立場が上の人とのビジネス英会話〜実践編~

前回は「立場が上の人とのビジネス英会話~すんなりと許可をもらう技術~」と題して、上司から許可を得る際に気をつけるべきポイントを紹介しました。今回は続編として、交渉時に使い勝手のいい言い回しを紹介しましょう。

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ステップ1:時間があるか尋ねる

まずは相手に「(話しをする)時間があるか」を尋ねます。前回の例文でも、冒頭で “Do you have a minute?” と聞いていますが、これは時間があるかどうか尋ねる際の決まり文句です。 “Excuse me” とセットで使うと、失礼がありません。

• Excuse me. Do you have a minute?
• Excuse me. Do you have a few minutes?
• Excuse me. May I speak to you in person for a few minutes?

まとまった時間が必要なのか、数分で終わるのかも明確に伝えましょう。また、なんの案件かを冒頭で伝えても構いません。緊急事態なら、もちろんそれも伝えましょう。

Excuse me,

• May I speak to you right now? It will take only about 10 minutes.
• May I speak to you in person? It will take about 10 minutes or less.
• Do you have a few minutes? It is about the printer purchase.
• Do you have a few minutes? We have an urgent issue.

“An urgent issue” で「緊急の問題」です。 “There is an emergency.” や “We have a situation.” でも構いませんが、かなり緊急度が強調されますので、口調や語気などに気をつけてください。

なお、現在ではチャットで時間の都合を聞くのも一般的です。上司のオフィスに向かう前にチャットを送ってみてもいいでしょう。これらの表現はそのまま書き言葉として使っても大丈夫です。

の定番を紹介しましょう。

With your permission, I(we) would like to ~.
• I am (we are) seeking for an approval to ~.
• Would it be alright/okay if I(we) ~?
• I(We) would highly appreciate if you would allow me(us) to ~.
• It would be great if you would allow me(us) to ~.

いずれもかなり丁寧な表現です。もちろん相手は悪い気がしません。こういうところで “I want to ~” などと言ってしまうと、意図は伝わりますが子供っぽい印象を与えてしまったり、相手の気分を害してしまったりするので、こうしたワンクッション置いた言い回しに慣れておきましょう。いくつか例文を紹介します。

もしお許しがいただければ、新しいプリンタを購入したいのですが…。

I want to buy a new printer for our team.
(意図は伝わるが、子供っぽい)

I would like to buy a new printer for our team.
(上司にお願いするには丁寧さが足りない)

Would it be alright if we purchase a new printer for our team?
(かなり良い)

I am seeking for an approval to purchase a new printer for our team.(非常に丁寧)

With your permission, we would like to purchase a new printer for our team.(非常に丁寧)

I would highly appreciate if you would allow us to purchase a new printer.
(非常に丁寧)

It would be great if you would allow us to purchase a new printer.
(非常に丁寧)

また “buy” ではなく “purchase” と、ちょっと固い言葉を使うのもポイントです。日本語でも同様ですが「買う」というよりも一段固い「購入する」という言葉を使うと、よりフォーマルな印象を与えます。例えば「確保する」なら “get” よりも “procure” “gain” “secure” などの方が、キチンとした感じがします。別に “buy” や “get” が間違っている訳ではありませんが、カジュアルな感じがしますので、この辺りの単語を適宜入れ替えて使えると、丁寧な印象を与えられます。またこれらの丁寧な表現は、そのままメールなどでも使用可能です。

必要性を訴える

「どうしても必要なんです。」と声高に訴えたいケースもあるでしょう。「このプリンタを購入すると作業効率がすごく上がり、みんなが本当に助かるんです」「長いプロジェクトでしたから、社長から直々にお言葉をいただければ、みんなも非常に喜ぶと思います」などなどです。こういう時には、この辺りが定番です。

It would really mean a lot if you could/would ~.
• It would really help a lot if you could/would ~.
• It would really be great if you could/would ~.

例文も上げておきましょう。

It would really mean a lot if you could directly hand out the recognition awards to the employees.
社員に功労賞を直接表彰していただけると、非常に喜ぶと思います。

• It would really help a lot if you would allow us to purchase the new printer.
もしプリンタ購入の許可をいただけると、みんな非常に助かります。

It would really be great if you could show up to the Christmas party.
クリスマスパーティにお出でいただければ、大変光栄です。

こんな感じで一言添えるだけでも、随分スムーズに交渉が運びます。なお、やってはならないのは、「これが許可されないなら辞めてやる」などと上司を脅すことです。あなたの脅しに屈したら、今度は他の部下の脅しに屈しなければなりません。あなたがどんなに有能でも、これをやった瞬間に埋められない壁ができます。くれぐれもそういう間抜けな発言はしないように気をつけましょう。

• Excuse me. Do you have a minute?
• Excuse me. Do you have a few minutes?
• Excuse me. May I speak to you in person for a few minutes?

上司の提案をやんわりと断る

上司に提案すると、別の提案が降ってくることがあります。「次のプロジェクトにはAさんを起用したい」と言ったときに「いや、Bさんの方がいいのではないか?」などと反論されるケースです。理にかなっているときもあれば、無茶なこともあります。また、提案が法に反している場合もあるでしょう。

ここでしてはならないのは、頭ごなしに “NO” と返事することです。通常、上司は仕事ができるから昇格している訳で、そんな相手を頭ごなしに否定してもイラっとされるだけで得るものはありません。また、上司が無能な場合はさらにタチが悪く、プライドだけはやたらと高いので、なおのこと刺激しない方が無難です。

ではここで、上司の提案を否定する際に使いやすい言い回しをいくつか紹介しましょう。

• I am afraid 〜.
「残念ですが……」

• I would like to fulfill your request, but ~.
「ご希望に応じたいのは山々なのですが……」

• As much as I would like to follow your instruction, I find it very difficult to comply.
「仰せ通りにしたいのは山々なのですが、実行するのは難しく思います。」

1)の “I am afraid 〜.” は本当に頻繁に耳にする表現です。例えばホテルにてお客様の希望する部屋が空いてない時なども、 “I am afraid we have no room for the night.” などと言ったりします。品切れで商品がない。もう従業員が帰宅し今からではタスクが実行できないなど、さまざまなシーンで活用が可能です。

2)の“I would like to fulfill your request, but ~.”は、日本語風にいうと「ご希望に応じたいのは山々なのですが……」と言った感じになります。上司の希望には沿いたい、しかしやむにやまれぬ事情でどうしてもできない。そんなときに便利な表現です。

3)“As much as I would like to follow your instruction, I find it very difficult to comply.” もまた「ご指示に従いたいのは 山々なのですが……」と言ったニュアンスです。これは「上司の提案が法やモラルに反していたり、持続不可能な場合などに使いやすい表現です。例えば「価格は1万円だって申告しておこう。間税が安くなる」なんていう提案は脱税行為です。こんなときにはやんわりと、それでいて確実にその提案を断りましょう。

I am afraid all the rooms are already taken.
大変申し訳ありませんが、満室でございます。

I would like to fulfill your request, but we are severely understaffed right now.
ご希望に添いたいのは山々なのですが、現在、極端な人員不足でして……。

As much as I would like to follow your instruction, I find it very difficult to comply. Terminating an employment based on gender is strictly prohibited by law.
仰せ通りにしたいのは山々なのですが、実行するのは難しく思います。性別によって解雇することは、法によって禁じられております。 

お礼を言う

承認がもらえたら、最後に必ずお礼を伝えましょう。もちろん “Thank you very much” でも通じますが、ほかに、もう少し丁寧な言い方を紹介しましょう。

承認いただき、ありがとうございます。
• Thank you very much for your approval. It means a lot to us.

ご理解いただき、ありがとうございます。
• Thank you. I really appreciate your kind understanding.
• Thank you very much for your kind understanding.

ご考慮いただき、ありがとうございます。
• Thank you. I really appreciate your kind consideration.
• Thank you very much for your kind consideration.

お時間いただき、ありがとうございます。
• Thank you for your time.
• Thank you very much for sparing your precious time.

さて、いかがでしょうか? 別に難しいことは何もありません。ただ、とっさに出てくるようになるにはそれなりの練習が必要です。友達などに協力してもらって何回か練習しておくだけでも随分違いますから、面倒臭がらず、練習を重ねて置いてください。

さて次回は、部下との話し方について紹介していきたいと思います。


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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。