soon or else he will be in trouble.” などと言えば、「あいつ、そろそろ仕事を片付けないと、かなりマズいことになるぞ」などと言うふうに表現できるわけです。

しかしこの “had better 〜” 、は “you”を主語にして “You had better 〜” と使わないように、くれぐれも気をつけてください。

“had better。 〜” を丁寧に言い換えるには?

では誰かに何かして欲しいときには一体どのように表現すれば丁寧になるのでしょうか?

一つの方法は “I think you may/might want to 〜” (〜したほうがいい)と言い換えることです。またもう一つの方法は “Maybe it is good idea to ” という言い回しに置き換えてもいいでしょう。例を見てみましょう。

    夕方5時までにレポートを提出した方がよい
  • You had better submit your report by 5:00PM this evening.
  • I think you may want to submit your report by 5:00PM this evening.
  • I think you might want to submit your report by 5:00PM this evening.
  • Maybe it is good idea to submit your report by 5:00PM this evening. 

  • 提出する前にジョンに見てもらった方がいい
  • You had better have your report checked out by John before you submit.
  • I think you may want to have your report checked out by John before you submit.
  • I think you might want to have your report checked out by John before you submit.
  • Maybe it is good idea to have your report checked out by John before you submit.

  • 今日のことは早く忘れた方がいい
  • You had better forget what had happened today.
  • I think you may want to forget what had happened today.
  • I think you might want to forget what had happened today.
  • Maybe it is good idea to forget what had happened today.

使ってはいけない英語表現③“must” はどうだろう?

“had better 〜” はNGだとお話しましたが、それでは “must” はどうでしょうか?  “must” の和訳は「〜ねばならない」と習いますが、正しいのでしょうか? 結論から言えばこの訳は実際のニュアンスにもかなり近いです。例えば必需品を “It is a must-have.” などと表現しますが、とにかく「〜ねばならない」のがこの “must” なのです。

かなり上から目線な表現なので、ビジネスの場で “you” を主語にして “You must 〜” と使うのは好ましくありません。ただし、これも“had better 〜” 同様、”We must reach our sales target.” (我々は売り上げ目標を達成しなければならない)などと使うぶんには一向に構いません。また、”The company must release a new product before Christmas.” (クリスマスまでに、新しいプロダクトを出荷しなければならない)のように、自分自身や自分たち、あるいは彼や彼らなど3人称に向けて使うのはありです。しかし、面と向かって “You must 〜.” という言い方は、基本的にしないようにしましょう。

このほか、 “must” は可能性を表すのにも使います。例えば、“Thank you for sparing your precioius time for me today. I realize that you must be very busy.” などと言えば、「お忙しいところ、今日はお時間をいただいてありがとうございます」と言ったニュアンスになります。こういう使い方でしたら、別になんの問題もありません。

使ってはいけない英語表現④“Should” はどうだろう?

では “should” はどうでしょうか? “should” は「〜すべき」と習うので、割と強い言い方だと認識されている方が多いと思います。確かにその通りなのですが、実は “must” に比べるとずっとマイルドな表現なのです。例えば、同僚が熱っぽい顔をしていて「顔色がすぐれないけど、休んだほうがいいんじゃない?」と言いたい場合には “You don’t look well. Maybe you should take a rest.” などという感じで表現できます。またこのように “Maybe you should 〜” を組み合わせると「〜したほうが良いのでは?」という柔らかい感じを出せます。便利なフレーズなので、覚えてしまうことをオススメします。

ただ、強制性が少ないと言っても、 “should” は基本的に上司や客先に使う言葉ではありません。上記のような言い方も、同僚や部下以外には使わないほうが無難でしょう。 “should”もまた、 “had better” や “must” 同様、自分に対して使う分にはなんの問題ありません。また主語を 一人称 “we” で使うのならば「是非またもう一度お会いしましょう」と言った感じで “We should meet again.” のように使ってもさほど押し付けがましく感じません。ただ、なかには鬱陶しいと感じる人もいるので、よほど意気投合した場合を除いては、初対面では使わない方が無難でしょう。

なお、“should” も可能性を表す助動詞として使われる単語ですから、 “The meeting should start in 5 minutes.” 「会議はあと5分で始まるはずだ」などのように使えます。このような使いかたでしたら、なんの問題もありません。

“must” “should” を言い換える

では次に、この “must”、 “should” の言い換えについて学習しましょう。これも、“I think you may/might want to 〜” と “Maybe it is good idea to 〜” への言い換えで大丈夫です。例を見て見ましょう。

    今すぐ働き始めるべきだ
  • You must start working now.
  • You should start working now.
  • I think you may want to start working now.
  • I think you might want to start working now.
  • Maybe it is good idea to start working now.

  • この問題について話し合うため、会議を招集すべきだ
  • You must call a meeting to discuss this issue.
  • You should call a meeting to discuss this issue.
  • I think you may want to call a meeting to discuss this issue.
  • I think you might want to call a meeting to discuss this issue.
  • Maybe it is good idea to call a meeting to discuss the issue.

絶対に使わってはいけない英語表現⑤“Can/Could you 〜?” はどうだろう?

人に何かを依頼したい時、“Can you 〜?” という頼み方があります。“Can you come to our office at 3:00PM tomorrow?” などといった具合ですね。これもまた、上司や取引先に使う表現ではありません。それでは “Could you 〜?” ではどうでしょうか? “Can you 〜?” よりはやや丁寧ですが、それでも基本的には使わないほうが無難です。

ただ、指示を仰ぐ場合には別です。 “Can/Could you kindly give us a direction?” のように、自分たちに対する指示を上司に仰ぐ場合には、“Can/Could you 〜?” を使ってもさほどおかしくありません。

また、道順などを訊く際に “Where is the train station?” と直接的に訊くのではなく “Can/could you tell me where the train station is?” と間接的に尋ねると、ずっと柔らかい表現になります。 “What time is it?” と直接訊くのではなく、 “Do you know what time it is?” あるいは “Can you tell me what time it is now?” などと訊くと、直接的で不躾な感じを打ち消すことができます。

“Can/Could you 〜?”どう言い換えればいいのか?

では “Can you 〜?” とお願いしたい場合には、どう言い換えればいいのでしょうか? これは “It would be great if you could 〜”、あるいは “I would highly appreciate if you could 〜” などと言い換えると非常に丁寧な言い回しになります。また “I hate to ask this, but could you kindly 〜?” などという言い方もあります。例文を見てみましょう。

    コーヒーを淹れてくれませんか?
  • Can you get me a cup of coffee?
  • It would be great if you could get me a cup of coffee.
  • I would highly appreciate if you could get me a cup of coffee.
  • I am wondering if you could get me a cup of coffee.
  • Would it be OK if I ask you to get me a cup of coffee.
  • I hate to ask this, but could you kindly get me a cup of coffee.

  • 売上レポートをレビューしてくれませんか?
  • Can you review our sales report?
  • It would be great if you could review our sales report.
  • I would highly appreciate if you could review our sales report.
  • I am wondering if you could review our sales report.
  • Would it be OK if I ask you to review our sales report?
  • I hate to ask this, but could you kindly review our sales report?

さて、いかがでしょうか?

これでとりあえずビジネス英語基礎編「丁寧に話す」は終わりとします。こんな些細なことを気をつけるだけで、対人関係で地雷を踏んでしまう可能性が、グッと少なくなります。今回と前回の内容は、是非覚えてしまってください。

次回は上司や目上の人に話す場合の注意点や、使いやすい言い回しについて解説しましょう。


以上は、Brightureの Business Coaching のクラスの初日の、最初の10〜20分程度でカバーする内容です。詳しくはこちらへどうぞ。


博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。