ブライチャーが生徒に大量の宿題を出す理由とその効果

ブライチャーでは、読書や英作文、あるいは発音練習などといった宿題を、毎晩大量に課します。もちろん生徒さんたちはかなり大変で、朝から晩まで英語漬けです。宿題とは言っても、日本の学校で出されるような穴埋め式の問題や、文法の練習問題、あるいは数パラグラフしかない短い文章の精読などは一切行っていません。

なぜブライチャーでは大量の宿題を課すのでしょうか? 宿題の内容は、どうして穴埋め式の練習問題や短文の精読ではないのでしょうか? それは、ブライチャーが課すこれらの宿題が英語を習得するための重要なプロセスを占めており、これ以外のやり方は一見近道に見えて、結局は遠回りなやり方だからです。

それでは、なぜブライチャーでは大量の宿題を出すのか、なぜありきたりの教材を使用しないのか、その理由について詳しく説明していきましょう

日本語⇄英語の脳内翻訳を続ける余地をなくす

英語を身につける上で欠かせないステップの一つに「翻訳癖を取り去る」というものがあります。つまり、英語を英語のまま理解する習慣を身につけるのです。日本の英語教育は和訳、英訳を何度も反復しますから、どうしても脳内にガッツリと翻訳回路が形成されてしまいます。

数ページ程度の読む宿題や、わずか数行程度書く宿題を時折こなしても、この翻訳癖は無くなりません。その程度の量だと日本語に変換しながらやっても間に合うからです。しかし、これが一晩に何十ページも読むとなると話が変わります。日本語に変換しながら読む、というプロセスを思い切って捨てないと、量がこなせないため、自然と翻訳癖が抜けていきます。

生きている英文に大量に接する

もう一つの目的は、大量の「生きている英文」に接することです。英語の勉強というと文法の規則を一種の方程式のように覚えて、パターン問題を繰り返してその「方程式」を暗記したりしますが、このやり方だといつになってもパターンに縛られ、状況に適した表現をなかなか使えるようになりません。文法の知識は必要ですが、反復練習を繰り返してテスト慣れはしても、実際の英語力にはほとんど寄与しません。

結局、状況に応じた適切な単語や言い回しが滑らかに出てくるかとうかは、実際の生きた英文にどれだけ触れてきたかにかかっています。パターン暗記は近道のようでいて、結局は遠回りです。

また英語学習を目的に作られた課題はどうしてもつまらない内容になりがちですが、内容が興味深い書籍を使用することで、上達に必要な絶対量をこなすことが可能になるのです。

リスニングの宿題が出ることもある

リスニングの課題を出す場合もありますが、こちらのほうもいわゆる学習教材ではなく、映画、ニュース、ストーリーものなどといった「生きた英語」のみを使っています。その理由は洋書を読み込む場合と同じです。なるべく沢山の生きた英語に様々な形で接してもらうことで、それぞれの単語の持つ語感や、あるニュアンスを表現するには、どのような時制や文法表現を用いるのが適切なのかを、知識としてではなく感覚として掴んで欲しいからです。

テニスなどの球技などでも、「こうきたらこうする」などと頭で考えているうちはどうしても的確な反応ができませんが、やり込んでみて初めて、思考をすっ飛ばして自然に反応できるようになります。英語も同じことです。いろいろな生きた英文にしっかりと触れること、これに勝る感覚の訓練はありません。

なぜ英語を書かせるのか?

また英語を書く宿題もかなり出しています。こちらの方は読む宿題とリンクしているので、まず課題図書を読まないと、書く内容さえ抽出できません。まず読んで理解する。そして、その内容を自分の言葉に落として表現してみる。こうすることで、読んだときに遭遇した新しい表現方法や単語なども実際に使い、記憶に定着させていくことができます。

そして授業

次の日の授業は、やってきた課題をベースに進められます。書いた文章を先生と一緒に見直すことで、文の構成から文法のエラーに至るまで直していきます。また読んできた内容についてディスカッションする。こうして実際に「使う」ことで、宿題でこなしてた「覚える」「浸る」が生きてくるのです。

授業を学びの場として機能させたいからこそ、宿題をガッツリとこなすのです。それがブライチャーの学習スタイルです。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。