立場が上の人とのビジネス英会話~すんなりと許可をもらう技術~

前回前々回は「ビジネスで使ってはいけない英語表現」と題して、避けた方がいい表現と、より丁寧な言い回しを解説しました。さて、今回は「自分よりも立場が上の人から許可をもらう」場合について方法を紹介します。

ビジネスの現場では、重要な顧客や上司など、立場が上の人から許可を得なければならないシーンが多々あります。人員を増やす、機材を購入する、長期休暇を取るなど、さまざまなパターンがあるでしょう。しかし注意すべきポイントはどの場合でも変わりません。相手の気分や立場を壊さないよう丁寧に言葉を選び、自分の意思を明確に伝え、許可を得ることです。今回は「すんなりと許可をもらう技術」を体得し、上司や取引先からスムーズに許可を得られるようになっておきましょう。

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さて、まず一度英語から離れて考えてみましょう。そもそも上司に何かお願いするときには、顧客に対してセールストークに臨むつもりで接することが大切です。上司は親兄弟ではないのです。「相手にどんな利益があるのか」「どんな問題が解決するのか」にしっかりとフォーカスしましょう。あらかじめ聞かれそうなことにすべて答えを用意しておくのは当然です。これだけで、許可を得られる可能性が格段に上がります。

なお、上司に対して「私は頑張っているのに」などと、クドクドと泣き言を言う人がいますが、「情に訴える」アプローチは米国企業では驚くほど通用しません。それどころか「うっとうしい奴」と思われるのが関の山です。上司や取引先があなたを重んじるのは「頑張っているから」でも「かわいそうだから」でもなく、あなたのスキルやビジネスのやり方を買っているからです。ここのところは間違えないようにしましょう。

日本語だったら簡単な交渉でも、英語でスムーズにやるには、最初のうちはそれ相応の準備が必要です。特に英語力が低いうちは、予想される質問をあらかじめ考えて答えを書いておくなり、資料を用意するなどして臨みましょう。多少の言葉の壁は確実に超えられます。

悪い例

ではまず、悪い例から見てみます。部内のプリンタが頻繁に故障し、作業効率が落ちているとします。みんなのイライラも募っています。そこで、新しいモデルに買い換えたいとしましょう。

Subordinate: Excuse me. Do you have a few minutes right now?
部下:すみません。ちょっとお時間いただけますか?

Boss: Sure. What’s up?
上司:ああ、いいよ。どうしたの?

Subordinate: Our printer has been acting up lately. I was trying to print out a report a few days ago, but it kept on jamming and I had to reset the paper each time. I was so frustrated. It is jamming so often that other people are also having trouble. The other day, Mike was trying to print a 40-page manual to have it checked but….
部下:この頃、部内のプリンタがどうにも調子悪いんです。私もこの前報告書をプリントしようと思ったら 何度も紙詰まり起こして、その都度に紙を入れ直して散々でした。他の人もすごく困っています。この前はマイクさんがマニュアルの校正をしようと40ページの原稿をプリントしていたら………(グダグタと長ったらしい上に、情へのアピールがミックスされていてうざい。また、何をしたいのかわからない)

Boss: (Raising his hand, gesturing to stop talking ). OKay. What do you want to do about it?
上司:(手をかざして会話を遮りながら)で、どうしたいの?

Subordinate: I would like to buy a new printer.
部下:新しいプリンタを購入したいんです。(特別悪くはないが、もう少し丁寧な言い回しを用いるべき)

Boss: Can’t we repair the existing printer?
上司:今のプリンタは修理できないの?

Subordinate: Well, maybe. But it probably costs a lot. We should just buy a new one.
部下:あ~。できるかもしれません。でも多分、高くつきます。新しいものを買ってしまった方がいいです。(修理可能かどうか、可能だとしたらいくらかかるか調べていない時点で、「使えねえな」と感じる。)

Boss: OK…. Any particular model in mind?
上司:ふーん。で、新しいモデルはどんなものを考えてるの?

Subordinate: I think model XYZ from E Company would do.
部下:E社から出てるモデルXYZというプリンタを考えています。(”I think” が全くダメなわけではないが、もう少し適切な言い方がある。)

Boss: Why is that?
上司:それを選んだ理由は?

Subordinate: The price is so so and It’s a multi-functional printer which supports faxing and copying. It also allows wireless printing from smartphones and tablets as well as double sided and A3 printing.
部下:値段がまずまずなのと、それからファックスやコピーとしても使える複合機ですし、タブレットやスマホからのプリントもサポートしているからです。それから両面印刷もA3のプリントにも対応しています。(「so so」っていくらだよ、とこれだけでもイラっとする。「ファックス機能は必要なのか?」「A3のプリントなんて必要なのか?」など、疑問点がどんどん湧いてくる)

Boss: How much is “so so” exactly?
上司:「ぼちぼち」って正確にはいくらくらい?

Subordinate: About 30,000 yen.
部下:3万円くらいです。(正確な値段が把握できていないことにイラっとする)

Boss: Do we ever print A3?
上司:A3 なんかプリントすることあるの?

Subordinate: Once in a while.
部下:たま~にあります。(頻度がはっきりしない)

Boss: How often is “once in a while”?
上司:たまにってどのくらい?

Subordinate: Maybe once or twice a month.
部下:多分1ヶ月に1、2回です。

Boss: How about fax?
上司:ファックスは?

Subordinate: Oh that. Yes. Also once in a while. Some of our customers are still relying on fax.
部下:それもたまにです。まだファックス使ってるお客さんが少しだけいるので。

Boss. I see. In that case, isn’t there a cheaper model without A3 printing and fax?
上司:A3もファックスもできなくていいから、もう少し安いプリンタはないの?

Subordinate: I think so. Let me look.
部下:多分あると思います。ちょっと調べさせてください。(あらかじめ調べてないことにうんざりする)

問題点

赤字で書いた部分以外にもいくつか問題点があります。順番に見てみましょう。

1)上司に提案をするときには、「何をしたいのか」真っ先に述べ、その次にその理由を簡潔に述べるようにします。休暇の申請をする時なども「すごく疲れが溜まってるんです」などとすぐさま情に訴える人もいますが、前述の通り効果が薄い上に、心証を悪くするのがオチなのでやめておきましょう。「リフレッシュしてさらに貢献したい」と言った方が同じことでもずっとアピールしますし、会社に対する利益も明確になります

2) “maybe” “probably” “about” “so so” “once in a whileといった曖昧な表現を避けましょう。こうした言葉の解釈は文化圏や個人によって差がある上、連発していると「はっきりしない奴」と判断されてしまうからです。

3)上司にアピールしたいときには、 “I think” という表現も用いない方が無難です。きちんと調査をした上で、断定的に「これだ!」と言い切った方がずっと好印象が与えられます。「遠慮がち」というのは欧米人には本当にアピールしません。”I think” をポロポロと不用意に使っていると、提案に自信がないと思われてしまうのです。なお、提案をしているのではなく、ディスカッションをしているのなら、 “I think” を使っても、特に問題ありません。

4)上の人に許可を願い出るときには “I would like ~” では丁寧さが足りません。もっとずっと丁寧な言い方があります。次回に詳しく紹介します。

こんなグズグズの提案をする人はいないと思うかもしれませんが、かなり日常的に遭遇します。また、こうした要領を得ないやりとりを繰り返していると、「あいつはまともな提案もできない」というレッテルが貼られてしまいます。米国企業では上司には予算や査定でけでなく、採用や解雇に到るまで絶大な権限がありますから、一度こうしたレッテルを貼られると、自分の将来の可能性に大きく影響します。

なお、日本語だったら何の問題がないのに、英語となると途端に支離滅裂になってしまう方も少なくありません。ですから、特に新しい上司に提案をするときなどは、キャリアに大きな影響を与えかねませんから、日本語のとき以上にしっかりと下準備をして臨んでください。

良い例

それでは次に良い例を見ながら気をつけるべきポイントを整理しましょう。

Subordinate: Excuse me. Do you have a minute?
部下:すみません。ちょっとお時間いただけますか?

Boss: Sure. What’s up?
上司:ああ、いいよ。どうしたの?

Subordinate: With your permission, we would like to purchase a new printer. The printer we are currently using is being rather problematic and causing inefficiency in our team.
部下:もしよろしければ、新しいプリンタを購入したいのです。現在部内で使っているプリンタの調子がかなり悪く、作業効率に影響を与えています。(提案内容と理由が明確でわかりやすい。言い方も丁寧)

Boss: Oh really? I did not know that. How long has it been going on?
上司:え、知らなかった。それいつからそうなの?

Subordinate: It suddenly started last week. It is quickly falling apart.
部下:先週からです。急激に状態が悪くなっています。

Boss: I see. Can’t we repair it?
上司:なるほど。修理はどうなの?

Subordinate: I am afraid repairing it can be quite costly.The printer just went out of warranty, so it would cost us as much as 20,000 yen.
部下: 申し上げにくいのですが、修理は高くつきそうです。このプリンタ、ちょうど保証期間が過ぎたところなので、直すとなると2万円もかかります。(”I am afraid”という表現を使い、上司の提案をやんわりと否定。)

Boss: Wow. That’s a lot of money. We can almost buy a new one, huh?
上司:それは高いね。新品が買えちゃうんじゃないのか?

Subordinate: Yes. We almost could. We also looked into the replacement. I feel that model XYZ from company E would be our best choice. It is 28,900 yen with tax. Here is the brochure.
部下:そうですね。ほぼ買えます。新規購入するのでしたら、E社のモデルXYZ が最適かと思われます。値段は税込で2万8900円です。こちらがカタログです。(正確な税込価格、またカタログが用意されていることで、上司は何も聞き返す必要がない)

Boss: I see. Why are you choosing this particular model?
上司:なるほど。この機種を選んだ理由は? 

Subordinate: First of all, this model supports wireless printing, so we would be able to print from our phones and tablets which should help us increase our productivity. The printing speed is twice as fast as our current printer. It is a multi-function printer which supports double sided printing, A3 printing and faxing. It is roughly 3000 yen cheaper than its competitors, and is receiving very high reviews on the internet.
部下:ワイヤレス印刷に対応しており、スマホやタブレットから直接印刷できるため、生産性の向上が期待できます。また、印字速度がこれまでのモデルよりも倍以上速いこと、また両面印刷、A3のプリント、ファックスの送受信にも対応したマルチファンションのプリンタである点です。値段も他社のモデルに比べて3千円ほど安い上で、ネットでも高評価です。(このプリンタを購入するメリットが明確であること。他社との比較が終わっていること、ネットでの評判もチェック済みであること、機能も十分に調べてあることがわかる。この時点で、反対する理由があまり残っていない。)

Boss: Do we ever print A3?
上司:A3 なんかプリントすることあるの?

Subordinate: Once or twice a month. Though we do not print often, we currently have to go to an outside vender, get it printed, come back and then process the expense. We can eliminate all that hassle.
部下:1ヶ月に1、2回あります。少ないんですけど、今のプリンタも対応していないためその都度外にプリントに行き、さらにそこでかかった費用の清算したりと、結構煩雑なんです。(使用頻度がはっきりしていてよい。また、A3が印刷できるメリットも明瞭)

Boss: How about fax?
上司:ファックスは?

Subordinate: We still have a few customers who rely solely on fax, so fax is a plus. All printers in this category also come with fax.
部下:まだ、ファックスしかないお客様もいるので。ですからあればそれなりに重宝です。また、このカテゴリの製品はどれを買ってもファックス機能がついてきます。

Boss: Isn’t there a cheaper printer without the A3 and the fax?
上司:A3プリントもファックスもできなくていいから、もう少し安いプリンタはないの?

Subordinate: Yes. There are. But they are cheaper only by 3000 yen or so.
部下:はい。あります。ただし、値段は三千円しか変わりません。(すでにA3 やファックス非対応も検討したことも明確)

Boss: OK. I get it. You have my approval to go ahead. Can you send your purchase request?
上司:なるほど。わかった。いいよ。じゃあ購入依頼書を出しておいてくれる?

Subordinate: It is ready to be sent. Should I send it via email?
部下:もう書いてあります。メールでお送りすればよろしいですか? (一歩先が読めているな、と好印象を抱く)

Boss: Yes. That would do. Thank you.
上司:うん。それでいいよ。どうもありがとう。

Subordinate: You are very welcome Sir. I highly appreciate your approval.
部下:いえ。こちらこそ承認いただきありがとうございます。失礼します。(きちんとしたお礼があり、上司は悪い気がしない)

いかがでしょうか? もっと難しい事案でも、基本的には同じことです。自分が上司だったら気になるであろうところをあらかじめ調べておき、説得力のある答えを用意しておきます。そして、「結論→理由→質問への的確な返答」という順番で繋いで行きます。くれぐれも「情に訴える作戦」は禁止です。これ、日本以外には本当にあまりうまくワークしませんので。

それでは次回には、自分よりも立場が上の人と話をする際に使い勝手のいい言い回しをまとめてしたいと思います。

次回記事:立場が上の人とのビジネス英会話〜実践編~


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博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。