名詞に a/an も the が「つかない」のはどんなとき?

日本人にとってもっとも難しいことの一つは、名詞に「the をつけるのか」「a/an をつけるのか」「それとも何もつけないのか」という判断です。

僕が実際に生徒の作文を添削してみると、一番多いのが不定冠詞 a/an のつけ忘れです。そこで今日は一体どんなときに冠詞が「つかないのか」について考えてみましょう。

そもそも冠詞とは一体なんなのか?

冠詞というと難しそうですが、実は some, any, that, these, his, her などの「限定詞」と呼ばれる単語の仲間です。限定詞は、その後の名詞をより明確にする働きがあります。

His car→「彼の車」 所有者を限定
That car→「あの車」 位置・場所を限定
Two cars→「2台の車」 台数を限定
Some cars→ 「何台かの車」 台数を限定
A car→ 「無作為に選んだ1台の車」 無作為に一つだけ選ばれたものの限定
The car→「話し手も聞き手も共通認識がある車」 共通認識があることを確認

限定詞は名詞の意味をより具体的に、明確に、限定してくれる働きがあるのです。ですから限定詞や冠詞がないと、どうにも落ち着きが悪いのです。

では次に、冠詞があるとないでは語感がどう違うのか考えてみましょう。

a/anはどんな意味づけをするか?

以前の記事にも書きましたが、 a/anは、形がハッキリした数えられるものにしか付きません。

逆に言えば、a/an が聞こえてきた瞬間に「次に来る単語は境界がハッキリとした形のあるものの一つの何かだな」ということがイメージできるのです。例えば、“I saw a car driving by just now. “ という文章を聞けば、車が単独でブーンと走っていく下の写真のようなイメージが想起できます。

あるいは、”Can I borrow a pen?”と聞かれれば、このように1本の無作為に選ばれたペンが貸し借りされるところがイメージできます。

a/an を忘れてしまうと、この「境界がハッキリしたものが一つだけ」という輪郭が途端にぼやけてしまうのです。

日本語では数える対象によって「冊」「個」「匹」などのように数量詞をいちいち変えますが、これによってハッキリとしたイメージを頭の中に思い描くことができルるのです。

例えば「今、一冊の本を読んでる」と言われれば具体的なイメージを想像することができますが、もしも「今、1個の本が読んでる」と言われたら、意味は伝わってもなんとなく腑に落ちません。a/an が持つ働きも同じようなもので、名詞にハッキリとした輪郭を与えてくれるのです。

そう。a/an は決して飾りなどではないのです。「形のハッキリした一つのもの」というイメージを伝えたかったら” I need a…. a, a, cup!” などと言ったふうに、まずa あるいは an を口に出してしまえばよいのです。

では冠詞がないとどうなるか?

このことを逆に言えば、冠詞をつけないと境界や形状がハッキリしない、というシグナルになります。例えば複数形を例にとって考えてみましょう。

”Cars are parked over there.”

例えばこのような一文を聞くと、不特定多数の車が漫然と車が停めてある、境界線がハッキリとしない下のようなイメージが湧きます。

“Vegetables are sold at the far end of the store. “

と言われたら、店の端っこの方にある、こんな感じの野菜売り場を想起します。こちらも境界がハッキリとしません。


I like apples and oranges.
Vegetables are good for you.
Boysbe ambitious.
Girls are better than boys.
John loves cats.

上の例文の apples, oranges, vegetables, boys, girls, cats などはそれぞれ「りんご」「オレンジ」「野菜」「男の子」「女の子」「猫」などの総称を指していますが、a cat, an orange や my cars など限定詞がついたときと違って、輪郭がハッキリしません。

だからこそ逆に、限定詞や冠詞をつけずに複数形で使うと、一般的な総称として使えるのです。

同じ複数形でも ”John loves his cats” や “John loves a cat”とだと、限定されるが故に「一般的に猫好き」という表現には使えなくなってしまうのです。

数えられない名詞

そしてもう一つ、輪郭がハッキリしないものといえば「数えられない名詞」です。もちろん数えられないくらいですから、 a/an がつくことは有りえません。さてこの数えられない名詞ですが、こちらの方も冠詞や限定詞が何もつかない場合には、一般的な総称を指して扱われます。


Milk is good for you.
I love coffee!
Salt is necessary for cooking.

これ、使い方としては複数形で冠詞がつかない場合と全く同じなんです。見比べてみましょう。


Cars provide convenience.
Apples are good for you.
She likes dogs than strong style=”color:blue”>cats.

不可算名詞は数えられませんから、「一つ」を表す a/an や、数を表すone, two, three, many, a few などの限定詞は原則使えませんが、それ以外の限定詞を使う分には一向に構いません。いくつか例を挙げてみましょう。


The coffee you bought us was tasty.
Give me the salt please.
His advice was very helpful.
I need more time.
Mathematics is an interesting subject.

単数の可算名詞なのに冠詞がつかないケース

さて、どんな場合に冠詞を含む一切の限定詞をつけないのかクリアになったと思います。

しかし、ややこしいことに、単数の可算名詞なのにa/an も the もつかない場合もあるのです。早速例を見てみましょう。


She is in hospital.
The criminal went to prison.
I am going to school.
Dad has left to work.
He is coming home soon.
The kids went to bed.
I can get there by bicycle.
I went to school by car.
I came home on foot.

これらをよく見てみると、どれも「病院に収容された」とか「学校に通学する」「出勤する」とか「歩いていく」「朝食をとる」などのような、動詞的な意味を帯びたものばかりです。

このように to や in などの後に続く school / class / university / work / church / hospital / sea / town / home / bed などの単語には冠詞も限定詞もつかないことが多いのです。

また by train (car / bus/ bicycle, foot)など手段を表す場合にも付きません。これらは前置詞とセットになって、慣用句として用いられるからです。同じような構造の言い回しをもういくつか見てみましょう。


My brother is in charge now. (今は僕の弟が責任者だ。)
My daughter is in danger! (私の娘が危機に晒されている!)
The two countries have been at war for nearly 40 years.(二つの国はもう40年も交戦状態にある。)
I know the subject by heart. (その話は非常によく知っている。)
The situation is beyond control.(状況はコントロール下にある。)
He arrived on time.(彼は時間通りに着いた。)
My sister was on television. (テレビに出演した。)

このように動詞的な意味をおびた名詞には、a/an のような単数性もなければ、the をつけるような特定性もありません。だからこそ無冠詞で使われるのが一般的なのです。(ただし、状況や行為を限定したければ冠詞をつけることはいくらでもあり得ます。詳しくはまたいずれ別の機会に説明しましょう。)

固有名詞化した単語たち

最後にもうひとパターン見てみましょう。ご存知のように、特定の場所や人の名前、映画や曲のタイトル、企業名などの固有名詞には、原則的には何の限定詞も付きません。Bill Gates, New York, Microsoftなんかはつかないわけです。そして1文字目が大文字になるので、割とわかりやすいですね。


I saw Bill Gates at the airport.
Microsoft just announced a new product.
I went to New York last summer.

そして、厳密には固有名詞ではないのだけれど、現実的にそれしかないから固有名詞化しているような単語も多数あります。もちろん1文字目は大文字になっています。そして、原則としては冠詞や限定詞が付きません。いくつか例を挙げてみましょう。


God bless you!( の祝福あれ!) 
Lord is with you.( はあなたと共にある) 
Congress will meet next month.(国会 は来月開かれる) 
Parliament has dissolved.(国会 は解散された。) 

さらに季節、曜日、あるいはクリスマスやイースターなどといった休日の名称も同じように半固有名詞化していて、最初の文字が大文字となり、通常は冠詞が使われません。


February is chilly and cold.
I will see you on Monday!
Christmas is just around the corner.

また、この他にも固有名詞化した単語がいくつもあります。例えば、breakfast, lunch, dinnerもそうですし、Dad, Mom などのような単語もそうですし、シーズンなども同じような扱いです。絶対に冠詞や限定詞がつかないわけではありませんが、冠詞を付けずに使うことが多く、僕ら英語学習者に大きな混乱をきたすのです。


Spring has come!
Let’s go to lunch!
I will speak to Dad when he gets home.

よくある間違い

まとめとして、実際による目にする間違いを見て見ましょう。

まず、かなり上級者でもやってしまうのが、名詞の前に形容詞がある場合です。形容詞をつけることで、何となく冠詞や限定詞をつけるのを忘れてしまうようです。下記は実際にあるブライチャーの受講生が書いた文章です。

Final episode happened in my friend’s house. My best friend had big dog, and I liked the dog very much. One day, I was suddenly bitten by the dog.

普通によく書けていますが、最初の冒頭の定冠詞 the と、途中に出てくるdog の前の不定冠詞 a が抜けています。他の部分では対丈夫なのに、final episode, big dog のように形容詞が入った途端に、その前に来るべき冠詞を忘れています。

The final episode happened in my friend’s house. My best friend had a big dog, and I liked the dog very much. One day, I was suddenly bitten by the dog.

これは本当によく目にするパターンの間違いなので、形容詞が入ったら、その前に冠詞を忘れていないかぜひチェックしてみてください。

博 松井
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。