「英語が苦手な日本人」こそが英語を学ぶべき理由

なぜ僕らは英語を学習しなければならないのでしょう?

受験のため? 就職のため? 海外旅行のため? ビジネスに必要だから? 理由は人それぞれでしょう。

しかし、なんだかピンときません。別に、英語がしゃべれなくても普段の生活になんの支障もありませんし、一体全体なんのために英語を勉強しなくちゃならないのか、いまひとつわからないのです。しかし、

「これからの時代、英語くらいできないと!」

なんていうふうに意識の高そうな方々に言われると、なんだか気持ちも焦ります。そこで時折思い立って英語の勉強をしてみますが、ダイエットと英語学習くらい続けるのが困難なことはありません。その度に三日坊主で終わってしまい、むしろ挫折癖を自分につけていると言えなくもないくらいなのです。

英語を知らなくても困らない

なぜ僕らは、これほどまでに英語学習を継続できないのでしょうか? 答えは簡単。日本国内では、英語を必要としないからです。人間、必要に迫らせたことは必死になって取り組みますが、そうでないことはつい言い訳を見つけては、後回しにしてしまうものです。

では、英語なんて学習しなくてもいいのでしょうか? ごく一部の人たちだけが必要なものと、放っておけばよいのでしょうか? 僕はそう思いません。なぜなら異言語を知ることで、人生がより豊かなものとなりうるからです。

ここで一度立ち止まって、「日本人が英語を学ぶべき理由」について考えてみましょう。

英語を知ることは、すなわち日本を知ること

僕が考える言語学習の最大のメリットは、「日本」という国を客観視する手段を得られることです。例えば、日本のことが海外ではどんなふうに報道されているのか? あるいは、日本語で報道される海外のニュースは、別の国ではいったいどのようなニュアンスで報道されているのか? などといったことを知ることで、日本という国が外からどのように見えているのか、クッキリと浮かび上がってきます。

ところが、日本語しか話せないと、こういう多面的な視点を得ることが難しくなります。そして、日本が世界の常識のすべてだと思い込んでしまいがちなのです。仮に「日本の常識は海外では通じない」となんとなく概念的にわかっていても、実際に自分の目や耳で一次情報に接して消化するのとでは、大きな違いがあります。

別の文化を知ることができる英語

また、別の言語を使えるようになることで、異文化に対する認識が変わってきます。1週間ぐらい海外を旅行しても、異文化が理解できるわけではありません。まずは言葉を用い、人と交わり、話をする。全てはそこからです。

同じ日本人同士だって、話をしなかったら相互理解なんてありえません。夫婦や恋人や同僚だってそうなのです。ましてや、外国の文化や人々を理解しようと思ったら、何がなくても、まずは言葉の獲得からなのです。

また、異なる言語は、それぞれ異なった世界観を構築しています。英語と中国語と日本語では、それぞれ物事の捉え方が少しずつ違うのです。逆に言えば、言語を学ぶことで異なった世界を知ることができるのです。

異文化を知ることは、自分の世界を豊かにしてくれます。今まで知らなかった物事の捉え方や考え方に触れることで、それがまた自分の血肉となり、自分の世界観を、より豊かなものにしてくれるのです。

英語は「もっとも汎用的な言語」

ここまでは主に、他言語、と言う言い方をしてきました。ではなぜフランス語でも中国語でもなく、英語なのでしょうか? それは、英語が現在、もっとも汎用性の高い言語だからです。医療、IT、経済、エネルギー、スポーツ、芸術…… どの分野へ進もうと、もっとも有益な情報源は英語です。

また、海外でのマーケットを開拓したかったら、まずは英語をおさえることで、大きな人口のパイにアクセスすることができます。情報を得るにしても、発信するにしても、英語がもっとも汎用性の高い言語なのです。

さあ、英語を学ぼう

英語ができるというだけで選択肢も広がる。英語ができるというだけで、他国の人と等身大で接することができるようになる。英語ができるというだけで、人生がより豊かなものへとなりうるのです。

英語というツールを身につけ、自分の人生をより可能性に満ちた、豊かなものへとしていきませんか?

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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。