英語で部下をうまく叱ることできますか?【ビジネス英語講座】

みなさんは英語で部下をうまく叱ることができますか?

英語もたくさんの表現があるため、叱るというデリケートなシーンでは、言葉の選び方が重要です。

その為、必要以上に部下を傷つけてしまったりしてしまうことも多々あります。

そこで今回のビジネス英語講座では、英語で部下をうまく叱る方法を学んでいきましょう。

英語でも”簡単に叱る”を心がける

英語でも日本語でも同じですが、部下を叱る際、「業務上何がどうまずかったのか」だけを明確に伝えることを心がけましょう。相手は大人ですし、部下の人格形成やカウンセリングは上司の仕事ではありません。上司にしても、カウンセリングの訓練を受けているわけもなければ、部下の親でもないのです。

日本人はとにかく個人の思いや事情などを持ち出してグズグズと話しがちです。これは部下を叱る際にもNGです。子供のときに親や先生にグズグズと長時間叱られた人も多いと思いますが、あれって最悪ですよね。ましてや上司に「お前のためを思って言ってやってんだ」なんて説教されても、屈辱的に感じても感謝する人なんていないわけです。相手のことを慮っているのと、説教は別物です。英語、日本語に関わりなく、お勧めできないアプローチです。

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では短く強く叱ればいいのかというとそれも違います。まず、怒鳴るのは絶対にダメです。特に人前で大きな声を出して叱るのは絶対に避けましょう。日本人が考えているよりもずっと恨みをかいます。最悪訴えられますし、部下に辞められるのがオチです。

それでは前回同様、まずは英語で叱ったシーンを見てみましょう。

「英語で叱る」とあるシーン

1) Boss: Hi Ken. I need to talk to you in person. Do you have time?
上司:ちょっと個人的に話をしたいんだけど、時間ある?

Subordinate: Yes. I do.
部下:はい。

2)Boss: Please come to my office.
上司:僕のオフィスに来てもらえるかな?

Subordinate: Yes.
部下:はい。

3)Boss: How are you?
上司:調子はどう?

Subordinate: I am doing fine. Yourself?
部下:元気にやっています。あなたは?

Boss: I am doing great. Thank you for asking. 4)So I have received your weekly status report on Saturdays instead of Friday mornings for the last couple of weeks. They are supposed to be due on Friday AM. You know that, right?
上司:元気にやってるよ。聞いてくれてありがとう。ここ2週間ほど、君からの週捗が金曜日の午前中じゃなくて土曜日に提出されてるんだ。あれ、金曜日の午前中が提出期限なの知ってるよね?

5)Subordinate: Yes. I am aware of it.
部下:はい。存じ上げております。

6) Boss: You see, I have to roll up my own weekly status report before the end of the day and send it out to the executives on every Friday evenings. But because of your delay, I have been omitting your sales status from my report, which makes this entire group look as though we are incapable… That’s just not acceptable.
上司:俺自身、みんなの週捗をまとめて毎週金曜日の夕方までに重役たちに提出しなくちゃならないんだ。君の週捗が来ないからセールスの進捗を外して送ったけど、そんなことをしてるとこの部署そのものが悪く見えてしまうんだよ。今後、レポートの遅延は売れ入れられない。

Subordinate: I understand Sir. I am so sorry.
部下:状況はよくわかりました。本当にすみません。

7)Boss: I know you are better than this. 8)How did it happen?
上司:君はもっとちゃんとできるじゃない。一体どうしてこんなことになっちゃったのかな?

Subordinate: I meant to send my report on Friday, but I was not able to receive all the data I need to complete my status report on time.
部下:期限までに出すだったんですけど、進捗レポートに載せる情報が予定通りに全て受け取れなかったんです。

Boss: What has hindered you from doing so?
上司:何が障害になっているの?

Subordinate: I was supposed to receive some of the data from Jay, but he has not sent out his data on time for the last couple of weeks.
部下:データの一部分はジェイから来るはずになってるんですが、過去2週間、彼からのデータが時間までに来ないんです。

Boss: Have you spoken to him about it?
上司:彼とは話をしたの?

Subordinate: No. Not yet. I am afraid to talk to him.
部下:いえ、まだです。ジェイに話すのがなんだか怖くて。

Boss: Why so?
上司:それはどうして?

Subordinate: Jay has been working for this company for a long time, and he is much more senior than I am. He also seems stressed out about something, so I am afraid to talk to him.
部下:彼はもうこの会社で長く働いている先輩ですし、それになんだかこの頃ストレスが溜まっているみたいで、なんだか話しかけるのを躊躇してしまうんです。

9)Boss: I see. So what can we do to resolve this?
上司:なるほど。どうやって解決すればいいと思う?

10)Subordinate: I will go (and) talk to him.
部下:彼と話して来ます。

Boss: Do you need any help?
上司:なんかヘルプいる?

Subordinate: Not right now. You are right, and I should have spoken to him the first time this has happened. I will talk to him in person. If this gets nowhere, then I may seek for your help.
部下:今は結構です。おっしゃる通りです。彼からのデータが最初に遅れたときに、彼に話をしにいくべきでした。まずは個人的に話してみます。もし解決しないようでしたら、何かお願いするかもしれません。

Boss: I will wait for your update then. Please do follow through.
上司:じゃあ君からの報告を待つよ。ちゃんとフォローしてくれな。

Subordinate: Understood. I am very sorry for any inconvenience I may have caused.
部下:了解です。ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。

Boss: That’s alright. I will be waiting for your next status report, OK?
上司:もういいよ。次の週捗、待っているからね。いいかな?

Subordinate: Yes. Most certainly.
部下:はい。もちろんです。

11)Boss: You are dismissed now.
上司:じゃあもういいよ。

解説

それでは順に解説しましょう。

1)時間があるかどうか尋ねる

例え部下を叱る時にでも、まずは時間があるかどうか尋ねましょう。なお、叱る内容に緊急性があるときにはこの限りではありません。

2)みんなの前で叱らない

日本ではみんなの前で部下を叱責するといったシーンが見受けられますが、日本以外では受け入れられません。私が自分で実際に体験したのはフィリピン、アメリカ、アイルランドの3カ国ですが、どこでもみんなの前で叱責なんて絶対にNGです。叱るときには個人的にやりましょう。鉄則です。また「個人的に話す」「プライベートで話す」は、”talk in person” です。グループで話すのなら “Talk in a group.” が適切です。

3)叱る前に最低 “How are you?” くらい言おう

お互い大人なんですから、どんなにムカついてても最低 “How are you?” くらい言いましょう。

4)起きた事実を淡々と伝える

叱るときのポイントをすぐに切り出しましょう。ここでの注意点は

「起きた事実を端的に述べる」

です。怒鳴るのは部下が萎縮したり恐怖感を覚えたりするだけなので避けましょう。失敗をすると次から隠すようになるのがオチです。また、こちら側の勘違いの可能性もあります。まずは端的に起きたことを伝え、事実確認をしましょう。また、丁寧な言い回しを心がけましょう。

5)「存じ上げております」は “I am aware of it.”

「気がついている」「知っている」「理解している」…… そんなふうに言いたい時に便利なのがこの “I am aware of it.” という言い回しです。逆に「気がついていなかった」「知らなかった」「理解してなかった」という感じの時には “I was not aware of it.” と言えます。

6)叱る言葉は慎重に選ぶ

上司に「君らしくないな……どうした?」なんて言われると、怒鳴られるよりもかえって刺さるものです。 “I know you are better than that.” なんていうと、そういうニュアンスを出すことができます。またガックリした場合には “I am disappointed.” とはっきりと伝えても良いでしょう。なお、ここで使ってはいけない言葉は、相手を誹謗中傷したり、人格を否定するような言葉です。

お前には能力が足りない
– You are not capable.
– You are not incompetent.

お前はバカなんじゃないのか?
– Are you stupid?
– Are you dumb?
– Are you a moron or what?

こうした言葉は絶対に使ってはなりません。

7)ミスの「影響」を伝える

ミスの影響を必ず伝えましょう。特に新人は自分のミスがどんな影響を周囲に与えているかわかっていないことが多いので、事の重大をわからせるだけでミスの再発を防げることが多いです。また、その後は影響を考えて仕事をするようになるといった成長も期待できます。

8)原因究明の段階では “You” という言葉を避ける

日本語でもそうですが、原因究明の段になって「お前なんでこんなことやらかしたんだ?」(What have you done? )みたいな感じで矛先を向けると、すでに叱られて萎縮している部下がますます身の置き所を失います。ですから、ここでは「一体どうしてこんなことが起きたのかな?」(How did it happen?) のように、you という言葉を使わずに原因究明を始めましょう。ミスというのは大抵、複合的な小さなミスが重なって起きているものです。いくつか類似の言い回しを紹介しておきましょう。

– How did it come about?
– What’s going on?
– What do you think the root cause of this error is?

9) “we” という言葉を用いて解決策を考えさせる

問題の解決策を提示するのではなく、本人に考えさせるようにしましょう。解決策を提示してばかりいると、自分で考える習慣が育ちません。このような場合にも「どうやったら我々は問題を解決できるかな?」(How can we fix the issue?)のように、we を前面に出し、you という言葉を避けるようにしましょう。

10)文法的には間違ってる “Go talk to….” “Go see” “go meet”

実際に英語圏で生活すると、“I will go play with them.” “I will go see him tomorrow.” “I will go talk to him.” のように「go +別の動詞」という表現を頻繁に耳にします。これ、文法的には大間違いなので、書き言葉では使わないほうがいいですが、口語、特にアメリカでは極めて一般的な言い方なので、覚えておくと便利です。

11)話が終わったら “You are dismissed.”

この手の叱責は空気も固くなるしで、どうにも終わらせにくいものです。「もういいよ」(“You are dismissed now.”)と告げて、終わりにしましょう。 “OK, You can go now.”などといっても大丈夫です。

さて、いかがでしょうか?

特に英語だからどうと言うことはありませんが、ここで紹介した言い回しなどを使って、部下を叱ってみましょう。

次の記事では、部下の悩みを聞くときには、どんなふうにアプローチすればいいのか解説したいと思います。


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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。